>>>「家を安く建てる7つの基本」はこちら

型式認定工法って何?メリットとデメリットをわかりやすく説明します

今回の記事ではハウスメーカーと話をするとよく聞く、型式認定工法って何?という質問に対してお答えしていこうと思います。

いわゆる型式認定工法は呼称で、正式には、建築基準法で言うところの「第68条の10の条文」にあたり「型式適合認定」と言いますが、型式認定工法には、家を建てる方にとって、いい面(メリット)もあれば、もちろん悪い面(デメリット)もあります。

ただ、実際は、型式認定工法はハウスメーカーよりの法律となってしまっているため、どちらかといえば、家を建てる方にとって悪い面(デメリット)の方が際立つことが多いですが、もちろんそれだけではなく、これから家を建てる方にとっていい面(メリット)もあります。

今回の記事ではできるだけ、中立的な立場に立ち、よりわかりやすく型式認定工法についてお話ししていきますので、型式認定工法を取得している住宅会社で建てる場合は、契約前にぜひ一度読んで頂き、今回お話しする型式認定工法のメリットとデメリットを十分に承知した上で依頼すると良いと思います。

そうでないと、あとあと増改築の際に面倒なことになったり、リフォームやリノベーションを行う際の費用が高く見積もられたり、挙げ句の果てには増改築ができないといったデメリットが生じることも、実際にありうるので、将来的なライフプランを含め十分に検討してから依頼するのがいいと思います。

【いい家を安く建てる方法を教えて!】

家の価格はどのようにして決まっているのかご存知ですか?

予算内で本当にいい家を建てるためには、依頼先に全てを委ねるのではなく、依頼する側が家の価格がどのようにして決まっているのか、それに、家を安く建てるためのコストダウンのコツをしっかりと把握しておく必要があります。

予算内でいい家を建てる方法について大事なことを、下記の3つの記事にまとめておきましたので、これから家づくりをされる方は一読しておくことをお勧めします。

1:家を安く建てるためには具体的に何をしたらいいの?

注文住宅ではほとんどの場合、当初の予算を上回ってしまいます。それだけ、予算内で家を建てるにはコツがいります。

予算内でいい家を建てるための7つの基本は「家を安く建てる方法とコストダウンの7つの基本」をご覧ください。

2:お金のかかる「家の形」とお金がかからない「家の形」の違いについて教えて!

家にはお金のかかる形の家と、お金がかからない形の家があります。

どのような家の形はお金がかかり、また、どのような形にすればお金がかからないのか、またそれぞれの家の形の特徴については「家づくりで覚えておきたい家の形とお金のかかる家とかからない家の違い」をご覧ください。

3:依頼先ってどうやって決めたらいいの?

注文住宅が成功するか失敗するかは高い確率で依頼先で決まります。

だからこそ、依頼先は慎重に検討したいところですが、検討するにはまずはどんな家を建てたいのかを知らなくてはなりません。

無料で住宅会社から請求できる住宅カタログを請求して理想の家を建てる方法については「無料で貰える住宅カタログを使いこなし賢く家を建てる6つのステップ」をご覧ください。




Contents

型式認定工法とはわかりやすくいうと何?

型式認定工法とは、わかりやすくいうと、これから建てる家の安全性能を証明するために、あらかじめ国土交通省から許可をとり認定を取得しておく工法のことを言います。

これにより大幅な工期の短縮につながり、建主はより短期間で家が建てられるようになります。

もう少し具体的に言えば、家を建てるのに用いられる建築材料や主要構造部、建築設備などをあらかじめ建築基準法に基づく関係法規などに適合する認定を取得しておき、認定された部分においては審査や検査の対象としないと許可をもらうことが型式認定工法になります。

型式適合認定を受けることで一定の工程における審査や検査が必要なくなる

新しい家を建てるためには、通常、建築基準法第6条により建築確認申請を国や行政に対し申請を行い、建築基準法で定められている一定の審査や検査を受ける必要があります。

建築確認申請を経て申請が受理されることで、はじめて家を建てられるようになりますが、型式認定を取得しておくことで、建築基準法で定められている本来行わなくてはならない審査項目や手順を簡略化して(飛ばして)建築許可を受けられるようになります。

