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回遊動線は必要ない?後悔しない回遊動線にするプランニングのコツ

回遊動線にして良かったという意見もあれば、回遊動線にして失敗したという意見もあります。

この2つを分けるものはおそらく、回遊動線を手段としてとらえているか、それとも目的にしてしまっているかの違いにあると思います。

回遊動線は家の間取り(空間のとり方)の中でも人気の高いプランの一つですが、ライフスタイルや家族構成によって、回遊動線が適しているか、それとも相性が良くないのかが大きく分かれるプランの一つです。

特に本来の目的と理想の暮らしを実現するための手段と目的を履き違えてしまったり、目的と手段を混同させてしまうと途端に使い物にならない悪い回遊動線になってしまったりします。

そればかりか回遊動線を取り入れたがために居住スペースを圧迫してしまい不快な間取りになってしまったりすることもありますし、一般的に思われている動線の快適性よりも、回遊動線を取り入れる上でのクセの強さが目立つプランの一つだと思います。

そこで今回の記事では使える回遊動線にするためにはどんなことを気をつければいいのか、回遊動線をプランニングするにあたってのコツや、良い回遊動線と悪い回遊動線の違い、それに回誘導線のアイデアについてもお話ししていきます。

回遊動線を検討するにあたって大事なことをお話ししていきますので回遊動線を取り入れようと思っている方は参考にして見てください。



回遊動線で失敗しないために意識しておきたいこと

回遊動線をつくると家の中を近道できるようになります。

例えば「1」の部屋から「3」の部屋に移動する際に廊下を通るなど回り道をしなければならなかったところを、「1」と「3」の部屋に扉を設けて回遊動線にすれば、それぞれの部屋へ近道できるようになるのです。

ただし回遊動線をプランニングするときは下記のことに気をつけて検討するようにしてください。

【回遊導線のプランニングのコツ】

1:回遊導線をつくることを目的にしない
2:回遊導線はあくまで手段の一つに過ぎないと意識する

住まいはあくまでリビングをはじめとした諸室がメインの空間で住まいの快適性が大事です。

回遊動線はそれらの暮らしやすくするための手段にすぎず、回遊動線をつくること自体が目的とならないように注意してください。

1:回遊動線をつくることを目的にしない

家づくり(間取り)をプランニングしていると、いつの間にか手段が目的におき変わってしまうことがあります。

例えば、はじめのうちは、採光を確保するためにリビングを吹き抜けにしようと考えていたのに、いつの間にか吹き抜けをつくることが目的になってしまい、あれもこれもとムダなものを取り付けて行ってしまったりどうせだったら豪華なものにしようと必要のないものを取り付けて行ったり、必要以上に広いスペースを割いてしまうケースなどです。

本格的に家づくりを始めるとあらゆる場面で「目的」と「手段」が入れ替わる現象に出くわすと思います。

ですが、回遊動線でも同じように、回遊動線をつくることそれ自体が目的になってしまいがちなので、家づくりで失敗しないためには回遊動線をつくることを目的としてしまっていないかを意識しながらプランを作っていくようにしてください。

2:回遊動線は手段の一つに過ぎないと意識する

また回遊動線はあくまで家の中の動線を便利にするための手段の一つに過ぎないということをしっかりと意識して間取りをプランニングしてください。

回遊動線は主役ではなく、脇役です。

決して回遊動線をつくることを中心に考えないでください。そして繰り返しになりますが、回遊動線は家の中の移動を便利にするための一つの手段に過ぎないということを強く意識してプランニングして行ってください。

回遊動線をつくることそれ自体が目的になってしまうと、他の居室や収納スペースを圧迫してまで無理やりつくろうとしたりしてしまい、チグハグでアンバランスな間取りになっていってしまう傾向があります。

また回遊動線をつくることを目的としてしまうと、必要のないところまで回遊できる動線をつくってしまったり、住み心地が悪くなってしまったり、回遊できる動線を作ったことでかえって使いづらい動線になってしまうこともあります。

回遊動線を取り入れた結果、家づくりが失敗に終わってしまうとすれば、それはもう本末転倒としか言いようがありません。

回遊動線の目的は3つある

実は、回遊動線にする目的は3つあります。

そして回遊動線にするときは常に、その経路は何のためにつくられた動線なのか、どのような目的を持った動線であるのかを必ず考えて動線を計画していくようにしてください。

【回誘導線をつくる3つの目的】

1:家事動線を確保して「家事効率」を上げたい
2:移動を楽にして「暮らしの利便性」を高めたい
3:来客時に「顔を合わせずに移動できる」動線を確保したい

この3つの目的に分けて、今作ろうとしている動線はどれにあたるのかを考え、意味のある動線にしていくことが回遊動線を計画する際には必要になります。

また、回遊動線は家の中で動線をよくするための手段の一つに過ぎないと意識して取り組むことも大事です。

回遊動線の目的1:家事動線を確保して「家事効率」を上げたい

家事動線とは家事を行う際の経路のことです。

特に水まわりのことを指すことが多く、キッチンから洗面脱衣所、浴室を移動する経路だったり、これに加えて洗濯物を干して取り込み、たたみ、しまう経路のことを指すことが多いです。

