近年アウトドアブームからか、家づくりでもログハウスが注目を浴びているように感じます。
テントを張ったり焚き火を楽しんだりなど「野遊び」を楽しむキャンプのイメージからか「趣味を楽しむ家」だったり「自由な暮らし」と言うキャッチコピーも多く見られますが、一般の木造住宅と違い注意しなければならない点も多いことは案外知られていません。
ログハウスは一般的な木造住宅と比べてメリットもあれば、デメリットも多く非常に相性の分かれる家だと思います。
詳細については本文に譲りますが、軽い気持ちでログハウスを選んで建ててしまうと「こんなはずではなかった・・・」と後悔をしてしまう方も多いでしょう。
多くの人にとって家は一生に一度の買い物です。ログハウスに住むとはどういうことなのかを十分に検討し、ログハウスの性質をきちんと理解して家づくりをしないと、もしかしたら5年後、10年後後悔することになるかもしれません。
今回の記事では、そんなログハウスについて、まずログハウスとはどんな家なのかをお話しした上で、一般的な木造住宅との違い、ログハウスを建てるメリットやデメリットからログハウスを選ぶ上での注意点、ログハウスの工法による違いやログハウスで使われる樹種の特徴に至るまで、昨今のログハウスの全てがわかるような記事の作成を心がけました。
家づくりの選択肢の一つにログハウスが入っているのであれば、ぜひ、今回の記事を読んでいただき酸いも甘いも知った上でログハウスでの家づくりを検討していただくことをお勧めします。
【いい家を安く建てるために知っておきたいこと】
注文住宅を予算内で建てるために、住宅会社に依頼する前に知っておいて欲しいことが3つあります。
必要に応じて読み進めていただくと、より良い家づくりをしていただけるかと思いますので、注文住宅で家を建てることを検討されている方は参考にしてください。
1:家を安く建てるために知っておきたい7つの基本
予算内で注文住宅を建てるにはコツがいります。
あまり知られていませんが、家にかかるコストを大きく削減し、家を安く建てるための基本は7つしかありません。
下記リンク先にわかりやすくまとめてありますので、予算内でいい家を建てたい方は「家を安く建てる方法とコストダウンの7つの基本」を参考にしてください。
2:家の形次第で家の価格はこんなにも変わる!?
実は、家にはお金のかかる形の家と、お金がかからない形の家があります。
下記リンク先の記事ではお金がかかる家と、お金がかからない家の違いをわかりやすく説明しています。
また、リンク先の記事では、それぞれの家の形による特徴や性能の違いもまとめてありますので、詳細については「家づくりで覚えておきたい家の形とお金のかかる家とかからない家の違い」をご覧ください。
3:無料で注文住宅のカタログを請求して家づくりを進めていくコツ
本文でもお話ししますが、注文住宅は依頼先で決まります。
だからこそ、依頼先は慎重に検討したいところですが、依頼先を検討するには、まずはこれからどんな家を建てたいのかを知らなくてはなりません。
無料で住宅会社から請求できる住宅カタログを請求して理想の家を建てる方法については「無料で貰える住宅カタログを使いこなし賢く家を建てる6つのステップ」をご覧ください。
Contents
- 1 ログハウスとは
- 2 ログハウスには様々な種類がある
- 3 丸太を積み重ねない方法でつくるログハウスもある
- 4 ログハウスと一般的な木造住宅の違い
- 5 無垢材を使用したログハウスのメリット
- 6 無垢材を使用したログハウスのデメリット
- 7 ログハウスで欠かせない主なメンテナンス
- 8 ログハウスの工法(丸太組工法のハンドヒューンとマシンカット)
- 9 丸太組工法による2種類のログハウス
- 10 ログハウスに用いられる交差部の形状「ノッチ」の種類
- 11 ノッチの加工方法は5種類
- 12 ログハウスに使われる主な丸太(無垢材)の種類
- 12.1 1:レッドシダー(心材:赤色 辺材:白色)
- 12.2 2:杉(心材:淡褐色 辺材:黄白色)
- 12.3 3:北欧パイン(レッドパイン)【日本名:欧州赤松】(心材=クリーム色 辺材:白色)
- 12.4 4:北米パイン(心材=薄クリーム色 辺材:薄クリーム色)
- 12.5 5:スプルース【日本名:ベイトウヒ(シトカスプルース)】(心材=白色、辺材=白色)
- 12.6 6:スプルースパイン(心材=薄白色 辺材:薄白色)
- 12.7 7:ダグラスファー【日本名:ベイマツ】(心材=薄赤色 辺材:白色)
- 12.8 8:ヒノキ(心材:淡黄褐色 辺材:黄白色)
- 12.9 9:唐松(カラマツ)(心材:赤褐色 辺材:褐色)
- 12.10 10:ウェスタン・ラーチ【日本名=西洋唐松】(心材:小豆色 辺材:白色)
- 13 一般的なログハウスの施工工程
- 14 ハンドヒューンログハウスの製造工程
- 15 マシンカットログハウスの製造工程
- 16 ログハウスについてのまとめ
- 17 世界一巨大なログハウス「シャトーモンテベロ」について
- 18 予算内でいい家を安く建てるために知っておいて欲しいこと
ログハウスとは
ログハウスとは、本来の意味では、丸太(=LOG)を積み重ねてつくる家のことを言います。
昨今のログハウスは丸太を積み重ねた家でなくても、太い丸太を部分的に取り入れて「ログハウス」の雰囲気にした「ログハウス風」の建物も含めてログハウスとして分類されていますが、もともとは丸太を積み重ねてつくる家がログハウスです。
本来のログハウスは、太い丸太の端の方にノッチと言われる窪みを入れて、丸太の噛み合わせをよくするためにグルーブという溝を掘り、上下の窪みに嵌め込み丸太を積み重ねていく方法で家の形をつくっていきます。
国や地域によっては外壁表面に漆喰を塗って装飾を施したり、鉄分を多く含んだ塗料を塗って耐久性を高めたりと外壁に様々な工夫が施されることもあります。
ログハウスには様々な種類がある
ログハウスには工法(構造)、使用する丸太の断面の形状、丸太の上下が重なる部分(グルーブ)の形状、丸太同士が直交する部分の形状(ノッチ=丸太の端の部分の噛み合わせの形状)、そしてどのような樹種を使うのかによって特徴が生まれ、それぞれの組み合わせによって様々な特徴や表情を持つログハウスを建てることができます。
【ログハウスは下記4点により違いが生まれる】
1:工法(構造)
2:断面形状
3:グルーブの形状やノッチの形状(交差部の形状)
4:丸太として使われる樹種
丸太の厚みや加工の仕方によってもログハウスの雰囲気や味わいは大きく変わってきます。
丸太を積み重ねない方法でつくるログハウスもある