【通常の工程と型式認定の工程の違い】

通常:建築確認申請 → 審査・検査 → 建築許可
型式認定:建築確認申請 → 建築許可

型式認定を取得しておくことで、一部の工程においての審査や検査をパスすることができるので建築許可が下りるまでのスピードが早くなる。

※上記項目でも触れましたが、建築基準法第6条には新たに建てる新築住宅には、所定の機関への確認申請が必要となることのほか、確認の特例(型式適合認定制度)が定められています。

建築基準法上の「型式認定(型式認定工法)」とは

念の為、型式認定(型式認定工法)について、建築基準法の文言も記載しておきます。

一般の方が読解するのには、難しい文言も含まれるため、ここの部分は読み飛ばしてもらっても構いません。

型式認定とは建築基準法上の型式適合認定のこと

よく家づくりの現場できく型式認定(工法)とは呼称で、正式名称を建築基準法で「型式適合認定」と言います。

型式適合認定(型式認定工法)は、建築基準法第68条の10の条文で下記のように記載されています。

(型式適合認定)

第六十八条の十 国土交通大臣は、申請により、建築材料又は主要構造部、建築設備その他の建築物の部分で、政令で定めるものの型式が、前三章の規定又はこれに基づく命令の規定(第六十八条の二十五第一項の構造方法等の認定の内容を含む。)のうち当該建築材料又は建築物の部分の構造上の基準その他の技術的基準に関する政令で定める一連の規定に適合するものであることの認定(以下「型式適合認定」という。)を行うことができる。

2 型式適合認定の申請の手続その他型式適合認定に関し必要な事項は、国土交通省令で定める。

(型式部材等製造者の認証)

第六十八条の十一 国土交通大臣は、申請により、規格化された型式の建築材料、建築物の部分又は建築物で、国土交通省令で定めるもの(以下この章において「型式部材等」という。)の製造又は新築(以下この章において単に「製造」という。)をする者について、当該型式部材等の製造者としての認証を行う。

2 前項の申請をしようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、国土交通省令で定める事項を記載した申請書を提出して、これを行わなければならない。

3 国土交通大臣は、第一項の規定による認証をしたときは、国土交通省令で定めるところにより、その旨を公示しなければならない。

参照:建築基準法

型式認定工法(型式適合認定)の2つのメリット

型式適合認定の標準的な手続きの流れ 出典:一般財団法人日本建築センター

先ほども申し上げたように、新しい家を一棟建てるためには、建築基準法で定められた一定の審査を受ける必要があります。

建築基準法では、型式認定(型式認定工法)のことを「型式適合認定」という条文で記されていますが、「同じ部材、同じつくり方」をする「型式認定(工法)」として受理されることで、家を建てる前(設計段階)から自社の実験データ上において、あらかじめ家の安全の証明を示すことができるようになります。

つまり「型式適合認定で許可された箇所においては一棟一棟の審査や検査をする必要ないよね」と言うことです。

そのため、型式認定を取得しておくことで、一定の審査を受けなくても、これから建てる家の安全証明があらかじめ担保されることになり、一定の審査や検査を行う必要がなく、家を建てることができます。

型式認定とは「同じ部材、同じつくり方」で家を建てるから「個々の建物一棟一棟、詳しく家の審査をしなくても問題ないですよね」という制度です。

型式認定工法(型式適合認定(法第68条の10))については、下記に国土交通省の関連ページをリンク先として貼っておきますのでご確認ください。

>>>型式適合認定・型式部材等製造者認証の概要

国土交通省の関連ページには、いろいろ難しいことを書いてあるようですが、要するに型式認定を受けるメリットとしては2つあり、1つ目のメリットは、通常よりも、より早い期間(短期間)で家を建てるための許可がおり、工期の短縮化を図れるメリットが挙げられます。

