パティオについて、なんとなくわかるけれども具体的にどんな間取りをパティオというのか、いまいちわからないという方も多いのではないでしょうか。
それもそのはず、日本の住宅建築でいうパティオは、パティオ発祥の地の国のパティオとは違い、日本独自にアレンジし独特な進化を遂げたパティオです。
そのため、会話の中でパティオが登場しても、人それぞれで思い描くイメージが違い、なんとなくこんなものというふうにしか捉えられてない傾向があるのです。
またパティオと似たような住宅の間取りに「テラス」といったものも存在しますが、パティオとテラス、具体的に何が違うのだろう・・・そんな疑問を持つ方も少なくありません。
今回はパティオについてまずパティオとはなんなのかを説明した上で、本国と日本のパティオの違い、パティオの特徴やパティオとテラスの違い、さらにパティオの魅力とメリット、パティオをつくるうえで必ず検討しなければならない注意点やパティオのデメリットまで、パティオについて漏れなく解説していこうと思います。
この記事一本読んでいただくだけで、家づくりでいうパティオについて十分に理解していただけるような記事に仕上げましたので、これからの家づくりでパティオを検討されている方はぜひ、一度読んでいただくことをお勧めします。
パティオって何?
パティオとは中庭のことです。
パティオはスペインの南(アンダルシア地方)に建てられている住宅でよくみられる中庭で、周囲を建物で囲まれた屋根のない場所に中庭を設け、直射日光を防ぎながらも屋外空間でも快適に過ごせるように工夫されたスペースのことを言います。
スペインのアンダルシア地方では夏の最高気温が40度を超えることが珍しくなく、暑さを凌ぐために床にタイルなどを張り噴水や植木などでオープンスペースにし暑い夏場でも涼しく快適に過ごせるように工夫された中庭空間のことをパティオと言います。
ちなみにパティオとはスペイン語でそのまま「中庭」のことを指します。
日本のパティオとスペインのパティオは何が違うの?
日本の住宅建築でいうパティオは、いわゆる快適に過ごせるように工夫された「小庭」のことを指すことが多いです。
日本とスペインでは気候風土が違いますから、スペインのように床にタイルを敷き詰めたり、噴水を設けることをせずに、日本の生活習慣に合わせて過ごしやすいようにデザインされた中庭もしくは小庭のことを指すと思ってください。
日本では西欧の文化のような豪華絢爛な噴水を設けるのではなく古くから打ち水などで真夏の暑さを和らげてきた文化的な違いや生活習慣の違いがあります。
日本のパティオは、洋風にデザインされた日本独自の中庭のことだと思ってください。
パティオの役割は?
パティオには、コミュニケーションの場としての役割があります。
本場スペインでは、パティオは、リラックスしたり、涼を取ったり、周辺に植えられた草花を鑑賞したり、噴水を取り囲みながら井戸端会議などに花を咲かせる用途として使われます。
スペインでは路地を歩く人だったり、周りに住む住人が立ち止まるスペースとしてパティオが使用されますが、日本では生活空間に花を植え生活に彩りを与える庭としての役割で活用したり、近所の人を呼んで花草を眺めながら談笑するスペースとして使われます。
パティオとテラスの違いは?
パティオとテラスの違いは開放感の違いにあります。
パティオはテラスよりも中庭をよりオープンにした開放的な空間を指すことが多いです。
パティオとテラスは同じ一階部分に設けられた中庭のことを指しますが細かい部分で異なります。
パティオの特徴
まず、パティオには基本的に屋根を設けません。
そのためパティオでは中庭でくつろぎながらカラッとした空を見上げることができます。視線が空に抜けるため明るく開放的な空間となり、また風が通り抜ける涼しい空間になります。
パティオは空に開かれた庭と呼ばれたりしますが、日本では中庭や裏庭のスペースを有効的に活用することで、屋根のないオープンな中庭で寛いだり、談笑したりティータイムを楽しむ空間として利用できます。
また天気の良い日には食事をする用途として使われたりします。
パティオは涼をとる場所のため水を意識した空間であることが多く、一般的なパティオはテラスよりも公共性の高い、外に開かれた空間のことを指すことが多いです。
パティオのイメージがしやすいように、わかりやすく表現すればヨーロッパなどで周囲を建物に囲まれた路地裏を歩いているときに不意に見つけた椅子とテーブルがある誰もが休憩できるスペースのことだと思ってください。
テラスの特徴
一方でテラスと呼ぶときは屋根の有無は関係ありません。