またキッチンからダイニングに料理を運ぶときの経路も家事動線に含まれます。

これらの家事効率を上げる目的で回遊動線を検討していきます。

回遊動線の目的2:移動を楽にして「暮らしの利便性」を高めたい

部屋と部屋の壁を通り抜けられるようにすると、移動しやすくなり暮らしの利便性を高められることがあります。

部屋間の「移動を楽」にする、または頻繁に利用する部屋から部屋への移動をしやすくし「近道」する目的で回遊動線は検討されます。

回遊動線の目的3:来客時に顔を合わせずに移動できる動線を確保したい

来客が多い家では、来客時にお客様が通る経路と、生活経路を分けて考える際に回遊動線は検討されます。

間取りに回遊動線を取り入れれば来客者にプライバシーに関わる生活面を見せることなく家にあげることができたり、来客者に不愉快な思いをさせることなく客間に通すことができるようになります。

良い回遊動線と悪い回遊動線

回遊動線には「小さくまわるタイプ」と「大きくまわるタイプ」の2つの経路があります。

【回遊動線の種類は2つ】

1:小さくまわる回遊動線
2:大きくまわる回遊動線

間取りにもよりますので一概には言えませんが、「小さくまわる」タイプの回遊動線は回遊動線の良い面が活きてくる間取りになることが多く、「大きくまわる」タイプの回遊動線にすると逆に不便な間取りになってしまうことが多くなり、設計の難易度が上がるものだと思ってください。

良い回遊動線:小さくまわる回遊動線

小さくコンパクトにまわる回遊動線は使い勝手の良い回遊動線になりやすいです。

小さくまわる回遊動線では回遊動線の特徴である「楽な移動」「近道」を活かしやすく、回誘導線の利便性をしっかりとたもつことができます。

また小さくまわる回遊動線では、収納スペースも十分な量を確保できることも多いです。

特に「キッチン」「洗面室」「浴室」をぐるぐると回れる回遊動線にすると家事の際の移動がコンパクトにまとまり家事の効率を高めることができます。

移動の利便性と収納力を両立させる

ただし、必ずしも「キッチン」と「洗面室」「浴室」をつなげる回遊動線がいい経路になるとは言えません。

実は間取りによってはキッチンの壁をあえて行き止まりにして回遊させない方がいいケースもあります。

キッチンなどの大容量の収納量が必要となる間取りでは、あえて行き止まりをつくることで収納スペースを確保することができるからです。

またキッチンに侵入できる経路を増やしてしまうと、複数箇所からキッチン内に侵入できるようになってしまうので、キッチン内が落ち着かないものとなってしまったり、キッチン内での思わぬ衝突事故が起こってしまうリスクも上がります。

特に小さなお子様がいらっしゃるご家庭では、油物などをしているときに家の中を駆けずり回ってキッチンに侵入してしまい衝突し、思わぬところで命の危険に関わる事故を引き起こすこともありますので、回遊は計画的につくる必要があります。

悪い回遊動線:大きくまわる回遊動線

フロア全体を大きくまわる回誘導線は悪い回遊動線になりやすいので注意してください。

大きくまわる回誘導線は回誘導線の良さである「楽な移動」「近道」をあまり活かすことができず、配置の仕方によっては家全体が迷路のようになってしまったり、落ち着かない雰囲気となってしまうこともあります。

また、大きくまわる回遊動線はケースによってはあまり回遊させる意味がない、たいして使えない回遊動線になってしまうことも多いため設計の難易度は高いものだと思ってください。

移動はしやすいけれども収納量が足りない

回遊動線をメインにした家でよく起こりがちですが、通路や動線ばかりで十分な収納が確保できないといった問題が起こりがちな家になってしまう傾向があります。

確かに動線そのものは楽だし、どこにでも簡単に移動ができる動線は気持ちの良いものです。

ですがそれとは引き換えにで十分な収納量が確保できなくなってしまうのです。

また、動線が便利になると同時にプライバシーを確保することも難しくなってしまうことも多く、家の中のどこにいても声が聞こえてきたり、騒々しい家になってしまいますので、大きくまわる回遊動線を作ろうとしている方は注意してください。

回遊動線をつくるときは必ず理想的な動線を考えることから始める

新築の一戸建て住宅で回遊動線をつくるときは、実際にその家で生活している暮らしの光景を思い浮かべて理想的な動線にするにはどのような動線が必要かを考えることから始めてください。

回遊動線のある家にしたい。その気持ちはわかります。

ただ家づくりでは、回遊動線をつくることそのものが目的になってしまうと、無駄な廊下が増えてしまったり居住スペースが狭くなってしまったり、収納できる場所が限られてしまったり住まいにとって不都合なことが起きてしまいます。