現在はログハウス風の建物もログハウスとして分類されているといったことを先ほどお話ししました。
では、丸太を積み重ねないログハウスはどんなふうに建てられるのでしょうか。
丸太を積み重ねないログハウスで用いられる工法(家の建て方)は以下の2種類です。
【丸太を積み重ねない方法で建てる主な2種類のログハウスの工法】
1:ポストアンドビーム工法
2:ピースエンピース工法
これらの丸太を積み重ねない工法が生まれた背景には、ログハウスに合理性を追い求めた結果であったり、深刻な木材不足によるものであったりと様々なことが言われていますが、そうした歴史的背景により新しいログハウスの工法が生まれた言われています。
以下にそれぞれの工法の特徴を簡単に書き記していきます。
ポストアンドビーム工法とは
ポストアンドビーム工法とはいわゆる「柱」と柱と柱の間に横にかける「梁(はり)」に「丸太」を使った軸組在来工法のことをいいます。
「柱(縦)」、「梁(横)」、それに加えて補強の意味で「筋交い(縦斜め)」に丸太を用いてフレームをつくるログハウスの工法の
ことだと思ってください。
必要な場合は「梁」と「梁」の間に「火打ち」と呼ばれる横斜めがけの丸太を用います。
ただし「筋交い」や「火打ち」は建物の構造上補強の意味を持ちますが、意匠的な意味合いが大きいものとなります。
ちなみにポストアンドビームとは、英語表記にすると「post & beam」となり、「Post = 柱」と「beam = 梁」に丸太を使用した家という意味を持っています。
ポストアンドビーム工法で建てられるログハウスは、構造的には日本の木造住宅の代表格である木造軸組在来工法のようなものだと思ってください。
・ティンバーフレーム工法(TF工法)
ティンバーフレーム工法は構造的にはポストアンドビーム工法と似たような構造をしていますが、その違いは材料として用いる木材にあります。
ポストアンドビーム工法が建物の骨組み(フレーム)をつくる際に「丸太」を使うのに対し、ティンバーフレーム工法では、建物の骨組み(フレーム)に太さのある「角材」を使い建てていきます。
表面にあらわれる意匠が、丸太の丸い質感ではなく、四角く「角」の出た意匠となり、フラットになるので納まりもよくなる特徴があります。
また、ティンバーフレーム工法で使われる「角材」にはある程度の太さが必要で、フレームに太い「角材」が使われ、装飾として洋館のように「柱」と「梁」を美しくみせることができます。
さらに「柱」や「梁」の間に「筋交い」や「耐力壁」を使用しないのも特徴で、厳密にはポストアンドビーム工法とは構造が異なります。
ティンバーフレーム工法はイギリスで生まれ、アメリカで発展した軸組工法と言われています。
※ややこしいようですがハーフティンバー工法というものもあります。
ハーフティンバー工法とは外壁に骨組みとして使われる角材が露出した状態の工法のことを言います。露出した柱と柱の間はレンガや漆喰で塗られ外壁がつくられていました。
隙間が生じやすいハーフティンバーに対して、ティンバーフレーム工法では外壁を張り骨組みを外に見せることなく隠すように処理をしていきます。こうして、骨組みの外側に外壁をはることで隙間を埋め断熱性と気密性が高まり寒い冬場でも快適に過ごせるようになりました。
現在伝えられるティンバーフレーム工法のもともとの形はハーフティンバーで、ヨーロッパで生まれ、アメリカに移住した移民によってティンバーフレーム工法に発達したと言われています。
ポストアンドビーム工法で建てるログハウスのメリット
丸太を積み上げてつくる丸太組工法と比較して、ポストアンドビーム工法には下記のようなメリットがあります。
【ポストアンドビーム工法でログハウスを建てるメリット】
1:間取りの自由度が高い
2:増改築しやすい
3:防火法上の対応がしやすい
4:セトリング(重さによる沈み込み)の心配が少ない
5:ログハウス特有の自然な味わいを持ちながら内外観の表情を楽しめる
1:間取りの自由度が高い
まず第一にポストアンドビーム工法で建てるログハウスは間取りの自由度が高いことがあげられます。
丸太組工法ではデザイン上の制約が生まれますが、ポストアンドビーム工法ではデザイン上の制約が少なく、デッドスペースの少ない住む人に応じた自由度の高い間取りをプランニングできるメリットがあります。
2:増改築しやすい
ポストアンドビーム工法で建てるログハウスは、構造上は日本の一般的な木造住宅に用いられる在来軸組工法と同じなので増改築がしやすいメリットがあります。
対して丸太組工法は増改築はできないことはないものの、構造上かなりの制限がかかります。
3:防火法上の対応がしやすい
丸太組工法と違い、法律的には在来軸組工法と同等のものだとみられるので、漆喰などの塗り壁にしたり、レンガ、板張りにしたりなど防火法上の対応がしやすくなります。
4:セトリング(重さや経年変化による沈み込み)の心配が少ない
丸太組工法で建てられたログハウスは、ログハウスを建ててから数年は、セトリング(沈み込み)がおきてしまうので、建物の寸法が安定しませんが、ポストアンドビーム工法ではセトリングが少なく(木材は縦方向の収縮がほとんどないため、ほぼ起きないと思って良い)、セトリングによる調整などを心配することなく過ごせるメリットがあります。
5:ログハウス特有の自然な味わいを持ちながら内外観の表情を楽しめる
ポストアンドビーム工法では、柱と柱の間の素材を漆喰、石、レンガ、板など自由に選ぶことができるので、建物内外装の表情に色をつけることができます。
つまり総じて、ログハウス特有の丸太の迫力はそのままに一般住宅のような自由な家づくりを楽しむことができます。
ちなみに、柱と柱の間に「フィラーログ」と呼ばれる短い板を水平にに積み上げることで壁に表情をつけていく工法をピースエンピース工法と言います。
ピースエンピース工法とは
ピースエンピース工法は、ポストアンドビーム工法で建物の骨格をつくり、さらに「柱」と「柱」との間の壁に「フィラーログ」と呼ばれる「短いログ材」を水平に落とし込み壁を作っていく工法です。
壁面が「フィラーログ」と呼ばれる「短いログ材」によって構成されるため、見た目の雰囲気は本来の丸太組工法のログハウスに近い仕上がりの家になる特徴があります。
ログハウスと一般的な木造住宅の違い
ログハウスと一般的な木造住宅では、家を建てる際に用いられる「木材の量」はもちろん、建物の「構造」に大きな違いがあります。
ログハウスはの基本は丸太(ログ材)を横に積み重ねた家
昔ながらの方法でログハウスの丸太を横に積み上げて建物をつくっていく工法を「丸太組工法(ラウンドノッチ工法)」と言います。
