注文住宅の住宅価格を交渉し、値引きをする方法については、同じ業界にいる者としての立場上、あまり話したくはなかった話です。
ですが、そもそも注文住宅では値引き交渉があることを前提で、見積もりの作成がされている住宅会社も中にはあります。
そのような事情もあり、適正な価格で住宅を購入するためにも、注文住宅の住宅価格の値引き交渉の方法について、事前に知っておくことは必要だと思い記事にさせて頂きました。
Contents
注文住宅では見積もりを担当した人しか本当の価格はわからない
何度もお話ししていますが、住宅業界はある意味、ブラックボックスに包まれた業界で本来の「価格の中身」が見えづらいことが多々あります。
そのため、専門家でさえも正確な家の価格(家の原価)が、どのように決まっているのかを知ることは難しい状態にあり、同じ見積書でもどれくらいの価格で建てることができるのかは意見が分かれるところです。
もちろん、相場がありますのでざっくりとはわかります。ですが、本来の家の価格、つまり「家の原価」は積算(見積もり)を作成した担当者にしかわかりません。
なぜ、わからないのかといえば、家の価格の決まり方にその理由はあります。
一般的に、住宅価格は諸費用に住宅会社の利益分が含まれるとされていますが、実際には建築資材をはじめ、見えない形で様々な部分で住宅会社の利益が少しずつ上乗せされ価格が決まっていっています。
もちろん、粗利益率(売上から原価が引かれた儲けの部分)は、それぞれの住宅会社により違いますから、家の価格の決まり方は住宅会社によって様々となります。
ただし見方を変えれば、それだけ値引き交渉の余地があるという考え方もできます。
この記事では、まず家の価格はどのようにして決まっているのかという話をしてから、ハウスメーカー、工務店、設計事務所(建築家)それぞれの立場での、値引きに対する基本的な考え方を記していきます。
次に、値引きをするために必要な交渉材料の集め方、値引き交渉のタイミング、最後にハウスメーカーで最も注文住宅を安く建てるために値引き交渉をする6つの方法についてお話しして行きます。
注文住宅の価格の決まり方
まず、注文住宅の値引き交渉の方法の話をするにあたって注文住宅での住宅価格がどのように決まっているのかについて見て行かなければなりません。
つまり、この項目での狙いは、まずは住宅価格の決まり方や基本的な考え方を明らかにしていくことで、注文住宅の値引き交渉を有利に進めていくところにあります。
住宅価格は大きく言えば4つの要素によって決まっています。
家の価格を決める4つの要素とは「1:原価(材料費)」「2:労務費(人件費)」「3:経費」「4:会社の利益」の4つです。
つまり、まとめると住宅価格は下記のようにして決まっていることとなります。
【住宅価格の決まり方】
・原価(材料費)+労務費(人件費)+経費+会社の利益=住宅価格
1:原価(材料費)とは
住宅価格でいう原価とは、家を建てるのに必要な材料費のことです。高価な材料を使うほど住宅価格は自ずと高くなります。
2:労務費(人件費)とは
住宅価格の中の労務費とは、いわゆる人件費のことです。家を1棟建てるのには様々な業者が絡んでいますから、関わる人数が多い(=複雑な工事である)ほど、労務費は高くなります。
3:経費
経費とは宣伝広告費や下請けマージン、営業経費、研究開発費、モデルハウス維持費、その他会社運営費などの費用を言います。広義では車両費など、家を建てるのに必要なお金も含みます。
4:会社の利益
住宅価格には会社の利益も反映されています。完成した後のアフターフォローをはじめ、永続的な発展をしてくためには正当な会社の利益は必要となりますから、会社の利益が確保され住宅価格に含まれています。
・・・
要するに、注文住宅の住宅価格を値引きする、または住宅価格を安くするには、上の4つの要素のうち、いずれかの要素、または全ての要素においてコストダウンを図る形で行われていきます。
そして、そうした努力の末の住宅価格が書面として反映されたものが見積書であり、見積書に書かれている建物本体工事費、付帯工事費、諸費用を合わせた価格が住宅価格になります。
【建物本体工事費+付帯工事費+諸費用】 = 住宅価格 = 【原価+労務費+経費+会社の利益】
見積書の内訳については「注文住宅にかかる総費用の内訳について、どこよりも詳しく教えます」にどのようなものがあるのか書かせて頂いていますので別途参考にしてください。
