新築住宅に和室をつくるか否か。
和室の問題は設計段階で必ず話題にのぼります。
なんとなく和室がないと格好がつかないと考えている方が多いからでしょう。
ただ何も考えずに和室をつくるとたいして活用しない空き部屋になってしまう可能性もあります。
和室と聞いて思い浮かべるイメージは人それぞれですが、目的もなくなんとなく和室を構えてみたり、間取り(空間のとり方)次第では、ただの空き部屋、もしくはたいして活用しない空間になってしまうのです。
特に現代の生活環境ではその傾向は色濃くあらわれるように思います。
だからもしこれから新築の住宅で和室をつくるのであれば、そもそも和室とはどのような居室なのかをおさえた上で、なんのために和室をつくるのか、どのような和室にすると良いかなど、和室を構える上でのメリットとデメリットをしっかりと把握してから和室づくりに取り掛かる必要があります。
そこで今回は和室とはそもそもどんな部屋なのか、和室をつくる意味、それに和室をつくるなら快適に過ごすために抑えておきたい空間の工夫について合わせてお伝えしていこうと思います。
※あなたが考えている和室が伝統的な格式の高い和室なのか、それともリラックスするスペースとしての和室なのかによって間取りは大きく変わってきます。
ここでお話しするのは、一般的な住宅における「和室」や「畳スペース」のことであり、いわゆる茶室などの格式や様式美を求めた伝統的な技巧を凝らした和室のことではありません。
格式や様式美を求める場合は、伝統的意匠について検討しなければなりませんが、当記事で扱う和室は格式や様式美をそれほど重んじないタイプの和室のことです。
【いい家を安く建てるために知っておきたい3つのこと】
注文住宅は予算との戦いです。
理想の家づくりを予算内で行うためには依頼する前に抑えておきたいポイントがあります。
下記リンク先の記事では、家を安く建てるために知っておきたい3つのポイントをまとめておきましたので、あなたの家づくりの参考にしてください。
1:いい家を安く建てるための基本とコツ
注文住宅を予算内で建てるためには、家を安く建てるための基本やコツを抑えておかなければなりません。
予算内でいい家を建てるための7つの基本は下記リンク先の記事をご覧ください。
2:家の形の話
家にはお金のかかる形の家と、お金がかからない形の家がありますが、どのような家の形はお金がかかり、どのような形にすればお金がかからないのか、またそれぞれの家の形の特徴については、下記リンク先の記事をご覧ください。
>>>家づくりで覚えておきたい家の形とお金のかかる家とかからない家の違い
3:無料でカタログを請求し理想の家を建てる方法
注文住宅は依頼先で決まります。だからこそ、依頼先は慎重に検討したいところですが、検討するにはまずはどんな家を建てたいのかを知らなくてはなりません。
無料で住宅会社から請求できる住宅カタログを請求して理想の家を建てる方法については下記リンク先の記事を参考にしてください。
Contents
- 1 そもそも和室って何?畳スペースとどう違うの?
- 2 和室には2つの形式がある
- 3 和室または畳スペースをつくるメリット
- 4 和室または畳スペースをつくるデメリット
- 5 和室は必要?プロの見解
- 6 和室は入りやすさによって性格が変わる不思議な居室
- 7 和室はアクセス方法によっても性格が変わる
- 8 和室の段差を考える(隣室との関係を考える)
- 9 快適な和室や畳スペースにするための工夫(和室の高さ寸法を利用したちょっとしたテクニック)
- 9.1 ポイント1:【和室をつくる時の基本】天井高を2100mm〜2200mm程度に抑える
- 9.2 ポイント2:地窓をつくり重心を下げる
- 9.3 ポイント3:和室の天井高を2400mm程度にするケースもある
- 9.4 ポイント4:壁と天井の仕上げをLDKと揃える
- 9.5 ポイント5:和室部分の天井高だけ下げる
- 9.6 ポイント6:照明にはダウンライトを使う
- 9.7 ポイント7:エアコンは押し入れ上部の天袋に設置する
- 9.8 ポイント8:畳敷の寝室とする場合は上手に小上がりを利用する
- 9.9 ポイント9:和室を柔らかい雰囲気にしたい場合は弧形の天井にする
- 9.10 ポイント10:階段の蹴り上げと小上がりの高さを揃える
- 9.11 ポイント11:吹き抜けの空間の脇に天井高の低い和室をつくり縦の高さを強調する
- 10 まとめ
- 11 予算内でいい家を安く建てるために知っておいて欲しいこと
そもそも和室って何?畳スペースとどう違うの?