丸太組工法で建てるログハウスは構造としては「校倉構造(あぜくら こうぞう)」となります。
そして、ログハウスにはこの丸太を横に積み重ねる「丸太組工法(ラウンドノッチ工法)」をはじめとして、「ポストアンドビーム工法」のような一般的な木造住宅のように「柱」と「梁」でフレームをつくった構造をしたもの、「ピースエンピース工法」のように柱の間に「フィラーログ(短いログ材)」を水平に落とし込んでいくものなどがあります。
現在では様々なログハウスが見られますが、まず、もともとのログハウスは、太い丸太にノッチと呼ばれる上下の丸太がうまく嵌まり込むようなくぼみを作り、グルーブという溝を掘って上下の丸太を固定し、丸太を横に積み重ねていく構造の建物のことだと解釈してください。
合理性の追求と大量生産という視点で生まれた新たな工法
そして環境や時代の後押しなどによって、より合理的かつ大量にログハウスを建てようとした際に考えられた方法が、「柱」と「梁」に太い丸太を使って建てる「ポストアンドビーム工法」によるログハウスであり、より雰囲気を近づけるために柱と柱の間に「フィラーログ(短いログ材)」を水平に落としてつくる「ピースエンピース工法」だと考えると現在のログハウスを理解しやすいかと思います。
丸太組工法で建てるログハウスの構造が「校倉構造」なのに対して、ポストアンドビーム工法のような軸組工法で建てるログハウスは構造としは「軸組構造(じくくみ こうぞう)」となります。
機械で丸太を加工するマシンカットログハウスの登場
さらには、コンピュータの登場によって丸太を機械で成形加工し、丸太の形を「D」の形にしたり「角」のある形に成形加工された「ログ材」を横に積み上げてて建てる方法に派生していったと考えると、ログハウスはどんな家なのか、ログハウスに対する理解は深まるかと思います。
※機械で丸太を加工するマシンカットログハウスは1958年にフィンランドで建てられたのがはじめとされています。
また、詳細については後の項目でお話ししますが、コンピューター制御による機械加工の「マシンカットログハウス」では一般住宅よりも4倍以上、昔ながらの手づくりで建てる「ハンドヒューンログハウス」に至っては8倍以上の木材が一般的な木造住宅よりも使用されています。
※平均的な広さ30坪のログハウス(丸太組工法)1棟あたりで用いられる太い丸太の量は樹種や樹齢、工法によっても違いますがおよそ500本以上必要となります。
ちなみに広さ30坪の在来工法で建てられる木造住宅で使われる全ての木材の使用量は、樹齢50年の杉の木が22メートルの高さだと仮定して、加工時に裁断された細い部分など使われない部分も含めると、およそ60本の杉材が必要になります。
参考:家を建てるためには、何本の木が必要ですか。:農林水産省(外部リンク)
参考:高知県産木材を用いた木造住宅の普及推進に関する研究(外部リンク)
一般的な木造住宅はログハウスよりも細い「柱」と合板などによる「面」で構成される
ログハウスに対して、一般的な木造住宅ではログハウスよりも細い木材を使い「柱」をたて、そのままでは横揺れに弱いため強度を補強するために柱と柱の間に「筋交い」を入れて構造を安定させていきます。
これを「在来軸組工法」や「軸組在来工法」と言いますが、このほかにも2×4材のような細い柱をたて、その間に木製のパネル(合板)や石膏ボードなどを張りつけブロック体をつくって構造上の強度を高める方法などがあります。
【一般的な木造住宅の工法は主に2通り】
1:木造在来軸組工法 = 建物の骨組みが「線」によって構成される家(柱、梁、筋交いなどの「線」によって構成される家)
2:木造枠組壁工法 = 建物の骨組みが「面」によって構成される家(木製のパネルを使って壁、床、天井など「面」によって構成される家)
1つ目の方法「在来軸組工法」では、まず「柱」をたて「梁(はり)」を通し建物の骨格をつくっていきます。
その上で「柱」や「梁」を安定させるために柱と柱の間に斜めがけの「筋交い」を入れて建物の構造上の安定化をはかっていきます。
2つ目の方法「木造枠組壁工法」は、別名「ツーバイフォー工法(2×4工法)」や「枠組壁工法」とも呼ばれますが、壁という面によって支える家で、2×4材で骨組みをつくったら、木製のパネルや石膏ボードで「床」、「天井」、「壁」などの面をはりつけブロック体で強固なものとし、建物の耐震性を高めていきます。
どちらの方法を選ぶかで構造上の特徴はもちろん、将来に渡っての間取りの可変性などにも影響が生まれますので工法は重要で、今後どのような住まい方をしたいのかによって十分に検討する必要があります。
例えば建物を「面」で支える枠組み壁工法の場合、構造上どうしても抜けない「壁」が出てきてしまいますが、耐震性がよくなりさらに気密性や断熱性、遮音性、耐火性に優れた特徴があります。
一方で、木造軸組在来工法では、構造計算の上で「柱」を抜くなど比較的間取りを自由に決めることができますが、一般的にはその分耐震性や気密性、断熱性などには劣ります。
ただし、何をよしとするかは住まい方や暮らし方によって変わってくると思いますので、それぞれの工法の長所、短所を見極めて家づくりをしていく必要があります。
その他、工法のメリットやデメリットについては以下のリンク先の記事にまとめてありますので参考にしてください。
>>>ハウスメーカーが注文住宅で採用している6つの工法のメリットとデメリット
>>>家づくりで知っておきたい3つの構造と6つの工法のメリットとデメリット
無垢材を使用したログハウスのメリット
ここからは、無垢材を使用したログハウスのメリットについてお話ししていきます。
木には素材それ自体がリラックス効果などの視覚的、心理的な作用がありますが、性能面としての効果は下記の点に優れています。
【ログハウスのメリット】
1:断熱性に優れており省エネ効果が期待できる
2:防音・吸音性に優れている
3:天然の調湿機能があり快適な湿度に保ってくれる
4:防火性や耐火性に優れている
5:耐久性はもちろん耐震性に優れている
6:紫外線を吸収するため優しい光になる
1:断熱性に優れており省エネ効果が期待できる
ログハウスで使われる木材は断熱性に優れている特徴を持つため、夏は涼しく、冬は暖かい家になります。
ログハウスに用いられる主原料の木には細長く小さな空気の層が何層にも渡って含まれており、熱を内外部に伝えにくく、また空気の層に熱を蓄積する働きをします。
そのため暑い夏場は直射日光を遮ってくれるので涼しく感じられ、寒い冬場は室内の温められた空気を逃さず保温し、いつまでも暖かいといったように、まさしく天然の断熱効果を感じられる素材だと言えます。
木材が持つ断熱性はコンクリートの12倍、鉄の500倍にもなると言われています。