注文住宅の値引き交渉の基本的な考え方
注文住宅の値引き交渉を有利に進めるためには、まず第一に「交渉材料を用意すること」、それに「値引きのタイミング」をきちんと図る事、以上の2点が非常に大事です。
1:交渉材料を用意すること
2:値引きのタイミングを図ること
※値引き交渉を有利に進めるためには、以上の2点を必ず守ってください。交渉材料や効果的な値引きのタイミングについてはこれから記事の中でお話しします。
私の考えでは、必要以上に値引き交渉をすることは、その結果、住宅の品質の悪化につながるので、必要以上に値引き交渉をするものではないと思っています。
ですが、住宅会社によっては、そもそも値引きされることを前提で住宅価格を決めている場合もあり、そうした場合は、きちんとした交渉を行い、本来の適正な価格に戻すことが必要になります。
住宅会社によっては値引きにより契約を結ぶ機会を狙っている
注文住宅での家づくりを依頼する側も「値引きのタイミング」を狙っていますが、実は、住宅会社側も先を読んでおり「どのタイミングで値引きをすれば契約に持ち込むことができるのか」タイミングを伺っています。
ただし、注意していただきたいのは、一般的に値引率は販売管理費から差し引かれる形になるので、依頼する住宅会社によって値引き率は違いますし、そもそも、はじめから値引きができないようなギリギリのラインで価格設定がされている場合もあります。
この辺りは、大手ハウスメーカーに注文住宅で家づくりを依頼するのか、中小工務店に依頼するのか、または、設計事務所(建築家)に依頼するのかによっても違ってきますし、また3つの依頼先の中でもそれぞれの住宅会社によって細かく取り決めがありますので個々の会社やケースによって違います。
また、ローコスト住宅などは、たとえハウスメーカーであろうと、そもそもギリギリの価格設定が組まれていることもあるので、値引き率はあまり良くなく、場合によっては値引きができないこともあります。
それぞれの依頼先による値引きの基本的な考え方は下記のとおりです。
大手ハウスメーカーの注文住宅の住宅価格に対する値引きの考え方
大手ハウスメーカーのほとんどは、そもそも値引きを前提で見積もりが作成されています。
具体的な値引き率については、それぞれのハウスメーカーによって違いはあるものの、最初の見積もりが提示された段階で、概ね5%前後値引かれることを想定されて見積もりが提示されています。
大手ハウスメーカーの場合、値引きをされること、もしくは住宅会社側が自ら値引きをすることを前提に見積もりがつくられていますから、他の依頼先よりも比較的容易に値引きを行うことができます。
ただし、あからさまに「値引き」という表現だと印象が悪いため、大手ハウスメーカーでは、多くの場合「キャンペーン」や「サービス」という名目で値引きをしてくれます。
また、見積もりを提示された段階での見積もり金額で契約が厳しい場合、数字をいじり値引きをしてくれる可能性が高いのが大手ハウスメーカーの特徴です。
逆を言えば多くのハウスメーカーでは、営業手段として値引かれることを前提として、あらかじめ高い金額で見積もりを提示しており、タイミングよく値下げをしていくことでお得感を煽り価格交渉を有利に進めていっているとも言えます。
また、大手ハウスメーカーでは、契約の時期や、それぞれの支店における数字の状況(ノルマ達成率)によって値引き率は変化します。
中小工務店の住宅価格に対する値引きの考え方
工務店はそもそも値引きをされることを前提で見積もりがつくられていないことが多々あります。
もちろん「工務店」と一括りにしても様々な工務店がありますから、一概にそうだと決めつけることは難しいですが、良心的な工務店の場合は、きちんと自分たちの取り分を確保した上で、良心的な価格で見積もりを提示しています。
ですからハウスメーカーのように、そもそも値引きをされることを前提として見積もりがつくられているわけではないため、見積もり金額での契約が難しくコストを削減したい場合は、「施主支給(せしゅしきゅう)」を勧められる場合があります。
施主支給では、業者側の利益分(マージン)の金額を削減できますが、施主自身でキッチン設備機器などの高額な商品を購入し手配をする必要があります。