さらに2つ目のメリットとしては、型式認定を受けることで、一定の部材や工法を使った家を建てたい場合は「●●ハウスに依頼しなければ建てられない」などの家のブランド化を図れるメリットがあります。

【型式認定工法の2つのメリット】

1:工期の短縮
2:ブランド化

続いて、2つのメリットの詳細について下記に記していきます。

※型式認定工法は、家を建てるための手間を減らし、巷でよく言われているように、家を大量に供給するために生まれたハウスメーカー寄りの適合認定だと言っても過言ではありません。

資金力の乏しい中小住宅会社では取ることが難しい制度だからです。

詳細についてはこのまま読み進めていただき、型式認定工法のデメリット以降の注意点や問題点をご確認ください。

型式認定工法のメリット1:工期の短縮化を図ることができる

積水ハウスのフレキシブルβシステム

型式認定を取得し、国土交通省から許可されることで、建築確認申請時に必要となる書類作成や、作成された書類を審査したり検査する手間を大幅に簡略化できるようになります。

型式適合認定によって、建築基準法で定められている、一定の審査項目や手順を減らすことができるので、より短期間で家を建てることができるようになるからです。

つまり、家を建てる側からすれば、結果として工期の短縮に繋がります。

一定の工程をパスする許可をあらかじめ取得しておくことで、大幅に工期の短縮化を図ることができ、より短期間で家を建てることができるのが、型式認定工法の最大の特徴であり最大のメリットであるといえます。

型式適合認定は、つまり「いつも同じ材料、同じ作り方」で家を建てるので、わざわざ一棟一棟、審査をしなくていいよね?実験データ上の安全が証明できているから審査する必要ないよね?とあらかじめ許可を取得しておく制度です。

型式認定工法のメリット2:ブランド化を図ることができる

ヘーベルハウスのヘーベルウォール

型式認定は、いわゆる特許のようなものです。

ですから、型式認定を受けることで、他社との違いを証明することにもつながり、自社独自のオリジナルの工法となり、延いては住宅のブランド化を図ることができます。

例えば、「●●ハウス」で使われているA工法を用いた家を建てたい場合は、「●●ハウス」に依頼することでしか家が建てられないというメリットがあります。

そのため、型式認定を取得しておくことで、家(厳密には工法)の差別化をはかることができ、ブランド化につながるメリットもあります。

わかりやすく、大手ハウスメーカーの型式認定を取得している工法や部材には下記のようなものが挙げられます。

型式認定の例:

【積水ハウス】

木造:シャーウッド(金物ピン工法)
鉄骨:フレキシブルβシステム(梁勝ラーメン構造)
外壁:ダインコンクリート、シェルテックコンクリート

※積水ハウスについてより詳しい内容については「積水ハウスの評判や口コミと、家づくりのプロの目から見た10の特徴」を参考にしてください。

【ヘーベルハウス】

外壁:ヘーベル版
石膏ボード:工場加工のカットボード

※ヘーベルハウスについてより詳しい内容については「ヘーベルハウスの評判や口コミと、家づくりのプロから見た17の特徴とオススメできる人」を参考にしてください。

【パナソニックホームズ】

狭小地工法

※パナソニックホームズについてより詳しい内容については「パナソニックホームズの評判や口コミと、家づくりのプロから見た13のポイント」を参考にしてください。

【ミサワホーム】

木質パネル接着工法

【住友林業】

マルチバランス工法
ビッグフレーム工法

・・・etc

型式認定工法(型式適合認定)の3つのデメリット

続いて型式認定工法(型式適合認定)のデメリットについて見ていきます。

型式認定工法のデメリットとしては下記の3点が挙げられます。

【型式認定工法の3つのデメリット】

1:設計の自由度が制限される
2:リフォームやリノベーションなどの増改築が難しくなる
3:増改築の費用が高くなる

型式認定工法のデメリット1:設計の自由度が制限される

型式認定を取得することで、設計の自由度が制限されることになります。

型式認定により、ある程度、「家づくりの型」が決められてしまうからです。

実は、大手ハウスメーカーに注文住宅を依頼すると、「注文住宅なのに、思ったよりも設計の自由度が少ない」と言った感想を持つ方が多いようですが、その原因は型式認定工法にもあります。