もちろん、用いられる木材の種類によって細かい性質は異なりますが、ログハウスで用いられる無垢材はどの木材も断熱性に優れています。
2:防音・吸音性に優れている
ログハウスに使われる厚みのある木は、防音性に優れており内外部の音を遮断してくれます。
また音を吸収する吸音性能にも優れているため、コンクリート住宅に見られるような響き渡る反響がなく、音が反響した際も不快さがない柔らかくも心地よい残響音として伝わる特徴があります。
3:天然の調湿機能があり快適な湿度に保ってくれる
ログハウスに使われる無垢材(木材)には、何もしなくても空気中の水分を吸ったり吐いたりして湿度を調整してくれる調湿機能があります。
無垢材(木)は、湿度が高い時には室内の水分を吸収し、湿度が低い時には水分を吐き出してくれる作用があるため、無垢材を使用したログハウスは天然の調湿性能(湿度コントロール機能)が期待できます(空気中の湿度が高いときには水分を溜め込み、湿度が低いときには水分を吐き出してくれます)。
日本の高温多湿な住環境において湿度を調整してくれる機能は有利に働き、快適な住環境を期待できます。
4:防火性や耐火性に優れている
実はログハウスに使われる厚みのある木(丸太)は、燃えにくく防火性能や耐火性能に優れた素材です。
厚みのある木は万が一燃えてしまっても、内部まで燃え進むのには時間がかかり、多くのケースでは表面だけが燃え(表面だけが墨になる)やがて鎮火します。
さらに天然の木は燃焼しても人体にとって有害な化学物質を発生させないため、適切に対処すれば火災時に吐き出した化学物質によって一瞬で気を失ったり動けなくなったりする可能性が低くなります。
5:耐久性はもちろん耐震性に優れている
ログハウスに使われる木(丸太)は、厚みがあって太く頑丈なものが多く、耐久性にも優れています。
また、ログハウスに使われる天然木は、メンテナンスが必要となるものの、定期的なメンテナンスを施して適切に付き合っていけば時間が経つほどに味わいが生まれ、また強度も増していく特徴があります。
6:紫外線を吸収するため優しい光になる
ログハウスに使われる無垢材(木材)は紫外線を吸収する効果があるため、日差しの強い夏場でもコンクリートで出来た家のように反射する光を眩しく感じることがありません。
目に心地よいと感じる反射率は50%から60%だと言われていますが、木材の反射率もちょうど50%から60%程度のため、反射した光は目にも優しい心地よい光になります。
無垢材を使用したログハウスのデメリット
つづいて、無垢材を使用したログハウスのメリットについてお話ししていきます。
【ログハウスのデメリット】
1:建築費用が高い
2:手間がかかる
3:メンテナンス費用が高い
4:木は腐ることがある
5:壁の沈み込み(セトリング)があり数年は安定しない
6:屋根勾配がきつい
7:隙間などから雨が漏れることがある
1:建築費用が高い
まず最大のデメリットは無垢材を使ったログハウスは、建築費用が一般的な住宅よりも高くなることがあげられます。
費用を抑えるためには木材の厚みを薄くする必要が出てきますが、一般的には厚みを減らすと性能も悪くなるため、日本で本物の天然木による迫力のあるログハウスを建てるとなると、倍以上かそれ以上、どうしても価格は高くなってしまいます。
2:手間がかかる
ログハウスは、定期的に手入れをする必要があり、建物を維持していくのに非常に手間がかかります。
立地条件や環境などにもよりますが、特にデッキなどの雨風にさらされる部分は傷みやすく、一般的な環境でも最低1年に1回は防腐スプレーなどを吹き付ける必要がありますし、外壁の塗装に至っては2年を目安に塗り替えが必要になります。
一般的な木造住宅の外壁の場合、外壁のメンテナンスはおよそ5年〜10年程度で良いと言われていますから、塗り替えが必要な回数は一般的な木造住宅よりも多く手間がかかります。
ここであげた、デッキや外壁、建物の沈み込みによる調整(セトリング)意外でも屋根のメンテナンスなどもこまめに行う必要があり、定期的な手入れを怠っていると、傷みやすく、湿気はもちろんシロアリなどの被害に遭いやすくなります。
※ただし手間をかけた分だけ味わいは増していきます。
3:メンテナンス費用が高い
木は生きているとか呼吸をしていると言いますが、伐採された木は本当に生きているわけではありません。
何もしなくても自然に調湿機能を保っているだけです。ただし、その機能を維持するためには定期的なメンテナンスは必ず必要になります。
ログハウスを語るときに日本では平安時代に建てられた奈良の「正倉院 正倉」の話題が取り扱われることも多いですが、「正倉院 正倉」はきちんとメンテナンスをしてこその現存物だと言うことを忘れないでください。
ログハウスのメンテナンスには「手間」はもちろんかかりますが、「費用」も一般的な住宅に比べると高くなることを十分に理解しておいてください。
4:木は腐ることがある
メンテナンスや手入れを怠っていると木は腐ることがあります。
木が腐る原因は「結露」や「湿気」などの水分が原因で繁殖する「木材腐朽菌」によるケースが多いですが、木が腐ってしまった場合は、耐久性を著しく損なってしまうため注意が必要です。
木を腐らせないためには、しっかりと面倒を見てやる必要があり、やはりこまめな点検や定期的なメンテナンスを欠かすことはできません。
5:壁の沈み込み(セトリング)があり数年は安定しない
ログハウスは竣工後も乾燥による木材の収縮があり、丸太の重さによってゆっくりと壁が沈み込んでいきます。
また木材の収縮によりドア、サッシ、窓など様々な箇所で歪みが生じてくるため少なくとも数年間は寸法が安定しないと考えてください。
こうしたログハウスの沈み込み現象を「セトリング」と言いますが、丸太(またはログ材)を積み上げていくログハウスは素材の特性上どうしてもセトリングがおきますので、建ててから最低でも数年は定期的な調整が必要になります。
また冬場など、乾燥収縮の過程で「パキ」などと家の木材が鳴ることもあります。
6:屋根勾配がきつい
ログハウスの特徴の一つに屋根勾配が急であるところがあります。
ログハウスは一般的な木造住宅よりも屋根勾配がきつい特徴を持っていることはデメリットとしてよく理解しておく必要があります。
7:隙間などから雨が漏れることがある
ログハウスは構造上、隙間から雨が漏れることもあります。
建てた直後は問題なくても、木が乾燥や収縮を繰り返すことで寸法がずれてきてしまったり割れ目ができてしまうこともあるので、雨漏りをした場合は速やかに修繕が必要になります。
ログハウスで欠かせない主なメンテナンス