和室とは畳を敷いた「個室」のことを言います。
和室は床に「畳」、建具に「ふすま」を使い「障子」をはり装飾性を高めた日本独自の居室のことです。
【和室とは】
・個室である
・床には畳を使用している
・建具にふすまや障子を使用している
一方で、畳スペースとは部屋の一角に設けた畳敷きの「スペース(空間)」のことを言います。
畳スペースは必ずしも「個室」である必要はありません。
ですから、床に「畳」を使用しただけのオープンスペースであっても「畳スペース」と呼びます。
つまり畳スペースには床に「畳」を敷く必要がありますが、それ以外に和室に必要な要素である「ふすま」や「障子」を建具として使う必要性はなく、さらに「個室」である必要もありません。
畳スペースと呼ぶ場合は、むしろ、より和室を普段使いできるようにカジュアル化した空間のことをいうケースが多く、例えば空間の一角に簡易的に設けられた「畳敷の居室」のことをいったり、日常的に頻繁に利用できる「畳敷のスペース」のことを指すことが多いです。
【畳スペースとは】
・部屋の一角につくる
・床には畳を使用している
・建具にふすまや障子を使用する必要はない
畳スペースのことを和室と呼ぶこともある
ただし、現在では畳スペースのことも和室と呼んだりもしますのでその定義はより曖昧なものとなっています。
つまり人によっては畳が敷いてあればそれは「和室」だと定義している会社や個人もおりますので打ち合わせ時にはお互いの和室がどのような和室を指すのか、あらかじめ取りまとめておく必要があり注意が必要です。
もっと言えば昔の人から見れば、今現在、一般的に和室とされている居室も和室と呼ぶには簡易的すぎたりと、時代によって一般的に知れ渡る言葉の定義自体、ゆるやかに移りゆくものだと思っていただければ理解しやすいかと思います。
和室と畳スペースの大きな違いはフォーマルよりの空間かカジュアルよりの空間か
実は、和室と畳スペースの違いについて言葉として特別明確な定義は定められていません。
和室が個室として明確に仕切られたフォーマルな空間のことを指すのに対して、畳スペースと呼ぶ場合は必ずしも個室として独立させる必要はないカジュアルな居室で、ただ単に畳を敷いただけのスペースのことをいうことが多いと解釈していただければ理解しやすいかと思います。
だから畳スペースという場合は、空間それ自体に仕切りがなく開放的なスペースとなっていることも多いです。
もちろん、なかには用途に応じて簡易的に仕切れるよう引き戸を設けているタイプの畳スペースもあります。
和室はフォーマルな空間なので個室として構えることを前提としますが、畳スペースと呼ぶ場合はリビングの空間の一角などを利用して「一部畳敷き」にし、別の空間としてちょこんと存在するカジュアル傾向の高いリラックススペースとする場合が多いのです。
和室には2つの形式がある
また、一言で和室と言っても、和室には主に2つの形式があります。
1:【フォーマル】伝統的で格式のある個室
2:【カジュアル】家族が団らんする為の個室
ここでは、イメージしやすいように和室をフォーマルとカジュアルに分けて説明することにします。
空間は部屋として区切られているほどより【フォーマル】感は高くなり、仕切りがなくのびのびと開放感のあるリラックスした空間になるほど【カジュアル】感の高い空間になる性質を持っています。
和室や畳スペースもそれと同じように、個室として構えれば【フォーマル】になりますし、仕切りがなく開放的になればなるほど【カジュアル】な空間になります。
1:【フォーマル】格式が高く客をもてなす個室
フォーマルな和室は家の中でも格式の高い個室として機能し、日本独自のおもてなしのスペースだったりお祝い事などを祝うぱブリック性の高い空間のことを言います。
ここぞのときの神聖な場と言い換えても良いでしょう。
応接をはじめ法事、慶事、正月などの改まった場面で活用する部屋をイメージしてもらえればわかりやすいかと思います。
つまり、生活習慣までも含めた礼節を重んじる和室が【フォーマル】の和室だと思ってもらって構いません。
【フォーマル】よりの和室は格式の高い礼節を伴う個室
主な用途は
・応接
・法事
・慶事
・正月
などに利用する居室
2:【カジュアル】日常的な用途で利用する個室
カジュアルな和室は座卓やコタツを設けて茶の間(家族の団らんの場)として使ったり、横になってくつろいだりごろ寝をしたりするなど、主にリラックスをする目的で使用する空間のことを言います。
日常的な用途でカジュアルに利用する畳部屋と言ってもいいかと思います。
空間の一角を使ってよりカジュアルな用途として利用する場合はリビングなどの部屋の一角を借り引き戸やふすまなどの簡易的な仕切りを設けて「畳スペース」にする場合もあります。