回遊できる動線を作ったものの、そこで生活し始めてからあまりいい動線として機能しないし必要ない動線になってしまうこともありますから、常に無駄な動線とならないよう常に意識しなければなりません。

回遊動線をつくるとその分インテリアの配置スペースであったり、収納できるスペースが削られてしまいますからできるだけ必要のないところには回遊できる場所を作らないほうがいいのです。

回遊できる場所を作るのであれば、その分部屋の広さを大きくしたり、収納量を多くしたり、日々の暮らしの中で必要となるものを作ったほうが後々満足度の高い家にすることができるように思います。

なかには回遊動線を作りたいからとわざわざ必要のない壁をつくることを検討される方もいらっしゃいますが、広い家であればまだしも一般的な広さの家はもちろん狭い家ではあまりお勧めしません。

ただ、もしも回遊動線をつくるために壁をつくるのであれば、壁面を収納スペースとして活用できるような間取りにすると便利になると思います。

回遊動線をつくるときは必ず、実際にそこの家に住み始めてから暮らしの中でどのような動きをするのか、家の中の動線を様々なケースに当てはめて考えて作っていくようにしてください。

回遊動線の間取りのアイデア

最後に回遊動線を取り入れるアイデアについて3例ほどお話ししていきます。

【回遊動線のアイデア】

1:家事を楽にする回遊動線のアイデア
2:移動が楽になる回遊動線のアイデア
3:暮らしを便利にする回遊動線のアイデア

1:家事を楽にする回遊動線のアイデア

キッチンと洗面室をウォークスルークローゼットでつなぐ

「キッチン」と洗濯機が置かれている「洗面室」を回遊動線でつなぐと回遊動線の良さがいきやすいとお話ししましたが、「キッチン」と「洗面室」の中間に「ウォークスルー型のクローゼット」を配置すると、家事がより楽になりますし双方の部屋のプライバシー性も高めることができます。

「キッチン」と「洗面室」を回遊動線で繋いだ場合に問題になるのが「洗面脱衣室(洗面室)」を使っているときのプライバシーの問題ですが、「キッチン」と「洗面室」の間に「ウォークスルー型のクローゼット」を挟むことでそれぞれの部屋に抜けるためにワンクッション入るのでプライバシーが保たれるようになります。

また「キッチン」と「洗面室」の間に「ウォークスルークローゼット」を配置することで家事の連携が非常に良くなり、家事の合間にアイロンがけをしたり、中にちょっとした「ユーティリティスペース(家事室)」を備え付ければ洗濯物を畳んだりをすることができ家事効率がぐんとアップします、

2:移動が楽になる回遊導線のアイデア

思い切ってあらゆるところを回遊できる動線にする

思い切って家の中のあらゆるところをするすると抜けられるような回遊動線にしてしまうというアイデアもあります。

つまり一つの家の中に複数の回遊動線を用意するのです。

動線が複数あれば部屋から部屋へ移動する際の選択肢も増え、最短距離で家の中を移動できるようになっていきます。

回遊動線をたくさん作ると家事も楽になりますし、部屋から部屋への移動も楽になる家になっていくのです。

ただし、回遊動線をたくさん作ると収納できるスペースが不足してしまったり、無駄なスペースが増えてしまったりしますので、十分に間取りを検討し、あくまで主役ではなく、脇役として回遊できる動線を確保すると言った考え方が大切になります。

3:暮らしを便利にする回遊動線のアイデア

回遊動線の一部に外部を含める

回遊動線は何も家の中だけの動線ではありません。

外部の「中庭」や「バルコニー」を回遊動線として含める方法もあります。

例えば「キッチン」や「洗面室」と生活の中心となる「リビング」を外部空間の「バルコニー」や「中庭」で挟む間取りにすると、適度な距離感を保ちながらも動線そのものが良くなり暮らしていて快適な間取りにすることができます。

間に外部の空間を挟むことでお互いの空間の生活音が聞こえづらくなると言ったように、防音効果も期待できますので回遊動線を検討している方は一考して見てください。

まとめ

今回の記事では使える回遊動線にするプランニングのコツについてお伝えしてきました。

回遊動線を取り入れると複数の出入口が必要となるので、収納スペースや家具をおける壁が減ってしまったり侵入箇所が増えるためプライバシーの確保が必要になる特殊な間取りになります。

壁が減ることで家のバランスが悪くなり、耐震性や耐力壁を意識する必要が出てきますし、無駄な通路ができてしまい建物の面積が大きくなったりします。

一方で生活の中にうまく取り入れれば行き止まりがなくそれぞれの部屋に円滑に移動することができたり、家事効率がアップし時間短縮にもつながり、通路を通る時の家族の渋滞を緩和することができます。

回遊動線は、便利な面も多いですが、取り入れ方によっては無駄な動線となってしまったり、必要のないスペースになってしまったりするので取り入れるときは十分に検討してから間取りに取り入れるようにしてください。



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