なお、ログハウスでは主に下記のようなメンテナンスが必要となります。
1:セトリングに関係するもの
セトリングとは丸太(ログ材)の収縮による壁の沈み込みのことを指しますが、竣工後2年から3年程度は定期的に沈み込みによる調整などのメンテナンスを施す必要があります。
また窓ドア上部の収縮スペースの点検をはじめ、ドア窓などの開口部周りの調整、建具周りの調整も必要で、隙間ができている場合は必要に応じた措置をとる必要があります。
2:デッキや壁の塗装
ログハウスの雨風にさらされる部分は定期的な点検やメンテナンスは必須となります。
デッキはおよそ1年ごとに防腐防水スプレーを散布する必要があり、また壁はおよそ2年ごとに塗装(塗り替え)を行う必要があります。
建物に異常があった場合は必要に応じて措置が必要になります。
3:樹液の染み出し除去
樹種によっては乾燥後に樹脂(ヤニ)が染み出してくることがあり、樹脂が染み出してきたらナイフなどで拭き取ったり、アルコールなどを染み込ませた布などで拭き取る必要があります。
ログハウスの工法(丸太組工法のハンドヒューンとマシンカット)
記事冒頭で、現在のログハウスの工法には「丸太組工法(校倉構造)」と「軸組工法(軸組構造)」によるものがあるとお伝えしましたが、丸太組工法にも「手づくり」で素材を加工するのか、「機械制御」で素材を加工するのかによって大きな違いが生まれます。
つまり、加工方法と丸太の使い方によってログハウスの工法は以下のように分けられています。
【ログハウスで用いられる主な工法】
1:丸太組工法(ラウンドノッチ工法)
1ー1:ハンドヒューンログハウス
1ー2:マシンカットログハウス
構造:校倉構造
2:軸組工法
2ー1:ポストアンドビーム工法
2ー2:ピースエンピース工法
構造:軸組構造
以下からは丸太組工法のログハウス、「ハンドヒューンログハウス」と「マシンカットログハウス」について解説していきます。
丸太組工法による2種類のログハウス
ログハウスの原点ともいえる丸太組工法はもともとは、「ハンドヒューン」工法のことを指していました。
けれども、上記でお伝えしたように現在では、原材料の加工の仕方によって2つの工法に明確に分類されています。
【手づくりか機械加工か、素材の加工の仕方によって異なる2種類の丸太組工法によるログハウス】
1:ハンドヒューンログハウス
2:マシンカットログハウス
「ハンドヒューンログハウス」と「マシンカットログハウス」の主な違いは手作りによるものか、コンピュータ制御によるマシンによるものかによりますが、具体的にはこの2つのログハウスは下記のような点に特徴があります。
ハンドヒューンログハウスとは
ハンドヒューンログハウスは、ログビルダーと呼ばれる職人手作りのログハウスのことを言います。
おそらく「ログハウス」と聞いたときに一般的に連想されるのがこのハンドヒューンログハウスだと思います。
現在では皮剥き作業(ピーリング)は加工作業場で行うことが多いですが、もともとは、伐採した太い丸太の皮をドローナイフで剥ぎログハウスに使われる丸太の表情を整えていました。
その後にチェーンソー(もともとは手斧)を使って上下に配置された丸太がうまく重なるように、複雑なカーブを描くようにノッチの加工や、丸太と丸太をより密着させてずれないようにするグルーブ加工という上下の窪み(上下のログ材の交差部分)をつくっていきます。
ハンドヒューンログハウスは、木の質感やログビルダーによる加工の痕跡がそのまま「味」として現れるのでより野性的で荒々しい印象で迫力のあるログハウスになります。
その反面、室内に家具が配置しにくくなるなどのデメリットもあります。
マシンカットログハウスとは
マシンカットログハウスは、1958年にフィンランドで生まれたログハウスで、ログハウスの原材料である丸太をコンピューターで制御した機械加工によって製材した「ログ材」を使い組み上げを行なっていきます。
コンピューター制御による加工のため加工精度が高く、より複雑な加工ができるため、一般的には丸太上下に凹凸部分の実加工(さねかこう)を施し上下のログ材を密着させていきます。
これにより、ハンドメイド(ハンドヒューンログハウス)よりも、上下の丸太同士の密封性が増す上に、品質が安定していると言われており、より均一な部材に成形、加工することができる利点があります。
製材加工するため、大量生産に向いていて、ハンドヒューンログハウスのような荒々しい印象ではなく、より洗練されていてモダンな印象のログハウスになります。
マシンカットログハウスに使われるログ材の形状
マシンカットログハウスで使われるログ材の形状は大きく分類すると以下の5つの形状が代表的なものになります。
【マシンカットログハウスの丸太の形状】
1:丸ログ
2:楕円ログ
3:タイコ型ログ
4:角ログ
5:D型ログ
1:丸ログ
丸太の形そのままに丸くカットされ上下に実(さね)と呼ばれる凹凸加工が施されたログ材を「丸ログ」と言います。
丸太が持つ自然な雰囲気にすることができ、ログハウスならではの質感や暖かみをそのまま味わうことができます。
丸ログは1962年にフィンランドで生まれたと言われています。
2:楕円ログ
丸ログの「左右」のアールを緩やかにし楕円の形にしたログを楕円ログと言います。
丸太を上下に重ねることで生まれる丸太特有の出っ張り感、圧迫感を抑えることができます。
3:タイコ型ログ
丸ログの「上下」をカットしてタイコの形のようにしたログ材を「タイコ型ログ」と言います。
丸ログのように室内側の内壁、それに外壁両方が丸みを帯びた壁になりますが、ログハウスならではの丸太小屋らしさを残しながらも、丸太の「上下」をカットすることでログ材同士の密着性がまし、丸ログよりも、ログ材同士の密着性を高めることができるメリットがあります。
4:角ログ
断面のアールをカットし四角の形にしたログ材を「角ログ」と言います。
「角ログ」は現在のマシンカットのログハウスでは最も主流のログ材で、広く一般的に使用されているログ材です。
断面のアールを全てカットすることで一般的な住宅のように室内側も壁が平らで生活がしやすくなるため居住性が高く、さらに外観もフラットな壁となります。
「角ログ」は1958年にフィンランドで生まれたと言われています。
5:D型ログ
断面を「D」の形にカット、成形したログ材を「D型ログ」と言います。
つまり外壁を除く3方向を平面にカットしたものが「D型ログ」となります。
外壁にアールがついた方を向け、内壁に平らな面を向け内壁側は板張りのようにして使います。
これにより、室内は平面のフラットな壁となりますが、外観はログハウスならではの丸みを帯びた外観になります。
ラミネート加工ログって何?