先ほども言いましたが型式認定工法は「同じ部材で、同じつくり方」をするからこそ認定され、審査や検査を大幅に減らして確認申請の期間が短縮される工法のため、工期を短縮化するために認定を受けた部材や工法で家づくりを進める形になります。

つまり、型式認定として取得した範囲内での設計になり、つくり方や部材を変更することは原則として許されず、その認定された枠内での設計になってしまいます。

そのため、設計の自由度が少なくなってしまうデメリットがあります。

※【注文住宅はどこに依頼するかで全く違う家になる】

あまり一般的に知られていませんが、ハウスメーカーと呼ばれる数の量産型の住宅会社がうまれて以降、以上のような理由から、従来からの「なんでも自由に設計できるのが注文住宅」だけではなくなってしまっています。

実際には「注文住宅」とうたっていても、依頼先によって、間取りを含む設計の自由度が大きく変わるにも関わらず、一般の家を建てる方には「どこに依頼しても、なんでも自由に設計できる」という認識の違いが生まれてしまっています。

実際の家づくりの現場では、どこの住宅会社に依頼するのかによって「注文住宅の型」や方向性が決まってきてしまう現実があります。

これから家を建てる方は、実際の家づくりは依頼先でほとんど決まり、注文住宅だからどこに依頼しても自由に設計できるものではないということはあらかじめ認識しておく必要があると思います。と言うのは思い込みに過ぎず、大きな間違いだということは認識しておくべきことだと思います。

ではどのような注文住宅が現在あるのでしょうか?詳細については下記の記事をご覧ください。

>>>注文住宅って何?依頼する前に知っておきたいイマドキの注文住宅の3つのタイプとは

型式認定工法のデメリット2:リフォームやリノベーションなどの増改築が難しくなる

型式認定は増改築が制限される ※図はイメージ

ハウスメーカーの建てる家は、増改築が制限される家が多いですが、それは型式認定工法だからと言ってもいいでしょう。

実際のところ、型式認定を取得している住宅会社で建てた家は、増改築を行う際、家を建てた依頼先の住宅会社を通して行わないとリフォームやリノベーションが難しくなります。

その大きな理由としては、型式認定工法で建てられた家は、依頼した住宅会社以外で構造計算などを行うのが難しく、大幅な変更を伴う際に必要となる建築確認許可が下りないからです。

型式認定を取得している工法で建てる家は、独自の部材や工法を用いた設計となってしまっているため、一般的に広く使われている設計と違い、構造チェックが難しいデメリットがあるのです。

そのため、増改築の際の確認申請が下りず、事実上増改築ができないというケースもあります。

例えば、広く一般的に用いられている木造の在来工法(木造軸組工法)などは、建築士が構造チェックをすることは容易ですが、型式認定工法で建てた家は、住宅会社独自の設計となっており、構造計算が難しく、その会社を通してしか増改築ができなくなるデメリットがあります。

※工法については下記リンク先の記事を参考にしてください。

>>>ハウスメーカーが注文住宅で採用している6つの工法のメリットとデメリット

>>>家づくりで知っておきたい3つの構造と6つの工法のメリットとデメリット

語弊を恐れずに言えば、型式認定工法で建てられた家は、家を建てた後も以来先の住宅会社に囲い込まれ、自由に増改築ができず、家を建て替えるまでずっと付き合っていかなくてはならなくなります。

また、そもそも、将来増改築をすることを前提としてつくられていない建物の場合は、依頼した住宅会社に依頼しても増改築ができないケースもあります。

※増改築を予定されている方は、必ず、将来的に増改築を希望していることを伝え、増改築を見込んだプランにしてもらうことをお勧めします。

型式認定工法のデメリット3:増改築にかかる費用が高くなる

リフォームやリノベーションなどの増改築を行う場合、依頼先の住宅会社を通してしか増改築ができないというデメリットをあげましたが、そうなると、事実上、競合がいなく独占状態になりますので、リフォームやリノベーションにかかる費用が高く見積もられてしまいます。

