2012年9月、スターバックスでは世界初となる、期間限定のポップアップストアである「Starbucks Espresso Journey(スターバックス エスプレッソ ジャーニー)」が、東京は表参道にオープンしました。
期間限定店舗のため、現在はクローズしてしまっておりますが、コーヒーの中でもエスプレッソに限定した特殊なコンセプト、またその提供スタイルや、まるで図書館のような内装、すべてが今までのスターバックスの常識を逸している面白いつくりとなっています。
場所は、裏原宿に当たる通りのBA-TSU ART GALLERY。普段はギャラリーやイベントスペースとして使用されています。2階建てのこの建物を一ヶ月の間限定でかり、エスプレッソドリンク限定の特殊なコンセプトによる試みが行われました。
店内に入ると、従来のスターバックス店舗のイメージとは程遠い、図書館のような異質な空間が広がります。なんでも、美しい曲線の白い壁は柔らかいミルクのまろやかさを表現しているそう。
エスプレッソ限定でありながらも、注文できるコーヒーの種類は9種類。そのうち2種類は限定のスペシャルメニュー「ダブルショート クラシック ラテ」「ダブルショート クラシック カプチーノ」となっています。
来場者は歩き回りながら、本棚に並んだ本を自由に手に取り、中に書かれている情報を見比べながら、まるで一冊の本を選ぶようにスターバックスのドリンクと接することになります。
これは知っているようで意外と知らないスターバックスのエスプレッソドリンクの魅力を紹介する役割も兼ね備えています。
壁に敷き詰められた本の数は約14000冊。小さな図書館と言っても差し支えないほどの数です。この店舗の完成に要した日は2日間。スターバックスの世界初の試みに対する意気込みを感じます。
Starbucks Espresso Journey(スターバックス エスプレッソ ジャーニー)の来場者はこの入り口から入場することになります。白を基調とした本棚に綺麗に並べられた本がとても美しいつくりとなっています。
入り口付近は薄い色で満たされており奥にいけばいくほど濃い色になっていくという色のグラデーションは、9種類のフレーバーを意味しています。本の色と同じように色が濃くなるほど、味も濃くなるというようにつくり込まれています。
例えば一番薄い色は「ホワイト モカ(ホイップクリーム+スチームミルク+エスプレッソ+ホワイトチョコレートシロップ)」そして一番濃い色は「カフェ アメリカーノ(ホットウォーター+エスプレッソ)」となるような形です。
2階建ての建物は吹き抜けとなっており、入り口付近を見上げても本がぎっしり。スターバックスが持つエスプレッソの拘りを表現しているだけあって、来場者の手に触れることのないであろう細部までつくり込まれています。
奥から入り口付近を眺めるとまるで書斎のようにも感じられます。スターバックスの持つコーヒーへのこだわりを本で表現しているだけあって、圧倒的なスケールの世界観が構築されています。
ゆっくりと一冊の本を選ぶように一杯のエスプレッソドリンクを選び、静かに物語の世界に入り込むような感覚でエスプレッソドリンクを堪能する。
そして、自分にとって大切な一冊の本のように、自分だけの大切な一杯と出会う場所。それがStarbucks Espresso Journey(スターバックス エスプレッソ ジャーニー)をデザインしたnendoの佐藤オオキ氏の思いです。
佐藤ナオキ氏は本とエスプレッソに、その世界にひたれるという点において親和性を感じているようで、それを表現したのがStarbucks Espresso Journey(スターバックス エスプレッソ ジャーニー)ということになります。
注文の仕方も特殊。書棚の本から一冊の本を選びます。
次に、なかに書かれてある情報をもとに、自分にあったエスプレッソを選びます。
エスプレッソの数は以上の9種類。一冊ごとにエスプレッソに関する情報(こだわりやレシピなどのストーリー)が細かく記載されており、好みや気分に合わせて自分だけの一杯に出逢うことができます。
お気に入りのドリンクが決まったら、その本を直接カウンターに持っていくと、本自体がオーダーとなり本に書かれたドリンクが提供されるというスタイル。遊び心が溢れており、非常にユニークです。
そして、嬉しいことに選んだブックカバーはドリンクと一緒に持ち帰ることができます。
さらにこのブックカバーは裏面の点線に沿って切り抜けば、タンブラーの台紙として使うこともできます。
奥にあるスターバックスのロゴが書かれているあたりがカウンターです。そこにお気に入りの一冊を持っていくと、一杯のコーヒーが提供される「粋」なオーダーとなっています。
スターバックスの店員さんが顔を出しています。一連のオーダー方法によりいつもとかわった体験をし「一杯」を大切に、そして楽しむことが出来そうです。
実際に購入するとこんな感じに。一杯の価格は一律で500円。一律料金と言うのもひとつの魅力かもしれません。
本とエスプレッソの親和性。考えてみると、エスプレッソの苦みと私たちの日常、そしてそれに連なる本の中の物語と言うものは意外なことにつながりをもっていると思えます。
オーダーは一階部分で出来ますが、2階は限定グッズの販売、本格的なエスプレッソマシンを使用したバリスタ体験(有料:500円・予約制)、さらにスターバックス ヴィアのフレーバーコーヒータイプのティスティングができるようになっています。
こちらは2階の様子。白を基調としていますが、デザインの統一性を大事にしながらも一階とは印象がかわっています。
バリスタ体験では、なんとスターバックスの緑色のエプロンを巻いて体験することができるようで、スタッフ気分を味わうことが出来ます。スターバックス好きにはたまらない体験となりそうですね。
期間限定というのがもったいないくらい、細部にわたりつくり込まれています。
2階には椅子と簡単なテーブルも設置してあり、一階で買ったエスプレッソをここでゆっくりと味わうことも出来るようです。自然光が入り込み美しいですね。
2階部分から一階部分を覗くとこんなに素敵な空間が。背の高さがそろえ並べられた本がコンセプトと重なり、いいインテリアとなって空間自体に深い味わいをもたらしています。
選んだ本によってドリンクが提供されるという、斬新なオーダースタイルにも驚いてしまいますが、ただ、その空間に身をひたすだけでも心が洗われるように気持ちのいい空間となっています。
なお、こうしたスターバックスのポップアップストアは今後も続いていくようでこれからの動きに目を離すことができません。
▼参考:(外部サイト)
・nendo | サクヒン:Starbucks Espresso Journey(http://www.nendo.jp/en/works/starbucks-espresso-journey-2/?erelease)
・japan-architects.com: nendoによるスターバックス初のポップアップストア「Starbucks Espresso Journey」