テラスは屋外に設けられた一段上がったスペースとして位置付けられている空間を指すことが多く、リビングと床の高さを揃えてつづきの空間として、内部と外部の空間を緩やかに繋げてみせて広く感じられるようにしたり、内外部の空間に連続性を持たせた半屋外の空間を指すことが多いです。
テラスも様々な用途で使われますが、屋外用のチェア、テーブル、ソファーなどをおいて主に一息ついたりリラックスするスペースとしての活用が期待できます。
人によってはテラスを洗濯物を干すスペースとしても活用することが多いです。
テラスは涼をとるスペースというよりかは屋内外を繋ぐ半屋外スペースとしての色が濃く、パティオよりもプライバシー性が高められたプライベートな空間のことを指します。
パティオとテラスは人によって同じ意味で使われるケースも
厳密に言えばパティオとテラスは違うものになります。
ただ、日本の方と話すときは、人によってパティオとテラスの定義は関係なく話していることも多く、パティオとテラスを区別することなく両者を混同して曖昧な意味として使っていることもあるので、話の中でパティオやテラスが出てきたときは、広い意味で「中庭」の空間のことと捉えてもらって問題ありません。
そのほうが会話がスムーズに運ぶと思います。
パティオの魅力とメリット
家づくりでパティオをつくる魅力とメリットは下記の通りです。
【パティオの魅力とメリット】
1:開放的な中庭になる
2:「光」や「風」を意識した中庭になる
3:日々の生活に潤いを与えてくれる
4:間取りの工夫次第でプライバシーの確保ができる
5:屋外にあるセカンドリビングとして使用できる
パティオの魅力とメリット1:開放的な中庭になる
パティオの魅力は家の敷地内で視線が空に抜ける開放的な中庭として機能するところにあります。
周辺が建物で囲まれている家であっても、パティオをつくれば空間が開放的に感じられ、また室内に自然の光を取り入れることができるようになります。
パティオに草木を植え、ベンチなどを設置すれば、天気の良い日には家族が自然と集まる気持ちの良い中庭にすることができます。
パティオの魅力とメリット2:「光」や「風」を意識した中庭になる
パティオをつくると「光」や「風」が通り抜ける空間になります。
パティオをつくると中庭の空間が屋根のない空に抜ける中庭になるので、空からの採光はもちろん風が中庭から家の中にはいり、風が家の中にスーッと通り抜ける気持ちの良い家にすることができます。
建物の南側にパティオを配置しなくても、建物の形を「コの字形」に変えたり、「ロの字形」に変えたりし、建物の内側にパティオをつくればプライベートな中庭とすることもできます。
また、地階などの地下の空間にパティオを設ければ、地下の空間であっても採光性をよくすることができますし、風が通り抜ける気持ちの良い地階にすることが検討できます。
>>>家づくりで覚えておきたい家の形とお金のかかる家とかからない家の違い
パティオの魅力とメリット3:日々の生活に潤いを与えてくれる
パティオをつくると気持ちの良い空間になります。
前述したようにパティオは開放的で、光や風が通り抜ける気持ちの良い空間とすることができますから、心と体を休め、ふっと一息つくちょっとしたスペースとして空間を機能させることができます。
パティオをつくることで、生活の中に余白が生まれ、メリハリを利かせるといったように生活にリズムが生まれるので息を抜く部分がちょうど良い塩梅に機能することで、より生活に潤いを与えてくれるようになります。
また、パティオを坪庭として使うこともあり、草木などの植物を植えて家の中から見て趣が感じられる空間にすると言った使い方も検討できます。
さらに夜にライトアップし、パティオを贅沢に美しく見せる工夫をすると、心やすらぐくつろぎの空間とすることができます。
>>>家づくりで息を飲むほどおしゃれな坪庭をつくる5つのコツと15のメリット・デメリット
>>>中庭のある家の12のメリットやデメリットとおしゃれな中庭にする間取りのポイント
パティオの魅力とメリット4:間取りの工夫次第でプライバシーの確保ができる
パティオをプライベートガーデンとして使用することも検討できます。
日本の住宅建築では、スペインなどでみられる外国のパティオと違い、公共性をなくしプライバシー性の高い中庭にすることが多いですから、間取りのとりかたや工夫次第で、プライバシー性の高い中庭とすることもできます。
例えばスペースが限られている都市部などの住宅では、プライバシー性を高めながらも開放感を生み出しさらに採光を確保するために中心に中庭を作り、光や風が通り抜ける空間を確保することがあります。
都市部などの住宅密集地でも家の中にパティオをつくり空からの採光を確保することで外の風が感じられる気持ちの良い家にすることができるのです。