増改築の際だけ、依頼先を変更しようにも、他社では確認申請が下りないため、事実上不可能となります。

結果として型式認定工法で建てられた家は、増改築にかかる費用が、一般的な工法で建てられた建物よりも高くなってしまう恐れがあります。

※ここでは「高くなってしまう恐れがあります」と言葉を濁していますが、増改築に伴う実際の明細見積書を見せてもらっても費用が高く見積もられているケースがほとんどです。

型式認定工法(型式適合認定)の4つの注意点と問題点

また先にあげたデメリットの他にも、型式認定工法(型式適合認定)の問題点もあります。

例えば型式認定の最大の問題点は下記の通りです。

【型式認定工法の注意点や問題点】

1:実験データ上の安全証明に過ぎない
2:実験過程や実験結果の透明性に欠ける
3:認定内容が非公開
4:構造計算が必要なくなる

型式認定工法の注意点や問題点1:実験データ上の安全証明に過ぎない

型式認定はあくまで、住宅会社が独自で行った実験データ上で証明されたものに過ぎません。

家は一棟一棟、建てる場所によって細かい条件などが違いますし、設計図面上ではどんなにいい設計だとしても、家を施工する業者によって、家の安全性や性能面は大きく変わってきます。

それが、実験データ上で安全性能が証明されればいいということになっており、さらに自社独自で行なった実験データで安全証明ができればいいということになってしまっている点に、型式認定工法の大きな問題点があります。

語弊を恐れずに言えば、型式適合認定には、構造上安全だと証明できる実験データさえ揃ってしまえば、建築基準法ギリギリのあまり好ましくない部材を使っても合法となり、認定を取得することができてしまうからです。

※建築関係の不祥事でよく騒がれるのは、実験データの改ざんによるものが多いと言うことは周知の事実だと思います。

型式認定工法の注意点や問題点2:実験過程や実験結果の透明性に欠ける

また、型式認定を得るための実験過程や実験結果も不透明な部分が多く、透明性に欠けている問題点があります。

つまり、実験データ上で安全性が証明できれば良いということになってしまっている上に、それぞれの会社が独自で実験をしているのが実態で、中身がブラックボックスに包まれており、極めて不透明な実験内容となってしまっています。

要するに認定されるに至った具体的な中身がわからないのです。

語弊を恐れずに言えば、資金を募り、実験データさえ集めてしまえば型式認定を取得することができてしまう問題点があります。

※また、認定を取得するにはそれなりの資金が必要になるため、資金力のある大手ハウスメーカーよりの法律となっている点はどうしても否めません。

型式認定工法の注意点や問題点3:認定内容が非公開

型式適合認定の問題を誘発している最大の原因が認定内容が非公開ということです。

これはデメリットにも通じる点で、「型式認定工法のデメリット」にも書きましたが、つまり認定内容が他社にはよくわからず、内容がブラックボックス化してしまっているので、構造変更を伴う工事や、リフォームやリノベーションなど将来的に必要となる増改築を行う場合、依頼した住宅会社以外でしか対応することができない問題点があります。

当然、増改築の際に依頼する会社は、事実上囲い込みの独占状態となりますので、ハウスメーカー主導の価格になり、相場よりも見積もりが高く設定されることとなります。

リフォームやリノベーションは他社で行いたい・・・ということは基本的にはできなくなり、建てた後も家づくりを依頼した住宅会社にずっと縛られ続けることになってしまうのです。