ただし、その場合はあくまで施主自身の購入ということになるので、一般的に施主支給部分においては施主の責任になるので注意が必要となります(工務店側の保証がつきません)。
一般的に良心的な工務店では値引き交渉は難しい側面があるものの、工務店の仕入れ先が大手の問屋や代理店の場合、もちろん現実的な策で値引き交渉の余地はあります。
つまり仕入れ先の問屋に対して値引きの交渉をする方法により、住宅価格の値引きができる場合もあります。
設計事務所の住宅価格に対する値引きの考え方
設計事務所で値引きを行う場合はVE(バリューエンジニアリング)という方法が一般的です。
つまり、設計事務所や建築家に依頼した場合は、機能などの同等の価値の住宅設備機器などを見直すことで、見積もりの金額を抑える方法が一般的です。
設計事務所や建築家が作成する図面は、こだわりが詰まっており意匠性(デザインセンス)に優れている一方で、材料費はもちろん、工事に手間がかかるのでコストを抑えることはなかなか難しく、ほとんどの場合は当初の予定金額よりも増額となるケースが多いことをわかった上で依頼する方がいいと思います。
工事自体も図面ではどんなに完璧でも、現場で実際に施工して見ないとわからないケースもあり、実際に工事に入ると施工上の問題により追加費用が発生することが多々あります。
またそれを解決するために時間もかかるため、スケジュール通りに運ばないことも多いのが設計事務所に依頼する際の現実です。
設計事務所では工事のことを考えて設計されていないと揶揄(やゆ)されるほど、一般的に設計事務所に依頼した場合の工事は複雑なため、多くの場合は予備費を見込んでおいたほうが安心して家づくりを進められると思います。
大手ハウスメーカーの建築価格の内訳
大手ハウスメーカーが値引きに応じやすいのは、その建築価格の内訳にあります。
大手ハウスメーカーは独自の資材を開発していたり、工場で建築資材を大量生産しているためコストを抑えて資材を購入できます。
しかし一方で、その他の営業経費や広告宣伝費をはじめとする販売管理費(販売費及び一般管理費)が膨大にかかっているため、その金額が資材の価格に上乗せされている構図にあります。
また大手ハウスメーカーは営業主体の受注会社であるため、工事は下請けに投げることになりますが、その時に下請会社は、下請けマージン(仲介手数料)を受け取っています。
つまり、大手ハウスメーカーの建てる住宅は「住宅の価格」に多くの「下請けマージン」が乗せられた価格に設定されています。
ですから、それらが住宅価格にのせられ、粗利率にかなりの幅をもたせているため「販売管理費を見直す」ことで値引きに応じやすくなるというわけです。
では大手ハウスメーカーでは、住宅一棟あたりどのような販売管理費がかかっているのでしょうか。
外部サイトのポラリスハウジングサービスが作成した「大手ハウスメーカーの建築工事費の内訳」を参考にし、下記で詳しくお話しします。
ハウスメーカーの建築工事費:実質工事価格
大手ハウスメーカーは受注会社なので、設計は内部で行わず設計事務所に投げていたり、実際の工事は下請けの工務店に投げています。(工事の場合、さらに孫請けの工務店に投げる場合もあります)
住宅一棟あたりに携わる業者の数が増えるほど、家を建てるのに必要な経費は膨らんで行きますからその分余計な経費がかかることとなります。
ハウスメーカーの販売管理費1:下請けマージン
関わる業者の数が増えるほど、中間マージンとして「下請けマージン」が発生するので、費用がどんどん嵩んで行きます。
大手ハウスメーカーの場合、下請け工務店への発注価格が原価となりますが、下請け工務店(もしくは関連子会社)がさらに下請けに依頼すると(孫請け工務店)不要な費用がどんどん積み重なって行きます。
【大手ハウスメーカーで住宅の価格が膨らむ1つの理由】
・大手ハウスメーカー→(マージン発生)→下請け工務店→(マージン発生)→孫請け工務店
ハウスメーカーの販売管理費2:営業経費
大手ハウスメーカーは、営業部、設計部、人事部、経理部、購買部、総務部などがあり、大変大きな組織となっています。
大手ハウスメーカーの場合、この中で一番強い意見を持っているのが営業部となることが多いですが、住宅会社で働く社員への給料はもちろん、販売促進費や福利厚生費も必要となります。
つまりそうした組織の機能を保つための経費が営業経費にあたります。
ハウスメーカーの販売管理費3:研究開発費
