狭小住宅とは都市部などの狭小地に建てられる住宅のことを言います。
敷地面積が取れないため、3階建てにしたり、地下室を設けたりして、狭い土地でも居住空間を高める工夫がされる事が一般的です。
今回はそんな狭小住宅のメリットやデメリット、それに狭小住宅で失敗しないために事前に知っておくべき対策についてお話ししていこうと思います。
これから狭小住宅を建てようと検討されている方はぜひ、一度読んでいただき、参考にしてみてください。
【いい家を安く建てるために知っておきたいこと】
注文住宅を予算内で建てるために、住宅会社に依頼する前に知っておいて欲しいことが3つあります。
依頼前に家の価格を抑えるための基本やコツを知っておくことで、いい家を安く建てることができるようになりますので参考にしてください。
1:家を安く建てるための基本とコツ
注文住宅を予算内で建てるにはコツがいります。それには家の価格の決まり方や、どのように対処すれば家の価格を抑えることができるのかを把握しておかなければなりません。
予算内でいい家を建てるための7つの基本は下記リンク先の記事をご覧ください。
2:家の形と家の価格の大きな関係
家にはお金のかかる形の家と、お金がかからない形の家があります。
家の形は家の価格を大きく左右する要素の1つですので、家の形と家の価格の関係はしっかりと抑えておくべきです。
どのような家の形はお金がかかり、どのような形にすればお金がかからないのか、またそれぞれの家の形の特徴については下記リンク先の記事をご覧ください。
>>>家づくりで覚えておきたい家の形とお金のかかる家とかからない家の違い
3:無料でカタログを請求し理想の家を建てる方法
注文住宅は依頼先で決まります。だからこそ、依頼先は慎重に検討したいところですが、検討するにはまずはどんな家を建てたいのかを知らなくてはなりません。
無料で住宅会社から請求できる住宅カタログを請求して、理想の家を建てる方法については下記リンク先の記事を参考にしてください。
Contents
狭小住宅のメリット
まず狭小住宅のメリットからお話ししていきます。
【狭小住宅を建てるメリット】
1:土地代が安いので都市部に建てられる
2:家がコンパクトにまとまる
3:予算内に収まりやすい
4:延べ床面積が小さく、平面での移動が楽
5:おしゃれなデザインを取り入れやすい
それぞれについて詳しく解説していきます。
1:土地代が安いので都市部に建てられる
狭小住宅の一番のメリットは家を建てるための土地代をおさえられる事です。
家を建てるには土地が必要になり、人気の高いエリアの場合、同じ広さの土地でも土地の価格が非常に高くなる傾向にありますが、そもそも狭小住宅は狭い土地に家を建てるので土地代をおさえる事ができます。
また、土地代がかからない分、土地の上に建てる建物に予算を多くかけられるため、都市部で駅近などの比較的立地条件が良い土地に家を建てることが可能になります。
2:家がコンパクトにまとまる
土地が狭いと土地の価格が安くおさえられ、さらに建物自体がコンパクトにまとまります。
都市部に家を建てるのであれば、土地によって建ぺい率や容積率、建物の高さ制限、そのほか各自治体の条例における制限を受けることになるものの、家のサイズをコンパクトにまとめることができます。
家が小さくなればそれだけ建築コストも安く済みますから、家を建てるためのコストを安くおさえる事ができます。
3:予算内におさまりやすい
狭小地に建てられる狭小住宅は、建物が小さくなりますので一般的な土地に建てられる住宅よりも建築コストをおさえる事ができます。
土地の購入費用が少なく済み、延べ床面積が小さくなるので、その分建物の設備にお金をかける事ができるメリットが生まれるのです。
予算はあまりないけれども、より性能の高い家が欲しいといった場合は、狭小住宅を選択肢に入れると良いかもしれません。
>>>狭小住宅はいくらで建てられる?狭小住宅の価格についてお答えします
4:延べ床面積が小さく、平面での移動が楽
狭小住宅は1部屋あたりの面積が一般住宅よりも小さくなります。