型式認定工法の注意点や問題点4:構造計算が必要なくなる

さらに言えば、型式適合認定を取得することで、家を建てる際に「構造計算をする必要がなくなる」ということが最大の問題点と言ってもいいでしょう。

もちろん、建築基準法において、一般的に木造住宅は3階建から構造計算が必要となり、鉄骨住宅では必ず構造計算をしなくてはならないことになっています。

木造2階建て住宅は構造計算しなくても大丈夫なのかという問題はおいておいて、ここではあくまで建築基準法でそのように定められていると思ってください。(個人的には木造の2階当て住宅であろうと構造計算は必要だと思っていますし、私は必ず行います)

しかし、住宅の耐震性や耐火性などの安全性能を証明する構造計算が型式適合認定を取得することで、審査や検査で省略され、問題ないとパスされてしまうのです。

どんなにデータ上では住宅の安全証明は説明できても、それは一定の環境下でのケースに過ぎず、細かいことを言えば、実際は家を実際に建てる業者によっても、住宅の性能や数値は大きく変わってきます。

同じ材料を使って同じ工程によって造られる、「物」としてみれば同じモノであっても、誰がつくるのかによって完成された「物」は大きく出来栄えが違うと言えば、この辺りは理解していただけるかと思います。

つまり型式適合認定時の家の性能を示すC値(気密性)やQ値(断熱性)を含む性能表示などの数値は、一定の環境下で建てられた際の、理論上の数値に過ぎず実際にその通りに建てられているのかは別問題だと言う話になります。

型式認定を取得したメーカーは多くの場合、施工した時のデータを実験で検証していません。

それにもかかわらず、家の安全性を証明するための審査や検査がパスされてしまっていると言う極めて不可解なことが、型式認定工法で建てる家では起こっています。

・型式適合認定は表向きは、「同じ部材で同じ作り方をするので審査しなくてもいいでしょ?」という内容ですので、なるほどと納得できる認定制度のように思いますが、実態は違います。

2019年には内部告発により、ダイワハウスの2000棟を超えるアパートと戸建住宅で型式認定違反も判明しています。

>>>戸建住宅・賃貸共同住宅における建築基準に関する不適合等について

>>>戸建住宅・賃貸共同住宅における 建築基準に関する不適合等について<補足説明資料>

以上で見られるように、型式適合認定を取得することで審査や検査がパスされるようになると不正も起きやすくなる問題点があります。

つまり審査や検査されないので、不正が行われても気づかずスルーされてしまうという問題点もあるので諸手を上げていい制度とは言えない現実があるのです。

問題視されたダイワハウスの型式適合認定違反の一例

注文住宅の型式認定(工法)のQ&A

これまでお話しした内容でわかる通り、型式認定は、ハウスメーカーが主導の、ハウスメーカーにとって都合のいい家を量産してしまっていると言っても過言ではありません。

ここからは、型式適合認定にまつわるよく聞く疑問点などについてQ&A形式でお答えしていこうと思います。

Q:型式適合認定は大手ハウスメーカーの都合の良い制度って本当?

A:本当です。

型式認定工法(型式適合認定)のメリットやデメリット、それに注意点や問題点の項目でも見てきたように、どう見ても大手ハウスメーカーの都合の良い制度だと言っても過言ではありません。

まず資金力がある住宅会社でないと認定取得は不可能ですし、語弊を恐れずに言えば自社で集めた実験データさえ揃ってしまえば型式適合認定(型式認定工法)として許可を得ることができるからです。

ただし、ハウスメーカーにとって都合の良い制度なのは、何も型式適合認定だけではなく、長期優良住宅の制度なども資金力のある大手ハウスメーカーよりの住宅制度だと私は感じています。

>>>長期優良住宅とは?長期優良住宅のメリットとデメリット認定基準や注意点

また大手ハウスメーカーがよくうたっている30年保証、60年保証といった長期保証の制度なども、定期的にメンテナンスを行なったり有料の点検をしないと保証を切られてしまうという弱点(問題点)があります。