つまり、生活空間としてまたは皮膚感覚として畳の肌触りを大切にする部屋が【カジュアル】な和室だと思ってもらうと良いでしょう。
【カジュアル】よりの和室は日常的に使う部屋
主な用途は
・茶の間
・横になる
・昼寝
などに利用する居室
和室または畳スペースをつくるメリット
和室、または畳スペースをつくるメリットとしては下記のようなことが挙げられます。
【和室または畳スペースをつくることで生じるメリット】
1:来客時に便利
2:空間にメリハリが生まれる
3:落ち着いて1人で過ごすことができる
4:ごろ寝できる
5:リラックス効果がある
6:子供の遊び場など様々なニーズを満たせるスペースとして活用できる
7:家事ができる
1:来客時に便利
和室をつくると急な来客があった場合でも片付いた部屋にサッと通すことができます。
例えば玄関の近くに和室をつくれば急な来客であっても応接間として機能しますし、間取り(空間のとり方)によっては玄関入り口付近の方が来客にとってかえって気持ちよく過ごしていただける明るい和室になるケースもあります。
来客者としてみれば、和室が玄関近くにあることで気を張らないでいられるカジュアルな気分で過ごしてもらえるのです。
和室に通す意味としては、わざわざ出向いてくれたお客様を、家の中で格式の高い個室として機能する和室に迎え入れることで来客者への敬意を示すことができるのです。
※ただし玄関近くの和室にするとフォーマル感は薄れどちらかというとカジュアル寄りの和室になります。
2:空間にメリハリが生まれる
和室の存在は家に程よい緊張感をもたらしてくれます。
頻繁に使わない部屋であっても、和室があることに意味があり、その存在自体が家の中に程よい緊張感と規律をもたらしてくれます。
3:落ち着いて1人で過ごすことができる
和室は一人で心を落ち着ける空間として使うのに最適なスペースです。
来客時などにもてなすスペースとは別に、反省したり、自分を見つめ直したり、精神を整えるスペースとしても活用できます。
4:ごろ寝できる
イグサが編み込まれた畳にはフローリングにはない断熱性能や調湿性能があり、さらに畳はフローリングよりも柔らかい素材になりますので、横になりたい時にそのままごろ寝することもできます。
フローリングの床ではごろ寝することは難しいですが(かたい素材のため体のあちこちが痛くなってしまうため)畳であれば布団などを敷かなくてもごろ寝できるようになります。
また、畳には断熱性能がありますので年間を通して床の温度を均一に保てますし、寒い冬場などは素足で歩いてもフローリングの床のように冷たくなりづらく、さらに梅雨時などは調湿性能により床のジメジメ感を緩和してくれる機能もあります。
5:リラックス効果がある
畳にはそれ自体にリラックス効果があります。
畳があるだけで、リラックス感を感じさせてくれますし、イグサ特有の香りでも心を落ち着かせてくれます。
イグサが編み込まれた畳特有の香りはフローリングの床にはみられない理屈抜きの気持ちよさがあるのです。
6:子供の遊び場など様々なニーズを満たせるスペースとして活用できる
畳には音を軽減してくれたり、倒れたときの衝撃を和らげてくれる効果があります。
例えば柔道場では床材として畳が使われていますが、転倒した時の衝撃をやわらげてくれるため畳敷となっています。
もしも柔道場の床材がフローリングであった場合は、投げ飛ばされるたびにかたい床に打ち付けられるわけですから、重傷を負ってもおかしくありません。
それほど畳には音はもちろん、衝撃を和らげてくれる効果があり、子供が激しく転んでも軽傷ですむのです。
7:家事ができる
畳を敷くと自然に座りたくなるので、畳の上に座り洗濯物を畳む用途としても活用することができます。
よりカジュアル傾向の強い畳スペースはアイロンをかけたり様々な用途で使える多目的スペースとして利用することができます。
和室または畳スペースをつくるデメリット
和室、または畳スペースをつくるデメリットとしては下記のようなことがあげられます。
【和室または畳スペースをつくることで生じるデメリット】
1:他の部屋が狭くなる
2:和室を持て余す可能性がある
3:定期的な張り替えが必要
4:たいして使わなくてもメンテナンスが必要
5:畳に跡がつきやすい
6:汚れがつきやすい(ペットがいる場合は注意が必要)
7:ダニやカビが発生しやすい
1:他の部屋が狭くなる
言うまでもありませんが、和室をつくるとスペースが必要になるため、そのぶん他の居室が狭くなります。
そうした背景もあり、現在ではあまり頻繁に活用しない和室をつくるためにわざわざスペースを割くのであれば、他の部屋を広くした方がいいケースも多く、一度は検討してみるものの結果として和室をつくらない選択をされる方も多くいらっしゃいます(または簡易的に畳スペースとしてリビングの一角に構える選択をされます)。