研究開発費とは、住宅の性能を上げるための研究など、新商品の開発のためにかかる費用です。
研究開発費には住宅とは直接関係のない、マーケティングに関する研究など、広く住宅を販売するためにかかるマーケティング研究費用も含まれています。
ハウスメーカーの販売管理費4:モデルハウス維持費
大手ハウスメーカーは1棟建てるのに7,000万円程かかるモデルハウスを全国の住宅展示場に出展しています。
モデルハウスは広義では広告費に当たりますが、住宅展示場の出展料をはじめ償却費、ガス、電気、水道などの光熱費など、モデルハウスを維持するために多額の費用がかかっています。
ほとんどのモデルハウスは、常に最新の工法や構造を始め最新の住宅設備機器であるように数年(多くは5年)ほどで建て替えられています。
ハウスメーカーの販売管理費5:広告宣伝費
大手ハウスメーカーではテレビCMをはじめ、新聞広告、雑誌広告など集客のための広告宣伝費に多大なる費用をかけています。
各雑誌の媒体資料を見ていただければ、わかりやすいですが、広告宣伝費は非常に高額となっています。
年間あたり、どれだけの費用を広告宣伝費にかけているのかというと、大手ハウスメーカーの提供するIR情報から調べて試算した場合、おおよそ売り上げの2%ほどの金額を広告宣伝費にかけている計算になると言われています。
ハウスメーカーの販売管理費6:その他会社運営費
その他、会社を運営していくためには、事務所費用を始め車両費など様々な経費がかかっています。
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以上のように、大手ハウスメーカーでは住宅会社を維持するのに、広告宣伝費や営業経費が多く占めています。
またハウスメーカーでは工事を外注し下請けに流しているため、価格に多くの「下請けマージン」が発生しています。
つまり、大手ハウスメーカーは自社工場で資材を大量に生産し消費しているため、資材あたりの単価は工務店に比べると安く抑えられておりますが、それ以外の部分で様々な経費が発生しているため、原価(材料費)が安い割りには建築価格が高く設定されています。
冒頭でお話ししたように、家の価格には「1:原価(材料費)」「2:労務費(人件費)」「3:経費」「4:会社の利益」が含まれていますが、大手ハウスメーカーの収益構造の特徴は、限りなく「1:原価(材料費)」と「2:労務費(人件費)」が抑えられている点にあります。
例えば、建築資材を工場で大量生産することで「1:原価(材料費)」は抑えられていますし、プレハブ工法などを採用するなどして、現場では主に組み立てることが中心となるような作業効率を高めることで「2:労務費(人件費)」も大幅に圧縮しています。
ただし、その分「経費」を含む販売管理費の比率が高く、「会社の利益」もしっかりと確保しているため、結果的に、住宅価格が高くなっています。
ハウスメーカーは借りられる金額で注文住宅の予算が計算される
また大手ハウスメーカーは見積もりを作成する際にも特徴があり、金融機関に打診し施主がどれくらいの金額を借りられるのかを計算した上で、それに自己費用を合わせた金額目一杯の額で、注文住宅の見積もりが提出されます。
つまり金融機関から3500万円借りられる状態であった場合で自己資金が500万円用意できると申告があった場合は、まずは4000万円に近い金額で概算見積もりを提出されます。
もちろん値引きをされることは織り込み済みですので、それ相応の粗利益率が計算されて見積もりが提出されるので注意してください。
建築予算を伝える時はそうした事情も鑑みた上で伝えなければなりません(想定予算の7割から8割程度の予算で伝えておくと安心だと思います)。
工務店の建築価格の内訳
大手ハウスメーカーと比べると、工務店の場合の建築価格は「実質工事価格」の比重が大きくなります。
ですから同じ仕様の家でも、大手ハウスメーカーのように広告宣伝費や営業経費、モデルハウス運営費はもちろん研究開発費などに使用される販売管理費の割合が異業種と思われるくらいに違っています。
工務店の場合は大抵、工事を主体に資金計画が検討されますから、それに伴う材料費(原価)や労務費などが建築費用の多くを占め、広告宣伝費などとして計上される販売管理費の割合は非常に小さくなっています(工務店の中には建築価格の内訳の中に、大手ハウスメーカーでかかる販売管理費が全くかからないものもあります)。