瑕疵担保責任などで保証されているように思い込まれていますが、瑕疵担保責任で定められているのは構造耐力上主要な部分と雨水の侵入を防止する部分の2つのみです。

内装や外装などは瑕疵担保責任の対象外となるので注意が必要してください。

>>>瑕疵担保責任と住宅瑕疵担保履行法の内容、それに注意すべきこと

ちなみに瑕疵担保責任は2020年4月1日より瑕疵(かし)が契約不適合に変わりました。意味合いも変わってきますが、これはまた後の記事でお話しすることにします。

※そもそも現行の建築基準法の第一条には次のように定められています。

第一条
この法律は、建築物の敷地、構造、設備および用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、持って公共の福祉の増進に資することを目的とする。

ここでポイントとなるのは「最低の基準」ということです。つまり、建築基準法では瑕疵であろうと最低の基準を守れればいいということになります。

Q:国が認めた型式認定工法だから住宅の安全性能は保証されているよね?

A:一概に安心だということは言えません。

以上で見られるような理由から、型式認定だからと言って、一概に型式認定工法で建てられた家が必ず安心だということありませんので注意してください。

何度も言いますが、型式認定工法は乱暴に言ってしまえば、安全を証明できるデータさえ集めることができれば認定されてしまいます。

性能表示などの数値も一定の環境下で「正しく施工した」際の数値であり、その通りに施工されているのかどうかが大事なのですが、そうした確認がしっかりとなされないまま施工されているのが実情です。

また中身がわからず、ブラックボックス化している点も気がかりです。

住宅会社の営業マンは皆一様に調子よく「型式適合認定を取得していますから大丈夫です」「型式認定工法ですから問題ありません」と言いますが、そう言ったことは決してありませんので注意してください。

型式認定工法は実態は大手ハウスメーカーが主導となって作成した制度であり、その中身もハウスメーカーにより優しい制度となっている点は理解しておく必要があります。

Q:大手ハウスメーカーが建てる注文住宅はどうして自由度が少ないの?

A:様々な理由が考えられます。

大手ハウスメーカーの建てる注文住宅は、実際に依頼するとあまり自由度がないと感じる方が多いですが、それは型式認定にも大きな原因があると言えます。

型式認定工法では、型式適合認定された一定のルールに従って設計をする必要があるため、そこに必然的に制約(ルール)が生まれてしまうからです。

つまり、自社で開発した工法をルール化して型式適合認定を取得することで、自社独自のオリジナルの工法として住宅をブランド化できますが、同時に家づくりにおいて部材、構造、工法、使用される設備などをはじめとした大部分において様々な制約が生まれてしまい、一人一人の個性に合わせた住宅を建てることができなくなってしまうのです。

つまり、「本当はこちらのお施主様にはこうした方がいい」とわかっているのにも関わらず、提案出来ないという縛りが生まれてしまいます。

もちろんハウスメーカー側も、そうした事実をわかった上で注文住宅を販売しています。それがわかっているからこそ、デザインや雰囲気重視の家を企画し販売しているのです。

つまり、ハウスメーカーは型式適合認定からくるデメリットを逆に利用し「デザインコンセプト型の注文住宅」という言葉に置き換えて住宅を販売しています。

だからハウスメーカーの建てる注文住宅は「雰囲気」で勝負していたり、「デザイン」で勝負していたり、安心、安全の性能、最新の技術などという形で、巧みなマーケティングにより注文住宅として販売しているのだと思います。

※大手ハウスメーカーのいう注文住宅は世間一般的に考えられている注文住宅と大きく違うこともあるので、注意してください。

注文住宅について、より詳しくはリンク先の記事をご覧ください。

>>>注文住宅って何?依頼する前に知っておきたいイマドキの注文住宅の3つのタイプとは

Q:型式認定工法では、どのようにして設計をルール化しているの?(適合適合認定されているの?)