2:和室を持て余す可能性がある
新築時に和室の一つはないと格好がつかないと和室を構えてみたものの、実際たいして活用していないと言う方は非常に多いです。
和室をつくらずに、他の部屋に予算とスペースを割けば良かったと数年後に後悔する方も多い印象を持ちます。
3:定期的な張り替えが必要で維持コストがかかる
畳はほうっておいても傷むため、一定期間ごとに張り替えが必要になります。
具体的な期間を示すとケースによって開きはあるものの、およそ5年から10年に一度は張り替えが必要になり、使わなくても定期的な張り替えをすることが理想的だとされています。
4:たいして使わなくてもメンテナンスが必要
畳の床はフローリングの床以上にメンテナンスが頻繁に必要になります。
定期的な裏返しや表替えはもちろん、建具としてふすまや障子を用いた場合は頻繁に張り替えが必要になる覚悟をすることが必要です。
また障子は簡単に破れてしまうため小さなお子様や犬猫などのペットを飼われている場合など生活環境によっては頻繁に張り替えが必要になります(障子は何もしなくても時間が経つとと黄ばんで清潔感が失われてしまったり、一部でも破れていると途端にみすぼらしくなります)。
5:畳に跡がつきやすい
畳は重い家具を載せると、変形して跡がついてしまいます。
そして一定期間そのままですと戻りづらい性質を持っています。
ですから畳の上に重たいものを置くときは定期的に配置換えが必要になります。
またホコリが溜まると通気性が悪くなり、ダニやカビの発生の原因にもなります。
6:汚れがつきやすい(ペットがいる場合は注意が必要)
畳は汚れが付きやすく、食べこぼしやコーヒーなどの飲みこぼしによるシミがついてしまうとなかなか取り除くことができません。
またペットがいらっしゃる場合は粗相をされると畳の奥の方まで浸透してしまい、シミが汚く残ってしまうこともあるので扱いには注意が必要になります。
イグサではなく化学繊維を使用した畳にすると汚れにくく丈夫な畳になりますが、利便性と引き換えに畳のメリットも同時に失われてしまうのでその辺りは鑑みる必要があります
7:ダニやカビが発生しやすい
畳には吸湿性能があり、湿気を吸収してくれますが、湿気を吸い込んだ畳はダニやカビの温床となります。
これを防ぐには畳上げを行うなど、畳を定期的にかわかす必要がありますが、この作業を面倒だと感じる方も少なくありません。
和室は必要?プロの見解
和室を構えることのメリットやデメリットをお話しした上で、果たして和室は必要なのかについて私なりの考えを示したいと思います。
私の見解になりますが、現在の生活では、特別正式な場としてのフォーマル感のある和室は必要ないと思います。
理由としては家もよりリラックスできる空間としてカジュアル化が進んでおり、一般的な家庭では悩んでまでして和室を構える意味も必要も無くなってきているように思うからです。
和風建築では伝統的な形式の和室がないと格好がつかないですが、昔と違い床にフローリングをはる居室が多い洋風の佇まいの家が増えてきているので、現在の家づくりにおいてそこまで和室にこだわる必要はないかと思います。
現代の生活は昔と違い畳の上に布団を敷いて、寝食をすると言う生活ではありませんし、寝室にはベッドをおいて寝るケースがほとんどです。
ましてや、頻繁に来客があるご家庭は少ないでしょうし、いずれの家庭でも和室をつくっても持て余してしまうケースが多い印象を受けます。
玄関入り口付近の和室は使い勝手が良い
ただ、どうしても来客用としての和室がないと格好がつかない、和室がほしいと言う方には玄関近くに和室をつくることをお勧めしています。
先ほどのメリットとデメリットでも触れましたが、来客時にそのまま玄関近くの和室に通すと言う間取り(空間の取り方)です。
近頃は、ハウスメーカーのモデルハウスでも良く目にするプランなので、住宅展示場周りを趣味にしている方は目にした経験がある方は多いと思います。
そうした使い勝手の良い和室であれば、利用する機会も増え和室をつくっても持て余すことはない可能性が高くなりますが、伝統的な格式の高い和室であったり、様式美を求めた和室は現代人の生活にとってあまり利用しない空き部屋になってしまう可能性が高いと思います。
和室は入りやすさによって性格が変わる不思議な居室
目的や用途によって和室の構え方は変わる
実は和室はその構え方や入り方によって性格が変わる不思議な部屋です。
和室は、他の部屋と和室を隔てるもの(つまりは「入り方」)によって和室の用途や、和室そのものの存在理由も変わってくる不思議な性格を兼ね備えた居室なのです。
茶室は入りにくく、あえて狭い空間にしてある
例えば和室の一つである茶をたてるための「茶室」は入り口付近をわざと狭く低くしてあり、こうべをたれかがんで入ることで茶室の中では身分関係なくみな平等であると言うことを示唆しています。