例えば、ハウスメーカーと工務店で「営業経費」だけを比較すると、大手ハウスメーカーが4〜5%の「営業経費」がかかるところ、工務店の場合1パーセント程度に抑えられているのが一般的です。
また工務店の場合は、大手ハウスメーカーと違い、大量仕入れをすることによるコストダウンを図ることができませんから、資材あたりの単価は自ずと高くなります。
ただし、工務店の場合は、大手ハウスメーカーのように事務手続きだけを専門として進める部署などは存在せず、大抵は経理と一緒になっているか工務店の社長が自ら事務手続きを進めているため販売管理費が抑えられた収益構造となっています。
つまり、家の価格の「1:原価(材料費)」「2:労務費(人件費)」「3:経費」「4:会社の利益」のうち、工務店では、「1:原価(材料費)」と「2:労務費(人件費)」に占める割合が高い収益構造となっています。
工務店の場合は大体の金額で予算が計算される
また、工務店の場合は、大体の概算見積もり金額で計算され見積書が提出されます。
そのため大手ハウスメーカーと比べると見積もりの精度が非常に悪い場合が多く、打ち合わせ時に金額の増減が頻繁に起こります。
もちろん見積もり精度の高い工務店も中にはあるものの、一般的な工務店では打ち合わせを重ねるうちに金額が大きく変わってしまうことも多いのが現実です。
ですから工務店と一緒に資金計画を立てる時は非常に注意が必要で、必ず専門家に依頼し資金計画に間違いがないかをチェックしてもらうことが必要となります。
住宅価格の値引きは4つの住宅価格の要素のどこで調整されるのか
住宅の価格は「1:原価(材料費)」「2:労務費(人件費)」「3:経費」「4:会社の利益」の4つを合計した金額で決まるとお話ししました。
一般的には、これらの住宅価格の中の販売管理費の粗利率を調整することで住宅価格は値引きをされて行きます。
特にほとんどの場合ハウスメーカーでは、販売管理費で値引き率が調整されて行きます。
では、ハウスメーカーに限らず、住宅価格の値引きを行うには、具体的には4つの要素のうち、どの部分で調整し値引きをすることが効率的なのでしょうか。
ここからは、ハウスメーカーに限らず、住宅価格を値引きしてもらいやすい要素と、住宅価格を値引きする際の注意点や問題点についてお話しします。
住宅価格の値引き要素1:原価(材料費)
原価(材料費)は、それぞれの住宅会社がどこから、どのように仕入れているのかによって大幅に違います。
例えば住宅会社が、独自のルートを持っており一般的な仕入れ価格よりも資材を安く購入できる場合、原価(材料費)において、通常よりも大きな値引きが期待できます。
もちろん、それぞれの住宅会社の仕入れ状況により原価(材料費)は違いますから、値引き率がどれくらいになるのかは一概に言うことができません。
ですが、住宅価格を値引くのであれば、やはり材料費の面で値引き交渉をすると交渉しやすい側面があります。
ただし住宅会社独自で使用している、独自性が高いものについては値引き交渉が難しい場合が多い傾向があります(例えばヘーベルハウスの壁(ALC)など)。
住宅価格の値引き要素2:労務費(人件費)
労務費(人件費)は、現場で工事をする業者または職人にかけるお金です。
労務費(人件費)は、職人の腕と人数によって決まっています。つまり熟練工になるほど、一人当たりの労務費(人件費)は高くなりますし、現場で施工する職人の人数を増やすほどに労務費(人件費)が高くなっていきます。
労務費を下げる問題点としては、総じて職人の質と労務費は比例しているということです。つまり、一般的な見解として、労務費(人件費)を削れば削るほど腕の良くない職人に工事を依頼しなければならない可能性が高くなります。
一般論として、本当に腕のいい職人は、労務費(人件費)を削ってまで仕事を請け負うことをしませんから、本当に良い家を建てたいのなら労務費(人件費)を削ることはあまりお勧めしません。
どんなに良い図面を描こうが、結局は工事で決まるのが注文住宅ですので注意してください。
住宅価格の値引き要素3:経費
経費とは事業費用のことですが、経費としてかかる費用はそれぞれの住宅会社によって比率は大きく異なっています。
例えば大手ハウスメーカーの場合ですと、下請けマージン、営業経費、研究開発費、モデルハウス運営費、広告宣伝費が代表的な経費としてあげられます。