A:一般的にコストバランス重視で利益を限界まで上げるための設計をルール化しています。

型式適合認定制度を利用して型式認定工法として認定されるためにハウスメーカーは、より利益を上げるために部材の選定などを、構造の安全性が証明できるギリギリのラインまで繰り返し、コストバランスを計算していきます。

つまり、まずは「デザインコンセプト」となる「モデルプラン」を草案し、いいラインでのコストバランスを見極めたところで、自社の建てる住宅の設計ルールとして型式適合認定を受け型式認定工法として構造計算が不要な家を量産していっています。

あらかじめルール化され認可されたモデルプランに基づいて住宅が設計されるわけですから、一般的な注文住宅の認識と乖離が生まれ、たとえ注文住宅であろうとも、全てが自由に設計できるわけではなくなるのです。

Q:鉄骨系のハウスメーカーで型式認定工法が目立つのはなぜ?

A:鉄骨系の住宅にとても都合の良い制度だからです。

先にお話ししたように、鉄骨住宅は本来必ず構造計算をしなくてはなりません。

けれども型式適合認定を受け、「同じ部材を使って同じ作り方で建てる」ことを前提とした型式認定工法として認定されることで、自社実験データ上の安全を証明することができているということになります。

そのため、これから建てる家一棟一棟において構造計算を行う必要がなくなり、本来作成する必要のある書類や、審査や検査がパスされるために、より短期間で大量に住宅を供給できるようになります。

大手ハウスメーカーは、数の量産を名目に、住宅を大量に供給するために生まれた住宅会社であるという背景がありますから、これによりより短期間で大量に住宅を供給できるようになると言うわけです。

型式認定工法のメリットとデメリットのまとめ

今回の記事では型式適合認定について見てきました。

ポイントは2つです。

【型式認定工法のポイント】

1:短期間で家が建てられる
2:他社との差別化につながる

この2つが型式認定工法のポイントとなります。

それに伴うメリットやデメリット、注意点や問題点なども、たくさんあります。それについては本文でお伝えした通りです。

中立的な立場をとってきたつもりですが、どちらかと言うとハウスメーカーに厳しい意見となってしまったかもしれません。

しかし、実際のことを知っておかないと良い家は建てられません。

型式適合認定ひとつとってみても、世に溢れている都合の良い情報ばかりに目を向けていると、本質は見えてきません。

これだけ情報で溢れかえる世の中ですから、情報に振り回され物事の本質が見えづらい世の中です。

この記事を読んでいただいているあなたには、どうか、きちんとした情報を掴み、良い家づくりをされることを願っています。

本当にいい家を安く建てるために知っておいて欲しいこと

本当にいい家を予算内で建てるためには、コツがいります。

冒頭でもお話ししましたが、予算内で家を建てるためのコツとなる記事を再度下記にまとめておきましたので必要に応じて参考にしてください。

1:家を安く建てるための基本

注文住宅を予算内でおさめ、家を安く建てるためには、家の価格の決まり方や、家の価格を大きく左右する要素を把握しておく必要があります。

下記の記事では、家を安く建てるための基本やコツをまとめています。

予算内で家を建てるための、家を安く建てるための基本は下記リンク先の記事をご覧ください。

>>>家を安く建てる方法とコストダウンの7つの基本

2:家の形と家の価格の関係

家の形は家の価格を大きく左右します。

例えば、一般的に家の形が複雑になればなるほどコストがかかるようになります。

どのような家の形の場合、家の価格が高くなり、どのような形にすれば家の価格を抑えることができるのかについて下記リンク先の記事でまとめていますので、あなたの家づくりの参考にしてください。

>>>家づくりで覚えておきたい家の形とお金のかかる家とかからない家の違い

3:注文住宅のカタログを無料で請求して、家づくりを進めていく方法

記事内でもお伝えしていますが、注文住宅は依頼先によって決まるといっても過言ではありません。

つまり、限られた予算内で、あなたにとってのいい家を建てるためには、依頼先を見極め、あなたの要望に沿ってしっかりとした家を建ててくれる依頼先を選ぶ必要があります。

依頼先選びはくれぐれも慎重に行ってください。

下記リンク先の記事では、無料で住宅会社から住宅カタログを請求して、家づくりを進めていく方法についてまとめています。

これから家づくりを進めていく方は、とくに参考にして進めていっていただければと思います。

>>>無料で貰える住宅カタログを使いこなし賢く家を建てる6つのステップ



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