また茶室の広さは一般的に4畳半ほどですが、茶を共にする者同士に親密な関係を築くことができるようにと、意図して狭い空間を設定しています。
和室はアクセス方法によっても性格が変わる
現代の和室は洋室の中に組み込まれることが多く、現代の住環境において和室をつくる場合、洋室の中にどのように違和感なく和室を組み込むのかが一つの課題となります。
また、和室そのものを独立して設置するケースは減ってきており、和室をつくるにしてもリビングなどの部屋の一角に設けるタイプの併用型の和室が増えてきています。
部屋の一角に設けた和室をよりカジュアルなものにすると畳スペースになりますが、和室をリビングと隣同士の間取りにする場合は入り方によって性格が変わってきます。
ポイントは生活の中心となる居間(リビング)を通るか通らないか
和室をリビングのすぐ隣同士に設置する場合のキモは、生活の場となるリビングを抜けて和室にアクセスするのか、それとも玄関からも廊下を通って直接和室に入れるようにするのかです。
その違いはフォーマルかカジュアルか、主にどのような用途で和室を利用したいのかによっても異なります。
1:【フォーマル】おもてなしの場(座敷)としての和室
2:【カジュアル】日常的に利用する場としての和室
1:【フォーマル】おもてなしの場として和室をつくりたい
来客時のおもてなしの場として和室をつくる場合、客を通すときにできるだけ生活場面をみせない工夫をすることが必要になります。
つまりリビングのすぐ隣に和室を構える場合でも、玄関から直接、またはリビングを通らないで廊下を抜け和室に入れるような動線が必要になります。
来客用のアクセスを別に設けることで、座敷としての意味合いが強くなり、よりフォーマルな和室になります。
この時居間からもリビング隣の和室にアクセスできるようにすると、来客の際のお茶出しなどの動線が良くなりますので参考にしてみてください。
2:【カジュアル】日常的に利用する場として和室をつくりたい
ごろ寝などのカジュアルな用途で利用する和室の場合は玄関から直接入れるようなルートをつくる必要はありません。
ですからよりカジュアルな用途で利用することに限定した和室をつくる場合は、リビングから直接アクセスできるような間取りに限定してしまうと良いでしょう。
リビングからのシングルアクセスの場合、和室として構えるのではなく畳を敷いて簡易的な畳スペースまたは畳部屋として和室を構えるケースも増えてきています。
和室の段差を考える(隣室との関係を考える)
和室は入り口の段差でも微妙な変化をつけられます。
和室入り口付近の段差の有無によっても和室の雰囲気や隣の部屋との関係、和室の性格が変わってくるのです。
【和室は段差によっても隣室との関係が変わる】
1:段差をつけずバリアフリーにする
2:段差をつけて小上がりにする
例えば、部屋のひと区画を畳敷にし、スキップフロアのように段差をつけると、間仕切りなどの壁がなくても隣の部屋と境をつくり空間を緩やかに隔てられるようになります。
1:段差をつけずバリアフリーにする
リビング脇の和室に段差をつけると転倒などの危険性が高くなるため、あえて段差を設けずにフラットなバリアフリーな和室にすることも多くなっています。
段差をつけずにバリアフリーにすると空間の連続性が高まり、リビングと畳敷の部屋との境界が曖昧になります。
バリアフリーにするとリビングと畳スペース間が移動しやすくなり、より使い勝手の良い構えの和室(または畳スペース)になっていきます。
つまり、バリアフリーにすることで、より和室(畳敷の空間)にアクセスしやすいカジュアルな雰囲気の和室となります。
2:段差をつけて小上がりの和室にする
実は以前はリビング脇の和室であっても段差をつけることが主流でした。
段差を設けることで、同じ空間にあってもそこは和室であることを暗に示し、小上がりにすることで別のスペースに移動するという気持ちの面で気分を変える理由があったからです。
一定の高さの段差を設けることで空間の連続性を保ちながらも、意識として別部屋であるということを示唆しリビングとの境界を緩やかに隔てることができるのです。
(畳の厚さはおよそ60mmで床板の厚み15mmを差し引いて45mm程度の高さの違いを出し、空間を分けていました)
・小上がりのスペースにする際のワンポイントアドバイス
段差をつけて和室を小上がりにする場合は、畳に座った時にリビングのソファーに座っている人と目線の高さがちょうど良い位置にくるように工夫をするとより気持ち良い空間になります。
ソファーに座った人と畳に座った人の両者の目線がちょうど良い高さで交わることで、別の空間を利用していても気持ちの良い関係を築くことができるのです。