一方で、地域の工務店はそうした下請けマージンや広告宣伝費、モデルハウス運営費などがかかりませんから、もともと経費が抑えられた収益構造になっています。
例えば、ポラリスハウジングサービスの試算によると、大手ハウスメーカーで図面と仕様書、見積書を依頼し、同じレベルの家を地元の工務店に見積もりを取った場合、下記のような違いがうまれたとされています。
上の建築費比較の図からわかることは、大手ハウスメーカーでは建築費の半分程度が、販売管理費としてかかっているということです。
つまり、大手ハウスメーカーの場合は、それだけ経費として家の価格に計上されていることになります。
もちろん、家は価格だけで判断できるものではなく、その中身や工事内容により住宅の品質は異なりますから、単純に比較をすることだけで家を判断することはできません。
実際には大手ハウスメーカーの場合は、独自の工法や、独自の資材が使われているでしょうし、目には見えない部分で品質を確保していることもあります。
家は本当に複雑ですから様々な部分をしっかりと見た上で判断する必要があります。
住宅価格の値引き要素4:会社の利益
ですが会社の利益は、会社が永続的に発展していくために必要なお金にあたるので、必要以上に会社の利益を削らせてまで値引きをすることはお勧めしません。
特に小さい住宅会社の場合、会社の利益を削りすぎると、研究開発費や、アフターフォローに回すお金がなくなり、会社のキャッシュがショートし、倒産してしまうこともあるので、完成した家に何か問題が起きた時に依頼することができなくなります。
依頼した会社が倒産してしまった場合、完成した家のアフターフォローをしてもらうことができなくなってしまいます。
長い目で見て自分の身を守るためにも、正当な会社の利益はきちんと確保してもらうべきです。逆を言えば、すぐに会社の利益を削ろうとする会社とはあまりおつきあいすることをお勧めしません。
会社の利益は、材料費の一部として見えない形で上乗せされることもあれば、諸費用として確保されることもあります。住宅会社により利益率は様々ですが、一般的な住宅会社の場合、住宅価格の20%程度が利益(粗利益)として確保されています。
つまり本体工事費が3000万円の家の場合は、概ね600万円程度が住宅会社の利益となっています。
・・・
つまり住宅価格の値引き交渉は基本的には「1:原価(材料費)」で調整し、販売管理費内の粗利率を調整してもらうことによって値引きをすることで調整されています。
ハウスメーカーで家の値引きをする6つの方法
それでは具体的に家の価格を値引きさせるためには、どのような方法で値引きに持ち込めば良いのでしょう。
先ほどもお話ししましたが、家の価格を値引きするためには「交渉材料を用意すること」「値引きのタイミング」を見極めることが必須条件です。
つまり、ハウスメーカーの場合、しっかりとした交渉材料を用意し、値引きのタイミングを狙って値引きを行えば、最大限値引いた価格で住宅購入をすることができます。
ここでは値引きをする6つの方法や、値引きの条件についてお話ししていきます。
ハウスメーカーで値引きをする方法1:構造や工法を競合させる
有効的に値引き交渉を行うためには、条件を揃える必要があります。
条件が違いすぎると、価格を比較することが難しくなるので、そもそも値引きを行うことができません。
つまり、住宅会社独自の資材や、ハウスメーカー独自の構造や工法が使用されている場合は、他社と競合することができないため、その部分において値引きに応じてくれる確率が低くなります。
構造や工法を複数社で競合させるためには、例えば木造軸組み工法(在来工法)やツーバイフォー工法などは一般的な建物の構造となるので、他社と競合しやすく値引きに応じてくれやすくなります。
ハウスメーカーで値引きをする方法2:住宅設備機器のコストダウンを図る
ハウスメーカー独自で使用されている資材が使われており、それがハウスメーカーのウリとなっている場合は値引きをすることは難しいです。
ですが、どこのハウスメーカーでも使用可能な一般的な資材が内外装をはじめ、住宅設備機器として使用されている場合、値引きできる確率が高くなります。
例えば、契約前の最終的な値引き交渉をしている段階でさらに値引きを行いたい場合は、住宅設備機器などの設備項目は値引きをしやすい傾向にあります。