加工した複数枚の丸太を接着材で合わせ、ログ材を加工成形していくことでできたログ材(または方法)をラミネート加工ログと言います。
柔らかい辺材(丸太の周辺部分)が重なるように接着し真ん中に閉じ込め、堅い心材(丸太の中央部分)を外側に出すことで、傷つきにくくひび割れ、ねじれ、反りが起こりにくい材にできるメリットがあります。
ログハウスに用いられる交差部の形状「ノッチ」の種類
ログハウスで上下の丸太が交差する部分の加工方法(交差部の形状)を「ノッチ」と言いますが、ノッチにはいくつかの種類がありそれぞれ特徴が異なります。
交差部(ノッチ)のタイプは2タイプある
まずログハウスの交差部の形状には「プロジェクトタイプ」と「フラッシュタイプ」の2タイプあります。
【ログハウスの交差部のタイプは2タイプ】
1:プロジェクトタイプ
2:フラッシュタイプ
1:プロジェクトタイプとは
交差部から屋外側にログ材が突き出すタイプをプロジェクトタイプと言います。
2:フラッシュタイプとは
交差部から屋外側にログ材の突き出しがないタイプを「フラッシュタイプ」と言います。
ノッチの加工方法は5種類
次にログハウスに使われる主なノッチ(交差する部分の加工法)の種類についてお伝えしていきます。
【ログハウスの主なノッチは5種類】
1:ラウンドノッチ
2:サドルノッチ
3:ウェッジノッチ
4:ダブルテイルノッチ
5:バットアンドパス
1:ラウンドノッチ
ログハウスの丸太組工法で使われる最も基本的なノッチの加工方法で、下の丸太のカーブに合わせて上の丸太の下部をカットしていくノッチの方法をラウンドノッチと言います。
丸太が乾燥収縮する際に隙間ができやすかったり、丸太同士の横ずれが起きやすいなどのデメリットがあります。
2:サドルノッチ
丸太が乾燥縮小しても隙間ができにくいように馬の鞍(くら)のような形に切り出し、丸太同士の密着性を高めたノッチのことをサドルノッチと言います。
サドルノッチは、先にあげたラウンドノッチの変形だと言われています。
3:ウェッジノッチ
丸太の上下を斜めに削り出し、丸太同士が交差する部分の密着性を高めたノッチをウェッジノッチと言います。
ウェッジノッチは横からの圧力にも強いとされています。
4:ダブテイルノッチ
丸太のノッチを角材にして、蟻加工(ありかこう)を施し丸太を組んでいくノッチをダブテイルノッチと言います。
ノッチ部分がしっかりと組まれるため丸太の抜けに強くなる特徴があります。
5:バットアンドパス
ノッチを組まずに(上下の丸太の欠き込みをせずに)一段ずつ交互に丸太をぶつけていく方法をバットアンドパス(butt & pass)と言います。
この方法を用いる場合は構造計算を行う必要がある上に、そのままでは上下の丸太同士がずれてしまうので、通常はホゾ穴で固定をし強度を高めていく方法がとられます。
ログハウスに使われる主な丸太(無垢材)の種類
ログハウスには真っ直ぐ伸びて加工がしやすい針葉樹が使われます。
広葉樹を使ったログハウスもあるにはありますが加工しにくいため、現在ではほとんど使われることはありません。
ここではログハウスでログ材として主に使用される樹種や特徴を簡単に紹介していきます。
【ログハウスで主に使われる丸太の樹種】
1:レッドシダー
2:杉
3:北欧パイン
4:北米パイン
5:スプルース
6:スプルースパイン
7:ダクラスファー
8:ヒノキ
9:カラマツ
10:ウエスタンラーチ
1:レッドシダー(心材:赤色 辺材:白色)
レッドシダーは針葉樹の中でも高い耐久性や耐朽性を持ち軽量で柔らかく加工しやすい上に、他の針葉樹に比べて収縮率が非常に低いため寸法安定性に優れており、高い断熱性を持ち、さらに木目も真っ直ぐな特徴を持った木材です。
ヤニも少なく美しい色合いがあることからログハウスに最も適していると言われています。
また、レッドシダーには、カビに強くダニを寄せ付けない独特の成分が含まれており、防臭効果にも優れています。
さらに針葉樹の多くは含水率が25%から30%程度ですが、レッドシダーは18%から23%と非常に低く温度の変化に対して収縮や膨張などの変化が低い特徴があります。
ただし、レッドシダーは価格が高く、ログハウスに使用する際は材料費が高くなります。
2:杉(心材:淡褐色 辺材:黄白色)
杉は針葉樹の中で軽く柔らかい特徴を持ち、あたたかみのある表情を持った樹種で、木肌がきめ細かく、断熱性にも優れている樹種です。
杉は日本ではヒノキと並ぶ針葉樹です。
杉は国産材の中では、最も多くログハウスに使用されています。
3:北欧パイン(レッドパイン)【日本名:欧州赤松】(心材=クリーム色 辺材:白色)
パインは、日本名ではマツやアカマツと呼ばれ、北欧パインはノルディックパインまたは北欧パインと呼ばれます。
スギやヒノキに比べると油脂分が多く粘り強い上に密度が高い特徴があり、杢目も非常にきめ細やかで美しい表情をしています。
材質も柔らかく、乾燥しやすい上に加工しやすく、つまりはログ材として人気のある材ですが、樹脂道からマツ特有のヤニが出たり、産地によって木目に大きな違いが出る特徴があります。
4:北米パイン(心材=薄クリーム色 辺材:薄クリーム色)
北米パインはロッジポールパインと呼ばれ、日本では米材として代表的な素材の一つです。
北欧パインのように仕上がり面が滑らかで樹皮も薄く柔らかく加工がしやすい上に表面の仕上がりが綺麗になる特徴を持っています。
マツ類のため材面にマツ特有のヤニが出ることがあります。
5:スプルース【日本名:ベイトウヒ(シトカスプルース)】(心材=白色、辺材=白色)
スプルースはアラスカ南部や南東部など北米に多く分布し、材質が柔らかく加工しやすい特徴を持っています。
木目は真っ直ぐ素直で、光沢があり滑らかで、全体的に白みがかっており明るく美しい木肌をしています。
材質が安定している上に軽いため、住宅では建具や造作家具などに利用されることがおおい材です。
6:スプルースパイン(心材=薄白色 辺材:薄白色)
スプルースパインはスプルースとパインの混合で北米の西海岸でよく産出される材です。
木肌が柔らかくあたたかみのある色をしており、なおかつスプルースに見られる材質が安定している特徴を兼ね備えているので狂いが少ないという特徴を持っています。
7:ダグラスファー【日本名:ベイマツ】(心材=薄赤色 辺材:白色)
ダグラスファーはアメリカやカナダなどの北米大陸西部、太平洋岸で主流の木材で日本名ではベイマツと呼ばれます。
心材は色にばらつきがあるものの、辺材は一般的に黄白色から帯紅白色で心材と辺材の色の差がはっきりしています。
木目は真っ直ぐですが木肌は粗い感じがあり、粘りがあって強度が優れているものの皮が厚く加工はややしにくい特徴があります。
ダグラスファーはハンドヒューンログハウスの材料として最も広く一般的に用いられている樹種で、一般的な木造住宅の建築材としても合板の材料として用いられたりしています。
ただしマツ特有の樹脂道を持つため、十分に乾燥させないと木の表面にヤニが滲み出てくる特徴があります。
8:ヒノキ(心材:淡黄褐色 辺材:黄白色)
ヒノキは木肌が非常に緻密で美しい光沢があり、独特な香りがする日本を代表する高級木材の一つです。
針葉樹の中でも比較的かたく、強度もあり粘り強く、油脂分も多いため水や湿気に強く腐りにくい耐朽性が高い特徴を兼ね備えています(ただし耐朽性が高いのは芯のみ)。
伸縮による狂いも少ないため耐久性にも優れており、伐採から年数を重ねるほどに強度が増していくという特徴があります。