具体的な数値を上げると、だいたい床板との高さ300mm〜350mmほどの小上がりにすればリビングのソファーでくつろいでいる人と目線の高さを揃えることできますし、リビングと和室の連続性を高められると思います。
快適な和室や畳スペースにするための工夫(和室の高さ寸法を利用したちょっとしたテクニック)
ここからは快適な和室や畳スペースをつくるテクニックや工夫について掘り下げていこうと思います。
具体的な話となりますので家づくりをされる際の参考にしていただけるかと思います。
いずれにしても、和室をつくるときはこれまでみた目的や用途は何かを今一度考え、細かい部分でのさじ加減をすることが大事です。
【快適な和室や畳スペースにするコツ】
1:【和室をつくる時の基本】天井高を2100mm〜2200mm程度に抑える
2:地窓をつくり重心を下げる
3:和室の天井高を2400mm程度にするケースもある
4:壁と天井の仕上げをLDKと揃える
5:和室部分の天井高だけ下げる
6:照明にはダウンライトを使う
7:エアコンは押し入れ上部の天袋に設置する
8:畳敷の寝室とする場合は上手に小上がりを利用する
9:和室を柔らかい雰囲気にしたい場合は弧形の天井にする
10:階段の蹴り上げと小上がりの高さを揃える
11:吹き抜けの空間の脇に天井高の低い和室をつくり縦の高さを強調する
ポイント1:【和室をつくる時の基本】天井高を2100mm〜2200mm程度に抑える
和室は床に直接畳の上に座る空間のため、天井高は2100mmから2200mm程度に抑えるとより落ち着いた和室になります(これくらいの高さだと、畳に座った時にちょうど良い高さの空間になるのです)。
天井高2100mmは居室としては最低寸法となりますが、和室は床に座ることが多いことを考えると程よく落ち着いた天井高になります。
一般的な居室はだいたい床板からの高さ2400mm〜2500mm程度で設定されていることが多いので、つまりは和室をつくるときに小上がりにし300mm程度高さを上げていただくと綺麗におさまる天井高になります。
ポイント2:地窓をつくり重心を下げる
地窓には空間全体の重心を下げる作用があります。
つまり、天井高が低い空間であっても圧迫感を感じさせない空間にできる上に和室ならではの落ち着いた雰囲気を空間に纏わせることができます。
また、それだけではなく、暗くなりがちな和の空間に足元から程よい自然光をもたらしてくれますので、和室を構えるときは必ず地窓とセットで検討していただくと気持ちよく快適な空間になると思います。
この時、地窓には障子をはり、自然光をより柔らかい光とすることを忘れないでください。
※逆に空間に高さを持たせたい場合は壁の天井付近に窓を設けるといいです。
ポイント3:和室の天井高を2400mm程度にするケースもある
和室(畳スペース)をつくる際、天井高を抑え落ち着いた空間にすることはセオリーです。
ただし例外もあり、和室の高さが一般的な天井高である2400mm程度の方が好ましい時もあります。
それは普段使いとして日常的に和室を活用する頻度が高い居室にしようと間取りを検討した場合です。
この時は床のレベル(床の高さ)もLDKと合わせてしまうと良いでしょう。
現在は畳のある部屋をつくる場合、個室ではなく部屋の一角に設けるタイプの和室(または畳スペース)とすることが一般的ですから、LDKのすぐ隣に日常的な用途としての使い勝手の良い和室をつくろうとした場合は、間取りによってはあえて段差を設けずにLDKと床レベルを揃えていただくと使い勝手が良い和室となるケースもあるのです。
床の高さは不思議なもので、少しでも段差があるだけで、使いやすくなったり使いにくくなったりします。
ですから床の高さを和室と揃え床のレベルで連続性を持たせフラットな空間としていただくと、使い勝手が良い和室(または畳スペース)になるのです。
天井高2400mm(画像上)と2200mm(画像下)とした場合の違いについては下記の画像をご覧ください。
200mm下げただけでもガラッと雰囲気が変わることがわかっていただけるかと思います。
ポイント4:壁と天井の仕上げをLDKと揃える
LDK脇に和室を構える場合で、より連続した空間を印象付けたい場合は、床のレベルはもちろん天井の高さ寸法を同じにした上で、天井と壁に使われる素材を同じものとしてみてください。
天井と壁に使われる素材をLDKとすぐ隣の和室で統一すると空間に連続性が生まれ、よりそれぞれの居室間の雰囲気に繋がりを持たせることができるようになります。
逆に床のレベルや天井の高さが同じでも空間の連続性を持たせたくない場合は、天井や壁の素材を強調的にガラッと変えるだけでも別部屋としての色が濃くなり雰囲気は変わりますので参考にしてみてください。
ポイント5:和室部分の天井高だけ下げる