さらに言えば、住宅設備機器の中でも、使用される面積の多い床暖房や、太陽光パネル、キッチンなどの設備機器は値引き率が高くなる可能性の高い設備機器にあたります。
つまり、他社と競合させるなどしっかりとした交渉材料をあらかじめ用意し、値引きのタイミングを狙って値引きの交渉をすると、住宅価格を値引いてくれやすくなります。
ハウスメーカーで値引きをする方法3:使用メーカーを統一させる
住宅設備機器のメーカーを統一させることでも値引きを図ることが可能です。
キッチン、浴室、トイレなど、水回りのメーカーを統一させることでも値引きができる可能性が高くなりますし、全ての住宅設備機器を同一のメーカーにすることは難しくても、できるだけメーカーを統一することで、仕入コストは下がりますから、一点一点の住宅設備機器にかかる金額を抑えることができるようになります。
逆に、トイレはTOTO、キッチンはタカラスタンダード、浴室はリクシルなどメーカーをバラバラに使用した場合、値引きという観点からみると交渉が難しくなります。
ハウスメーカーで値引きをする方法4:決算期に交渉する(3月や9月)
決算期には「決算期値引き」が適用され、通常の値引額よりも大きく値引いてくれる事があります。
ハウスメーカーを含む住宅会社の決算期は3月か9月が一般的ですが、その時期の契約(引き渡し)は「決算期値引き」が適用されるため、通常の時期に契約するよりも大幅に値引いた価格で契約に持ち込むことができます(通常住宅は引渡し時に住宅ローンが降りるので、引き渡し時に売り上げが立ちます)。
ただし、契約というのは、例えそれが「仮契約」だとしても法的拘束力が発生しますので注意が必要となります。
つまり値引き率にひかれ、具体的な内容が決まっていないのに契約をしてしまうと後になって金額が大幅に増え、想定したよりも住宅価格が高くなってしまう事もあります。
また問題は価格だけではなく、契約が集中してしまうと、現場の工事時期が集中するため、工事スケジュールの関係で現場にいい職人が回せなくなってしまったり、ひどい場合では、施工に不具合が出てしまうこともあります。
しっかりとした契約を行うためには、間取りや内外装、住宅設備機器など全ての見積もり内容が「概算」ではなく「本見積もり」としてしっかりと揃った段階で、契約をしなくてはなりません。
曖昧な金額のまま値引率にひかれて契約してしまうと、契約後に金額が跳ね上がり、他社と契約したくても契約できない状況に追い込まれてしまうことも考えられます。
注文住宅の家づくりは打ち合わせ回数も非常に多く、通常住宅の仕様が決まるまでは、初期プラン作成の初めて依頼した段階から半年程度は期間が必要になります。
それだけ多くの時間がかかりますから、タイミングを見極めて打ち合わせを行い、全ての金額をしっかりと確認してから契約をするように注意してください。
ハウスメーカーで値引きをする方法5:売れない時期に交渉する
特に大手ハウスメーカーのモデルハウスが展示されている、住宅展示場においてはそれが顕著にあらわれ、2月、6月、8月は来場者数も相当数落ち込む傾向があります。
ですから、住宅業界に限った話ではないかもしれませんが、一般的に売れない時期に、値引きの交渉を持ち込むと値引きされやすい傾向にあるようです。
なぜ、売れない時期の値引き交渉が有利に進むのかといえば、それには会社としての事情も複雑に絡み合っています。
例えば、ハウスメーカーは住宅会社ですが、その中身を見れば営業会社です。
つまりハウスメーカーでは、各支店の営業ノルマとして、受注棟数、受注額、粗利率の項目で本部から通達された一定の条件を達成しなくてはならない仕組みとなっています。
また達成率も四半期ごとに分けられていることが一般的です。ですから例えば注文住宅を依頼しようと検討している支店が、いずれかの営業ノルマを達成していない場合は、個別の事情が働きなんとか契約にこぎつけようと多少無理をしてでも値引きをしてくれる可能性が高くなります。
ハウスメーカーで値引きをする方法6:他社と競合させる
値引きをするには交渉材料を用意することが必要ですが、他社と競合させることで交渉材料を得ることができます。
つまり同等の条件で相見積もりを取ることで交渉材料を得て、他社と比較したうえで値引きを図る方法です。
