半分にシワ加工を施した、立体漉き和紙を使った照明のご紹介です。
立体漉き和紙は鳥取県にある谷口青谷和紙でつくられており、和紙そのものを球体に3次元で漉き上げる革新的な技術であり、国内唯一谷口青谷和紙で使われている技法でもあります。
その技法は、一切のつなぎ目がなく均一に漉かれ自由曲線を持つことが特徴であり、蚕(かいこ)の繭(まゆ)のように穏やかで、自然な質感、また積層した楮(こうぞ)の繊維を透過する明かりは柔らかく温かであり、空間に和みと寛ぎをもたらしてくれる美しさを保っています。
この自然な質感は一般的なつくり方である和紙を繋ぎ合わせるものではなく、和紙自体を立体的に漉くことではじめて美しい造形物がうまれるようです。
そんな技法を使い、佐藤オオキ氏率いるnendoと共につくり上げたのが今回紹介する和紙で出来た照明「semi-wrinkle washi」です。
そして上の写真が今回紹介する立体漉き和紙の技術を使った照明「semi-wrinkle washi」です。
その名前の通り「semi(半分)」が「wrinkle(シワ)」 加工されている「washi(和紙)」となっています。
なぜシワ加工を施したのかというと、なんでも皮肉なことに、和紙自体を立体的に漉く立体漉き和紙の技術を使うと均一過ぎてしまい、一見するとプラスチックや白いガラスと間違われる可能性があり紙の特性を活かすために、こんにゃく芋で揉み込んだシワ加工を施したとのことです。
しかし、全てシワ加工を施したところ今度は立体漉きであるということがわからなくなってしまう問題に直面してしまったそうで、それならと半分だけシワ加工を施したところ双方の利点が重なりこのデザインに落ち着いたそうです。
半分がシワ、半分が立体漉き和紙の技術を利用した美しい造形物。この双方の対比がまたこの作品をより鮮やかに彩っています。
シワの入れ方にも工夫を施しており、綺麗な造形物である下へ向かうに従い鮮やかなグラデーション状になじませていったのだそう。
またシワによって全体のサイズが縮んでしまうため、最終形状から収縮率を逆算して成形型の形状を決定したそう。
細部に至るまで計算しつくされつくられた照明ということになります。
シワ加工を施すことで紙ならではの質感を見事に表現していることがよくわかります。
下方に向かい淡いグラデーションを描いている部分も絶妙なデザインといえます。
シワの施し方を少しかえるだけでこんなにがらっと雰囲気が変わります。
同じシワを施すことは不可能であり、これは同時に一品ものということを意味するため、どの「semi-wrinkle washi」も世界でひとつだけの品物ということをさします。
ペンダントライトバージョン、テーブルバージョン、フロアーバージョン等の用意があるそう。これらは独占的に西武百貨店で取扱いがされているようです。
上の写真は天井から吊るすタイプの照明であるペンダントライトのバージョン。
この照明に灯りをともすと、空間にいったいどんな味わいをもたらしてくれるのか・・・とても気になるところです。
くしゅくしゅっと先細っている和紙。この和紙特有のシワがまた、たまりません。
立体漉き和紙ならではの柔らかさ、そしてどことなく凛とした緊張感がよくあらわれています。
写真はフロアランプのもの。きのこのような成形をしており非常に愛着感がもてるデザインとなっています。
素材を活かし、その素材本来の特徴をころすことなくしっかりと活かすデザインは佐藤オオキ氏率いるnendo作品の大きな特徴ですね。
nendoの作品をみていると、「はじめにデザインありき」ではなく、「はじめに素材ありき、デザインはただの魅せ方に過ぎない」と言うことを思い知らされるような気がしてなりません。
semi-wrinkle washiは以下から購入することが出来ます。
価格:35,640円 |
デザイン:semi-wrinkle washi | nendo(http://www.nendo.jp/jp/works/semi-wrinkle-washi/?release)
▼参考:(外部サイト)
nendo forms semi-wrinkle washi lamp using 3D paper moulding