床のレベル(床の高さ)をLDKと揃えた上で和室を使い勝手が良く落ち着く空間にしたい場合は、床ではなく和室部分の天井高を下げる方法もあります。
つまり本来であれば床のレベルを上げ小上がりにするところを、床の高さはLDKと揃えたままで空間の連続性を持たせながらも、和室部分の天井高のみをさげ、和室の天井高を2100mm程度に抑えこむのです。
天井をさげ空間の重心を下げることで使い勝手はそのままに和室ならではの落ち着いた空間になります。
リビング脇の和室だから使い勝手の良い和室を求めているものの、やはり和室は天井高を抑えた方が落ち着くと言った方におすすめです。
ポイント6:照明にはダウンライトを使う
天井からぶら下げるペンダントタイプの照明はどうしても空間に圧迫感を与えてしまいます。
洋室のような天井高がある居室であれば天井からぶら下げるタイプの照明は空間を華やかに彩りますが、和室のような天井高が低い居室の場合、ペンダントタイプの照明は空間全体に圧迫感を与えてしまったり、移動時に照明が頭に当たってしまうリスクも増えてしまいます。
そのため天井高を低くした場合は特に天井に埋め込むタイプのダウンライトを設置すると圧迫感を感じさせない和室とすることができます。
ただしダウンライトにすると空間にモダンなテイストが加わりますので、純和風テイストの和室にしたい方には相性が悪くなってしまいます。
ダウンライトとペンダントライトどちらがいいのか悪いのかではなく、どちらのタイプの照明を選ぶかは完全に好みになりますので、設計士と相談の上選ぶといいと思います。
ポイント7:エアコンは押し入れ上部の天袋に設置する
和室とエアコンのデザインはなかなか相性が良くありません。
エアコンはどちらかと言うと洋風の空間に合いますし無骨な印象を空間に与えてしまうのです。
和室にする場合、エアコンは押し入れ上部の格子状の天袋を設け、いっそのこと見えないように隠してしまった方がいいでしょう。
この時、高さ寸法としては500mm程度天袋を確保しておけば、すっぽりとおさまりますので参考にしてください。
ポイント8:畳敷の寝室とする場合は上手に小上がりを利用する
もしも畳敷の寝室としたい場合は、布団を敷く畳敷部分を小上がりにして天井高を抑えるとより快適な寝室となります。
天井高2400mm〜2500mm程度の場合は床板から300mm〜350mm程度上げて小上がりの空間にすればいいと思います。
小上がりにすることで布団を敷いてもベッドに横になっているかのような感覚で眠ることができますし、空間全体がしまり落ち着いた寝室となることを肌で感じてもらえると思います。
※実は寝室の快適さを左右する要素として天井高があります。寝室の天井高があまりにも高すぎるとかえって落ち着かず逆に低すぎても圧迫感を感じてしまい息苦しい空間になってしまいます。実は和室に寝転んだ時の高さ2100mm程度が案外一番落ち着く高さになります。
快適な寝室にするヒントについては下記リンク先の記事にもまとめてありますので家づくりの際に参考にしてください。>>>家族にとって心地よい間取りの寝室にする19のアイデア
ポイント9:和室を柔らかい雰囲気にしたい場合は弧形の天井にする
少々値段ははりますが、和室をより柔らかな雰囲気にしたい場合は、和室の天井を弧形にしてみてください。
例えば、和室の入り口となる障子部分の高さは1750mm程度に抑え、和室内の天井高を2000mmから始まり中央に向かって2400mm程度に高くなり、中央から端に向かうほどに2000mmに緩やかに下がっていくような天井高にすると、天井の高さにコントラストが生まれ空間全体をより柔らかい雰囲気にしてくれます。
ポイント10:階段の蹴り上げと小上がりの高さを揃える
細かいところになりますが、リビング階段でリビング脇に和室をつくるケースでは、階段の1段目の段差と小上がりの高さを揃えると見た目がすっきりしますし、空間全体に統一感が生まれ広く見える効果があります。
階段の高さ寸法と小上がりの高さを揃えることで水平方向の線が綺麗にまとまるため、見た目が整い空間全体が引き締まり美しくみえるのです。
ただし、階段の段差と小上がりの高さを揃える場合は、300mmでは高すぎるので、段差の高さはおよそ200mm程度が目安となります。
この時、合わせて小上がりも200mmの高さにします。
もしくは二段目の高さに揃えて400mmでもいいでしょう。
また小技としては、この時階段に使われる素材と小上がり付近の素材も揃えていただくと、より空間全体が引き締まりますので参考にしてみてください。
ポイント11:吹き抜けの空間の脇に天井高の低い和室をつくり縦の高さを強調する
LDKが吹き抜けの空間の場合、小上がりの和室の高さを2100mm程度に抑えて配置することで高さのコントラストが生まれ、吹き抜けのLDKはより高く、小上がりの和室にはより落ち着きが生まれます。