例え、最終的に依頼する住宅会社が決まっていたとしても他社と競合させることで、有利に金額交渉を行い、値引きを行う際の値引率が有利に働くことがあります(結果、家が安くなります)。
ただし、他社と競合させる場合は、あくまでも競合他社の条件をできるだけ近い形にしないと効果的ではありません。
つまり予算も一緒、同じ工法、使用されている住宅設備機器もできるだけ同等のものといったような条件を揃える必要があります。
また、一社一社入念な打ち合わせをして、交渉材料を集めてもいいのですが現実的にはその方法ですと、どれだけ時間があってもたりません。
ではどのようにして交渉材料を集めて行けばいいのでしょうか。
結論としては、住宅値引きを行うための交渉材料は一括見積もりサービスを利用すると、効率よく揃えることができます。
金額ボリュームを始め、家の工法などの条件を揃えて、複数社から一気に見積もりを受け取ることができるので交渉材料を得るための手段としてこうしたサービスを利用してみてください。
【家づくりを検討し始めたら、住宅価格値引きの交渉材料を効率よく集める】
家づくりを検討しはじめたら、早い段階で一括見積もりサービスを利用し、交渉材料を揃え、競合させることで最も安い価格で家を購入できるように準備をしておいてください。
家づくりを検討し始めた早い段階で一括見積もりサービスの利用をお勧めする理由としては、本格的な交渉材料を揃えるためには時間がかかることがあるからです。
条件などを揃えるためにも時間がかかる場合がありますし、より住宅価格を安くし有利な条件で競合させる交渉材料を用意するには打ち合わせが必要になる場合もあります。
住宅価格を値引きより安い価格で家を購入したい場合は、いずれにせよ早い段階から交渉材料を用意しておくことを強くお勧めします。
・・・その他家を安くする方法
その他家を安くする方法としては、全体の設計を見直して、コストダウンを図る方法もあります。
家を安くするためのコストダウンの方法については「家を安く建てる方法とコストダウンの7つの基本」に詳しく書かせていただいておりますので、家をできるだけ安く購入したい方は検討材料としてご利用ください。
家の価格の値引きをする方法
つまり、ハウスメーカーに限らず家の価格を値引きする方法をまとめると下記の通りになります。
まず交渉材料を用意します。相見積もりを取り他社と競合させることで住宅会社は値引きに応じてくれやすくなります。
ただし、値引きするための交渉材料を用意する場合は、あくまでも条件を一緒にすることが大事です。
例えば、ハウスメーカーの場合は同じようなランクの同じような住宅を建てている住宅会社に見積もりを取り比較することが大事です。
その際(交渉材料を用意する際)には一括見積もりサービスなどを利用してください。
【条件を揃えて効率的に複数社に見積もりを依頼し交渉材料を揃える】
一括見積もりでは条件を揃えて複数の住宅会社に同時に間取りプランの作成をはじめ家の見積もり依頼まで一気に依頼をかけることができます。
条件を揃えた上で、複数社に一括して見積もりを依頼することで値引き交渉の材料を効率的に集めることができます。
次に適切なタイミングで、交渉をしてください。
適切なタイミングとは、閑散期である2月、6月、8月期、または決算期の3月と9月です。
その際、メーカーなどの住宅設備機器を統一するなどをすればさらに値引きは行いやすくなります。
ただし、契約を結ぶ際は、概算ではなく、きちんと見積もり内容が揃っていることを確認してから契約を結ぶようにしてください。
どのような書類が揃っているのかを確認してから契約に至るべきなのか細かい点については「よくありがちな新築一戸建て注文住宅の家づくりを失敗する6つの原因と注意すべき159のこと」コンテンツ内の「よくありがちな注文住宅での家づくりを失敗する原因5:契約内容を確認しないまま契約してしまう」を読み進めてください。
まとめ:家を安く建てるために値引きをする6つの方法
住宅価格の決まり方は非常に複雑です。
それぞれの住宅会社により違いますし、会社が置かれている立場や状況など、様々な条件により変わってくることもあります。
今回の記事では値引きをする基本的な考え方や、方法についてお話しさせていただきましたので、あてはまるハウスメーカーは非常に多いと思います。
ぜひ、今回の記事の内容を役立てて有利に交渉を進め、理想の家づくりを叶えていってください。