そのため、家の中で手間なく平面での移動ができ、家が狭いので掃除も楽になるメリットがうまれます。
例えば、「庭付き、2階建て、新築、一戸建て住宅」ときけば聞こえはいいですが、実際そこに住んでみると庭の手入れが面倒だし、掃除は大変だし、移動するのに手間がかかるという方もいらっしゃいます。
家は広くなるほどメンテナンスにも手間がかかりますし、その分、コストもかさみます。
そのためあえてコンパクトな狭小住宅にする事で、ミニマルな生活ができるようになります。
5:おしゃれなデザインの間取りを取り入れやすい
土地が狭いと様々な制約が生まれる分、その狭さを感じさせないようにと様々なデザインの間取りを検討することになります。
狭小住宅と相性の良い間取りの一つに、段差をつけ、余計な壁を取り払ったスキップフロアや縦の空間を活かした吹き抜けの間取りがありますが、こうした間取りを十分に検討して狭小住宅に取り入れると、程よく開放的で居住空間全体に洗練されたおしゃれな印象を持たせる事ができます。
もちろんスキップフロアにする事によるメリットやデメリットがありますが、狭小住宅を建てるのであれば、スキップフロアや吹き抜けの間取りを検討してみると、狭さを感じさせない広い空間を演出する事ができます。
また、スキップフロアは基準内であれば建築基準法で定められている容積率の制限に影響を受けないため、土地に対してより大きな床面積を使うこともできます。
>>>スキップフロアの間取り27のメリットとデメリットと7つの活用実例
狭小住宅のデメリット
続いて狭小住宅のデメリットについてお話しします。
【狭小住宅を建てるデメリット】
1:隣の家との距離が近くご近所トラブルに発展しやすい
2:間取りが複雑になりやすい傾向がある
3:狭小住宅に対応している住宅会社限定になる
4:縦の移動がメインとなるので階段の昇り降りが大変になる
5:2階建て住宅と比べて冷暖房の効率が悪い
6:収納量が足りず物で溢れやすい
1:隣の家との距離が近くご近所トラブルに発展しやすい
狭小住宅は土地が狭い都市部に建てられる事が一般的ですが、そうすると自ずと隣の家との距離が近くなります。
そのため隣の家でくしゃみをする声が聞こえてきたり、間取りが悪いと、お互いの家の間取り同士が干渉しあってしまい夜エアコンの音が煩くて眠る事ができないといった問題も起こりえます。
>>>よくありがちな新築一戸建て注文住宅の家づくりを失敗する6つの原因と注意すべき159のこと
また音の問題だけではなく、換気扇の位置が悪いと「におい」の問題も生じてきます。
例えば夜型の生活の人と朝方の生活リズムの人が隣同士になってしまうと、夜眠る時に、隣家のキッチンで調理をし始めて、その匂いが寝室に入ってきてしまったりします。
隣の家との距離が近いと通風や採光にも影響を及ぼしますし、ベランダに洗濯物を干している時に隣の家の人と目が合ってしまうなんていう問題も起こりうりますので注意が必要となります。
2:間取りが複雑になりやすい傾向がある
狭小住宅では土地が狭いため平面での建築面積が小さいので、一般的に建物を3階建てにするなど縦に積み上げて空間を確保していきますが、そのため間取り(空間のとり方)が複雑になりやすい傾向があります。
例えば場合によっては複数フロアをまたいでキッチンやダイニング、浴室などを配置する必要があったり、日常的に使用する浴室、洗面所、トイレなどが離れてしまい、使いづらくなってしまうこともあります。
狭小住宅では、一般的な広さの住宅よりも間取りの制限を受けやすくなる上に、間取りが複雑になりやすいというデメリットがどうしても生じてきてしまうことは覚えておいて下さい。
都市部などは斜線制限があったり、建物の形が制限されることも多く、斜めに変形した屋根になる事があったり、天井高も低くなったりしますので注意が必要です。
3:狭小住宅に対応している住宅会社限定になる
実は狭小住宅に対応していない住宅会社もあります。
狭小住宅は、土地が狭いだけではなく、土地そのものが特徴的なことも多く、変形地であったり、高低差があったり、旗竿地であったり、何かと問題を抱えている事が多く、そもそも建物を建築するのが難しい場合があるからです。