ただし、価格が非常に高いことからログハウスに使用されることはほとんどありません。またヒノキを使用しても、その多くはマシンカットログハウスで整形されログ材として加工された上で使用されます。
9:唐松(カラマツ)(心材:赤褐色 辺材:褐色)
カラマツには世界に10種の仲間がいるとされていますが、天然のものと植林によるものがあります。
天然のカラマツは年輪がきめ細かく詰まっており、力強いもくめが見られることが特徴で、重くかたい性質を持っているものの一方で割れやすい側面もあります。
カラマツの花言葉が「豪胆、大胆」に見られるように、少々癖があり、ねじれることもあるので扱いが難しい材ではあります。
また、カラマツは脂が多いためヤニとして表面に脂が浮き出てくることもあります。
10:ウェスタン・ラーチ【日本名=西洋唐松】(心材:小豆色 辺材:白色)
ウェスタンラーチは北米のコロンビア川上流のみに生息している木材で、力強く非常に強度があるものの、ややかたく釘打ちなどで割れやすい特徴を持っています。
樹脂分が多いため、脂っぽい感触がありますが、木肌が粗いものの、もくめは真っ直ぐに通っている特徴があります。
その他木材の特徴についての詳細は「新築の注文住宅で知らないと損する15種の無垢フローリングの特徴とメリット、デメリット」にも詳しく書かれていますので参考にしてください。
一般的なログハウスの施工工程
ここからは一般的なログハウスの製造工程、ログハウスができるまでの流れについてお話ししていきます。
基本的には、どのログハウスも流れは一緒ですが、住宅会社の意向により細かい仕様の違いや流れの違いなどはあります。
基礎からログ組み上げ、小屋組、建具取り付けまでは基本的にはどのログハウスも流れは一緒ですが、住宅会社によってはそのあとの工程が異なるケースもあります。
【一般的なログハウスの施工工程】
【1:基礎工事】>【2:土台づくり】>【3:ログ組み上げ】>【4:小屋組み】>【5:屋根垂木施工】>【6:屋根野地板張り】>【7:屋根葺き】>【8:建具取り付け】>【9:デッキ造作】>【10:床板張り】>【11:電気工事】>【12:設備機器取り付け】>【13:内装壁】>【14:塗装】
1:基礎工事
ログ材が現場に到着する前に基礎工事を行います。
2:土台づくり
基礎の上に土台をつくっていきます。
土台を敷いた後、一段目のログを組んでいきます。
3:ログ組み上げ
ログ材に付けられた番号をもとにログ材を組み上げていきます。
多くのケースでは「ダボ」というつなぎ材(横にずれるのを防ぐための材)でしっかりと上下の丸太同士を密着させ壁に強度を持たせていきます。
4:小屋組み
ログ材の組み上げにより、ログ壁が出来上がったらクレーンなどを使いログ壁の最上部に小屋束をたてて、棟木や母屋を取り付けていきます。
5:屋根垂木施工
棟木や母屋を取り付けたら、野地板を貼るための垂木を取り付けていきます。
6:屋根野地板張り
垂木を取り付けたら、屋根仕上げ材を貼るための野地板を貼ります。
7:屋根葺き
屋根仕上げ材を張ります。
8:建具取り付け
窓やドアなどの建具を取り付けていきます。
9:デッキ造作
デッキやバルコニーを取り付け、形を整えていきます。
▼10:床板張り
床下に断熱材を入れて床板を貼っていきます。
11:電気工事
配電盤を設置し、壁などの必要な場所に電気配線をし電線を通していきます。
12:設備機器取り付け
上下水道などの配管を通し、キッチンや浴室、洗面所、トイレなどの設備工事を行い生活に必要な設備機器を取り付けていきます。
13:内装壁
部屋を区切るための間仕切りなど室内の内装壁を立てていきます。
14:塗装
最後にログ壁を保護するために外部の塗装を行い完成です。
※参考:施工工程|ログハウス基礎知識 BESS
※参考:日本ログハウス協会公式サイト<日本唯一のログハウス公認団体>
ハンドヒューンログハウスの製造工程
ハンドヒューンログハウスはログビルダーが手づくりで、ログハウスを建てていきます。
一般的にはログサイトと呼ばれる加工作業場で加工後、ログサイトで仮組み上げを行いノッチやグルーブなどの溝を掘り形を整えた上で現場に輸送し再度組み立てを行っていきます。
手掛ける職人により使用する道具や細かい工程などに差はあるものの、現在では、おおよそ下記のような工程でハンドヒューンログハウスは建てられます。
【ハンドヒューンログハウスの製造工程】
【1:伐採】>【2:ピーリング】>【3:スクライビング】>【4:ノッチ加工】>【5:グルーブ加工】>【6:かみ合わせ調整】>【7:ノミ加工】>【8:サンダーがけ】>【9:穴あけ】>【10:細部処理】>【11:チェック】>【12:出荷】
1:伐採
まず、ログハウスに使われる木材を選出し伐採していきます。
2:ピーリング
ピーリング(皮むき)をし、加工作業場まで運搬されていきます。
3:スクライビング
大きなコンパスに水準器を組み合わせたスクライバーと呼ばれる加工専用器具を使って、下の丸太の曲線を上の丸太に書き写していきます。
4:ノッチ加工
スクライビングで書き写した複雑なカーブをチェーンソーを使って削っていきます。
5:グルーブ加工
より上下の丸太の密着度を高めるためにグルーブという溝を刻みログ壁の高さを調節していきます。
6:かみ合わせ調整
密着させた丸太が隙間なく左右にもずれないように、丸太を繰り返し積んだり下ろしたりしながら慎重に確認して調整していきます。
7:ノミ加工
チェーンソーで加工した後のノッチ、グルーブをノミを使って形を整えていきます。
8:サンダーがけ
丸太の表面が綺麗になるようにサンダーがけを行い表面を滑らかに整えていきます。
9:穴あけ
ログ壁が積み上がったら、上下の丸太同士をより密着させる際に用いるダボのための穴あけや電線などを通すための穴を開けていきます。
10:細部処理
窓枠を入れるための溝を掘ったり窓周りなどの開口部、アーチカットなど、細部に処理を加えていきます。
11:チェック
加工が終わったら図面などと間違いはないかをチェックしていきます。
高さなどに差があまり出ないように高さをチェックし丸太を選ぶ技術やログハウスに用いられる細かいデザインなどは熟練を要するログビルダー独特の技術となります。
その後、建築現場で組み立てやすいようにログ材1本1本にシールを貼り付けるなどし番号を割り振っていきます。
12:出荷
完成したらクレーンで一度解体して、ログ材をコンテナに積み込み現場に出荷します。
この後の工程は一般的なログハウスの施工工程と同様です。
※参考:
・ハンドヒューンログハウスの製造工程|ログハウス基礎知識 BESS
・North American Log Crafters
マシンカットログハウスの製造工程
マシンカットによるログハウスは、コンピュータ制御によって製材、加工されていきます。
マシンカットでは寸法安定性の精度を高めるために加工する際、人工乾燥を施すことで素材を安定させた上で出荷していきます。
【マシンカットログハウスの製造工程】
【1:伐採】>【2:ピーリング、製材】>【3:人工乾燥】>【4:加工・成形】>【5:ナンバリング】>【6:ノッチの加工】>【7:出荷】
1:伐採
ログハウスに使われる木材を選出し伐採していきます。
2:ピーリング、製材
ピーリング(皮むき)をしコンピュータ制御により規定の太さに製材していきます。
3:人工乾燥
ログ材を人工乾燥させ含水率を19%以下に抑えていきます。
4:加工・成型
同じ大きさ、形に製材加工していきます。