縦の空間を強調したい場合は、小上がりの和室で高さを引き締めることで、よりリビングの高さが感じられやすくなり小上がりの和室も落ち着いた空間に仕上げられると言うテクニックもあるのです。
※下記リンク先の記事でも快適な和室コーナーの作り方について触れていますので、合わせて参考にしていただくとより快適な和室を作っていただけるかと思います。
>>>注文住宅で人気の高い11の間取りと間取りづくりのポイント
まとめ
今回の記事では家づくりで悩みがちな間取りの一つである和室についてお話ししました。
和室とはどんな部屋なのかから始まり、メリットやデメリット、和室を構えるなら取り入れたい工夫や快適な居室にするちょっとした高さを利用したテクニックに至るまでお話ししてきました。
快適な和室をつくる際の工夫やテクニックについては記事に書いたとおりアクセス方法、段差、高さ寸法を意識して和室をつくると快適性が変わってくるかと思いますのでぜひ試してみてください。
予算内でいい家を安く建てるために知っておいて欲しいこと
予算内で、いい家を安く建てるために知っておいて欲しいことが、実は、3つあります。
ここでは、いい家を安く建てるために知っておきたい3つの記事をご紹介します。
1:予算内でいい家を建てるための7つの基本
注文住宅では、ほとんどの場合、当初の予算をオーバーします。
予算をオーバーする原因は様々ですが、打ち合わせを重ね、プランを進めてしまうと、一度プランを白紙に戻さないと引き返すことができなくなるなど、後戻りができなくなってしまうケースもあります。
もちろんプランを白紙に戻した際は、余計なコストがかかることは言うまでもありません
ですから、家を検討しはじめた、早い段階で依頼する側が、最低限の家を安く建てるための基本やコツを知っておき、しっかりとコストをコントロールをする必要があります。
また、何も知らずに依頼先の住宅会社と契約をかわしてしまうと、依頼先の住宅会社では希望している家が建てられないということが、家づくりのプランを進めてからはじめてわかり、納得しないままに家づくりを進めなくてはならないこともあるので、契約をする前にベースとして持っておきたい知識があります。
下記の記事では、家の価格の決まり方の話や、家のコストを決定づける要因やコストダウンの基本などについてお話ししていますので、参考にしていただき、予算内でいい家を安く建ててください。
2:注文住宅を予算内におさめるために知っておきたい家の形の話
家には、お金がかかる家の形と、お金がかからない家の形があります。
また家の形次第で、間取りに制限がかかるなど、暮らしやすさが大きく左右されたり、長期間住むことで建物がダメージを受ける部分が違うためメンテナンスにかかる費用(維持費用)が変わってきたり、家の形によるメリットやデメリットが少なからずあります。
特に角の多い家は、注意が必要で、角が一箇所増えるにつれて、見積もり金額に10万円から20万円の金額差が生まれます。
下記の記事では、お金のかかる家とお金のかからない家の形の違いについてお伝えすると同時に、どのような家の形はコストが上がるかなどの例も載せておきますので、注文住宅で家づくりを検討しはじめたら、長い目で、家の形にも注意して家づくりを進めていくことをお勧めします。
家の形については下記の記事を参考にしてください。
>>>家づくりで覚えておきたい家の形とお金のかかる家とかからない家の違い
3:無料でもらえる住宅カタログを使って理想の家を建てる方法
注文住宅での、家づくりは情報を集めるところからスタートします。
そして、最終的に、いい家を建てられるかどうかの大きな分かれ目は、依頼先選びで決まると言っても過言ではありません。
実際、同じようなプランでも、依頼先によって見積もり金額に違いが生まれますし、予算の違いだけではなく、同じ要望でも依頼先次第で提案されるプランも違ったり、できることやできないことも違い、さらには工事の良し悪しも変わってきます。
だからこそ、失敗のない注文住宅を建てる上では、各社をしっかりと比較し、しっかりと検討してから依頼先を決める必要があります。
依頼先選びで、各社を比較検討をするためには、住宅カタログを利用すると便利ですが、各社のカタログを読み解く上で、押さえておきたいポイントなどがあります。
下記の記事では、無料で住宅カタログを取り寄せて、住宅カタログの見るべきポイントや、押さえたいポイント、住宅カタログを使いこなして賢く家を建てるポイントなどについて書いておりますのでぜひ、参考にして家づくりを進めていってください。
>>>無料で貰える住宅カタログを使いこなし賢く家を建てる6つのステップ
以上、参考にして家づくりを進めてください。