さらに、先ほど言ったように斜線制限だったり防火制限、建ぺい率や容積率の制限、民法や各自治体の条例などの制限を受ける事があり、狭小住宅を建てるにはそれなりに深い知識と専門性、経験が必要となってきます。
条件の悪い、それぞれの土地を活かした建物の間取りを、狭く様々な制限を受ける土地に建てることになるのですから、スキップフロアなどの特殊な設計が必要となることも多く、そうした間取りに卓越した熟練の設計士ではないと、設計自体が難しいケースがあるのです。
>>>家を建てる前に知っておきたい、絶対に失敗しない住宅会社選びの3つのポイント
4:縦の移動がメインとなるので階段の昇り降りが大変になる
狭小住宅では平面ではなく縦の空間を活かし3階建てにする事が多いのですが、3階建てにすると階段の昇り降りが大変になります。
狭小住宅では2階にLDKを持ってきて、1階に浴室を含む水回りの設備、3階に寝室と言ったように居住空間を分ける事が多いですが、少しでも間取り(空間のとり方)を間違えてしまうと縦の移動が大変面倒な家になってしまいます。
例えば、1階にしかトイレがない場合は、夜トイレに行きたい時は3階から1階におりて、用を足したら、また3階に戻るといったような形になってしまいます。
さらに若いうちは問題なくても、ある程度歳をとり足腰が弱ってくると縦の移動が億劫になってきますので、使い勝手の悪い家になってしまう可能性があります。
また日常的に使う洗濯機が置いてある洗面所と、洗濯物を干すベランダが1階と3階など離れていると、毎日の洗濯でさえ面倒になってきてしまいます。
狭小住宅では移動の問題は常に付き纏うと思ってください。
5:2階建て住宅と比べて冷暖房の効率が悪い
狭小住宅では狭さを感じさせないように、スキップフロアや吹き抜けの間取りを採用する事が多いですが、壁が少なくなったり空間あたりの容積が増えたり、複雑な間取りとなる事が多くなります。
そのため、夏場や冬場での温度管理が難しくなり、一般的な2階建て住宅と比べると冷暖房効率は悪くなります。
>>>吹き抜けのリビングにすると後悔する?後悔しがちな間取りの7つのポイントを解説
6:収納量が足りず物で溢れやすい
狭小住宅では収納の問題は常に付き纏う物だと思ってください。
ただでさえ狭い土地に居住空間を確保し、その狭さを感じさせないよう広く見せようとするため、その分収納という部分で犠牲になることも多くなります。
そのためものが増えないように意識したり、あらかじめ見せる収納として十分に検討するなどの収納対策を施しておく必要があります。
>>>注文住宅で圧迫感のない開放的な玄関収納を叶える7つの収納アイデア
狭小住宅のメリットとデメリットのまとめ
狭小住宅のメリットとデメリットを一覧でまとめると下記のようになります。
【狭小住宅を建てるメリット】
1:土地代が安いので都市部に建てられる
2:家がコンパクトにまとまる
3:予算内に収まりやすい
4:延べ床面積が小さく、平面での移動が楽
5:おしゃれなデザインを取り入れやすい
【狭小住宅を建てるデメリット】
1:隣の家との距離が近くご近所トラブルに発展しやすい
2:間取りが複雑になりやすい傾向がある
3:狭小住宅に対応している住宅会社限定になる
4:縦の移動がメインとなるので階段の昇り降りが大変になる
5:2階建て住宅と比べて冷暖房の効率が悪い
6:収納量が足りず物で溢れやすい
狭小住宅で失敗しないために知っておきたい3つの対策
ここまでは狭小住宅のメリットとデメリットについてお伝えしてきました。
続いて狭小住宅でよくありがちな失敗と、その対策についてお話ししていきたいと思います。
よくありがちな失敗を事前に抑えておくことで建てた後の失敗や後悔を未然に防ぐ事ができます。
【狭小住宅で失敗しがちな点】
1:狭くて既製品の収納家具が置けない
2:部屋の奥の日当たりが悪い
3:思った以上に子供部屋にスペースを取られてしまった
それぞれについて具体的に解説していきます。