5:ナンバリング
現場で組み立てやすいようにログ材1本1本に番号を割り振っていきます。
6:ノッチの加工
コンピュータ制御によりログ材にノッチなどの加工を加えていきます。
7:出荷
ログ材を現場に出荷します。
この後の工程は一般的なログハウスの施工工程と同様です。
※参考:マシンカットログハウスの製造工程|ログハウス基礎知識 BESS
ログハウスについてのまとめ
今回は、近年のアウトドアブームにより注目を集めているログハウスについてメリットやデメリットとともに、ログハウスを選ぶ上での注意点などについてお伝えしました。
ログハウスは憧れが強い分(特に男性)、建てる前は自由な暮らしのイメージからか理想の方が勝ってしまいなかなか現実的なデメリットの部分が見えてこないケースが多い印象があります。
ですが、ログハウスには一般的な住宅よりもメンテナンス費用が高くついたり、性能を維持するために一般的な住宅よりもこまめな手入れが必要になるなど手間がかかったりしますので、残念ながらすべての人に相性の良い家と言うわけではありません。
もちろん、相性がいい人にとってはこれ以上にない家づくりが体験できるでしょうし文字通り理想の住まいになります。
ログハウスを住まいに選ぶときは今回お伝えしたようなログハウスのメリットやデメリットを十分に鑑みた上で、慎重に検討しログハウスを選ぶようにしてください。
勢いや軽い気持ちでログハウスを選んでしまうと、5年後、10年後に必ず後悔してしまいますので、十分に理解した上でログハウスを購入するようにしてください。
世界一巨大なログハウス「シャトーモンテベロ」について
ちなみにカナダのモンテベロケベック州、オタワとモントリオールの中間、モントリオールからは120キロほど離れたオタワリバーに面した景勝の地に「フェアモント ル シャトー モンテベロ(Fairmont Le Chateau Montebello)」と言う世界一巨大な世界最大のログハウスがあります。
シャトーモンテベロは1930年に約6万5千エーカー(約8000万坪)の広大な敷地に、およそ約800人のログビルダーの力を借り、およそ1万本の丸太を用いて、わずか4ヶ月、ログの部分(壁と小屋組)に至ってはわずか2ヶ月と言う信じられないほど短期間で建てられた建物と言われていますが、その佇まいは荘厳で本当に圧巻です。
シャトーモンテベロは3つの大きな建物からなっていますが、約20メートルほどの高さのある中央の六角形のドームに複雑に組まれた柱と梁はもちろん、各所にわたって卓越した技術が使われており、おそらくこのログハウスを超えるログハウスは今後生まれてこないのではないかと言えるほどの価値を持つログハウスです。
平均的なログハウス(約30坪分)の木材量に換算すると約400棟分規模の木材が使われているようで、まさしくログハウスの最高傑作と言ってもいいでしょう。
シャトーモンテベロの陣頭指揮を取ったのが当時若干29歳のビクター・ナイマーク。
彼は23歳でフィンランドから渡米してきた人物とされており、カナダでログの腕を磨き、その後8年でシャトーモンテベロと言う世界一のログハウスの建立に携わり総指揮をとった人物と言われています。
本当かどうかを調べる術はありませんが、カナダに着いたときの所持金はポケットに残っていたわずか25ドル(当時の腕のいい職人の1週間分の給料)。まさしくアメリカンドリームを象徴する人物の背景にも夢を思い巡らせることができます。
シャトーモンテベロは、今では世界最大級のログハウスホテルとして開放されていますので、興味のある方は足を運んでみると良いかもしれません。
※日本にも山梨県富士河口湖に敷地面積約6万6200平方メートル(約2万坪)にログ3000本を使用した「朝霞スクエア」と言う素晴らしいログハウスがあります。
予算内でいい家を安く建てるために知っておいて欲しいこと
予算内で、いい家を安く建てるために知っておいて欲しいことが、実は、3つあります。
ここでは、いい家を安く建てるために知っておきたい3つの記事をご紹介します。
1:予算内でいい家を建てるための7つの基本
注文住宅では、ほとんどの場合、当初の予算をオーバーします。
予算をオーバーする原因は様々ですが、打ち合わせを重ね、プランを進めてしまうと、一度プランを白紙に戻さないと引き返すことができなくなるなど、後戻りができなくなってしまうケースもあります。
もちろんプランを白紙に戻した際は、余計なコストがかかることは言うまでもありません
ですから、家を検討しはじめた、早い段階で依頼する側が、最低限の家を安く建てるための基本やコツを知っておき、しっかりとコストをコントロールをする必要があります。
また、何も知らずに依頼先の住宅会社と契約をかわしてしまうと、依頼先の住宅会社では希望している家が建てられないということが、家づくりのプランを進めてからはじめてわかり、納得しないままに家づくりを進めなくてはならないこともあるので、契約をする前にベースとして持っておきたい知識があります。
下記の記事では、家の価格の決まり方の話や、家のコストを決定づける要因やコストダウンの基本などについてお話ししていますので、参考にしていただき、予算内でいい家を安く建ててください。
2:注文住宅を予算内におさめるために知っておきたい家の形の話
家には、お金がかかる家の形と、お金がかからない家の形があります。
また家の形次第で、間取りに制限がかかるなど、暮らしやすさが大きく左右されたり、長期間住むことで建物がダメージを受ける部分が違うためメンテナンスにかかる費用(維持費用)が変わってきたり、家の形によるメリットやデメリットが少なからずあります。
特に角の多い家は、注意が必要で、角が一箇所増えるにつれて、見積もり金額に10万円から20万円の金額差が生まれます。
下記の記事では、お金のかかる家とお金のかからない家の形の違いについてお伝えすると同時に、どのような家の形はコストが上がるかなどの例も載せておきますので、注文住宅で家づくりを検討しはじめたら、長い目で、家の形にも注意して家づくりを進めていくことをお勧めします。
家の形については下記の記事を参考にしてください。
>>>家づくりで覚えておきたい家の形とお金のかかる家とかからない家の違い
3:無料でもらえる住宅カタログを使って理想の家を建てる方法
注文住宅での、家づくりは情報を集めるところからスタートします。
そして、最終的に、いい家を建てられるかどうかの大きな分かれ目は、依頼先選びで決まると言っても過言ではありません。
実際、同じようなプランでも、依頼先によって見積もり金額に違いが生まれますし、予算の違いだけではなく、同じ要望でも依頼先次第で提案されるプランも違ったり、できることやできないことも違い、さらには工事の良し悪しも変わってきます。
だからこそ、失敗のない注文住宅を建てる上では、各社をしっかりと比較し、しっかりと検討してから依頼先を決める必要があります。
依頼先選びで、各社を比較検討をするためには、住宅カタログを利用すると便利ですが、各社のカタログを読み解く上で、押さえておきたいポイントなどがあります。
下記の記事では、無料で住宅カタログを取り寄せて、住宅カタログの見るべきポイントや、押さえたいポイント、住宅カタログを使いこなして賢く家を建てるポイントなどについて書いておりますのでぜひ、参考にして家づくりを進めていってください。
>>>無料で貰える住宅カタログを使いこなし賢く家を建てる6つのステップ
以上、参考にして家づくりを進めてください。