パティオの魅力とメリット5:屋外にあるセカンドリビングとして使用できる
パティオをセカンドリビングとして利用する方法もあります。
例えばパティオに屋外用のソファ、テーブル、椅子を設置し、間接照明などを要所要所に配置すれば、素敵なセカンドリビングとして使うことができます。
この時リビングとの間に段差をつけずに地続きのパティオにすれば、お互いの間取りが緩やかにつながり空間を広く見せることができますし、リビングとの間に段差をつけて緩やかにお互いの間取りを分けるように工夫すればパティオを日常の空間からちょっとだけ距離を置く特別な空間という印象を与えやすくなります。
この時、同時にパラソル、オーニングなどを設置しておけば、よりパティオが華やかな印象になり、利用用途は広がると思いますのでぜひ検討してみてください。
>>>おしゃれで気持ちいいアウトドアリビングをつくる4つのポイントと9つの注意点
パティオをつくるときの注意点とパティオのデメリット
家づくりでパティオをつくるときは下記の点に注意する必要があります。
【パティオの注意点とデメリット】
1:排水設備を整える
2:メンテナンスが大変
3:コストが高くなる
4:断熱性を高める
パティオの注意点とデメリット1:排水設備を整える
「家づくりで中庭のある家「コートハウス」にする15のメリットとデメリット」でもお伝えした通り中庭をつくるときに注意していただきたいのが、排水設備の整備です。
中庭に溜まった水は排水管を通り、水を外に排出しますが、太いパイプを備え付けることはもちろん、きちんと排水されるように工夫しておかないと水の逃げ道がなくなってしまい、中庭に水が溜まり家の中にまで水が浸水してしまうリスクがあります。
特に強い雨が降った時などに起きがちですので、パティオをつくるときは必ず排水が十分に検討された中庭になるように排水設備を整えてください。
パティオの注意点とデメリット2:メンテナンスが大変
中庭に溜まった水を屋外へ排出する排水管は定期的なメンテナンスを必要とします。
なぜなら草木や泥などによって排水管が詰まってしまい、中庭に溜まった水をうまく排水できなくなってしまうことがあるからです。
排水管が詰まってしまい、中庭に水が溜まってしまうと水が家の中まで浸水し、最悪のケースでは家の構造部を傷めてしまい、家の寿命を著しく短くしてしまう可能性があります。
詰まってしまってからでは遅いので、必ず定期的なメンテナンスを施して中庭の水をきれいに排水できる状態を保っておくことが必要になります。
パティオの注意点とデメリット3:コストが高くなる
パティオを設置するためのコストはもちろんですが、メンテナンスにもコストがかかるので、家の維持管理コストが高くなります。
パティオをきれいに保つための掃除や手入れなど専門の業者に依頼しなければならないことも増えますので、総じてコストが高くなってしまうのです。
またパティオをつくる際に「コの字形」にしたり「ロの字形」にしたり家の形を変形した分、外壁の壁面量が増えるため建築コストはもちろん、掃除費用、家の性能を維持するための塗り替えをするなどにかかるメンテナンスコストが高くなります。
また見栄えの良い立派なパティオをつくるにはコストがかかるものですし、中庭をつくると一般的な家よりも窓ガラスが多くなることも多く、建物の構造上の強度を高くする必要があったり建物の形を変形させる必要が出てきたりとどうしても家の価格が高くなってしまうのです。
>>>家づくりで覚えておきたい家の形とお金のかかる家とかからない家の違い
さらに凹凸が増えた分材料費、工事費用などが高くなり、家のコストに重くのしかかってきます。
パティオの注意点とデメリット4:断熱性を高める
パティオをつくると外気の影響を受けやすい間取りとなることが多いです。
例えば、家の開放性を高めるために窓を多用したり、風通しを良くするために開口部を多くしたりと、様々な工夫がなされます。
窓を含む開口部には断熱材を入れることができませんから、断熱性を高めるための工夫をして家づくりをしないと冬場に寒くてどうしようもない家になってしまうことがあります。
そう言った間取りで断熱性を高めるためには、窓ガラスには必ず複層ガラス、アルミは樹脂製のサッシ、さらに厚手のカーテンを用意するなど熱を逃さない工夫をすると良いでしょう。
まとめ
今回の記事ではパティオとテラスの違いから、パティオの魅力やパティオの注意点に至るまでお伝えしてきました。
パティオは生活の中にうまく取り入れれば素敵な心休まる空間にすることができます。
ぜひ、今回の記事を参考にしていただき、あなたの家にも魅力的なパティオを作っていただき素敵な家づくりをしていただければと思います。