狭小住宅でありがちな失敗例1:狭くて既製品の収納家具が置けない
狭小住宅は狭い土地に、家を建てるため、1部屋あたりの面積は小さくなります。
既製品の家具は、一般的な広さの住宅用に合わせて造られている事も多く、狭小住宅におこうとなるとスペースを圧迫してしまう事があります。
家具の問題で失敗しないための解決策:
狭小住宅を建てる場合は、設計時に収納場所をどこにするのかを十分に検討し、住宅建築時に造作家具などをつくることをお勧めします。
住宅建築時に造作で家具を作ってしまえば、あとはそこに物を収納するだけなので既製の家具に悩まされる心配が少なくなります。
もしも後で家具を置きたい場合は、DIYでつくるとうまく収まるようになりますので、造作ではなく後付けで収納を検討している場合は、DIY収納を検討してみてください。
狭小住宅でありがちな失敗例2:部屋の奥の日当たりが悪く湿気が多くなった
狭小住宅では隣家との距離が近くなりがちですが、隣の家との距離が近くなるとどうしても陽が当たらない部屋ができてしまいます。
特に3階建ての建物となると、間取りによっては1階や2階の陽当たりが悪い場所ができてしまい、晴れの日でも家にいる時は照明をつけていないと暗くて過ごせない部屋などができてしまいます。
また狭小住宅は日当たりが悪く、風通しも悪い事も多く常にジメジメしている部屋ができてしまいがちです。
隙間なくクローゼットの中に衣服などを収納していると、いつの間にかカビが生えてしまい大切なお洋服が着られなくなってしまったという問題も起こりうりますので、常に風通しをよくする工夫をするなど対策をたてておく必要が有ります。
日当たりの問題で失敗しないための解決策:
少しでも風通しが良くなるように、クローゼットの中に換気扇をつけたり、小さな窓をつけて採光をとる工夫などをしてみてください。
特定の空間だけではなく、建物全体の風通しを考えるのであれば吹き抜けやスキップフロアの間取りを採用し、高い位置に窓をつけたり、設計時に風が通り抜けるような風の通り道を作るように工夫を重ねてもらってください。
>>>注文住宅の窓で失敗しないために抑えておきたい21種類の窓と配置のコツ
狭小住宅でありがちな失敗例3:思った以上に子供部屋にスペースを取られてしまった
家づくりでは、子供部屋の問題はつきものです。
狭小住宅ともなれば、非常に限られたスペースに家を建てることになりますから尚更問題になる事が多いでしょう。
狭小住宅における子供部屋問題の解決策:
子供一人ひとりに個別の部屋を与えるのではなく、大きな部屋を一つ作り、子供部屋とするのも狭小住宅における子供部屋問題の解決策の一つです。
また、子供部屋としてはつくらず、子供専用の寝室をつくり、勉強などは共有スペースでしてもらう方法もあります。
>>>子供部屋を与えることで生じる6つのメリットと4つのデメリット
子供はいずれ家を出ていくものですから、子供が出て行った後は、その部屋をどのような用途で利用するのかまで十分に考えて、間取りを検討するようにしてください。
いずれにせよ、狭小住宅では、限られたスペースをいかにして有効的に扱うかが家づくりが成功するか、それとも失敗するかの大きな分かれ目になってくるかと思います。
狭小住宅の家のメリットとデメリットまとめ
今回の記事では狭小住宅のメリットとデメリットをお話ししました。
またそれだけではなく狭小住宅でよくありがちな失敗点とその対策についてもお話ししてきました。
狭小住宅はメリットもたくさんありますが、同時にデメリットも際立つ家です。
また、狭小住宅が建つような狭小地は個性的な土地が多いので、家づくりが成功するか失敗するのかは設計士の腕も大きく関わってきます。
立地と予算にこだわる必要がないのであれば、一般的な住宅を建てた方が満足度は高いかと思いますが、狭小住宅ならではのメリットもあるので一概にどちらが正解だということはできません。
家づくりで失敗しないためには、メリットやデメリットをしっかりとおさえ、納得のいくまで話し合い、選択する事が大事で、そこに住む人のことを考えて進めていくべき事だと思います。