スキップフロアの間取りを採用すると、非常にアクティブな空間に仕上がる半面、スキップフロアの間取りを採用するにはいくつもの注意点があります。
現に、この記事を書いている現在、検索エンジンでスキップフロアと検索をすると「スキップフロア 後悔」と予測変換されるほど、スキップフロアについては賛否が分かれる間取りとなっています。
その理由のひとつとして考えられるのは、スキップフロアは空間を横にではなく、縦に活用する非常にユニークな間取りのため、空間を把握するのが難しく、スキップフロアの間取りを空間に取り入れるには、設計士にもそれなりの腕、つまり知識と経験と技術が必要となることからだと思います。
事実、スキップフロアをむやみやたらに採用してしまうと、実際に住んでみると非常に使い勝手の悪い間取りになってしまい、スキップフロアなんて採用しなければ良かった・・・という事例も実際にあがってきています(スキップフロアを中途半端に取り入れると、微妙な段差による暮らしにくい空間が出来上がります)。
設計士さえも困らせるスキップフロア・・・それだけスキップフロアは、難しい間取りということをまずご理解ください。しかしうまく空間に取り入れれば、とても動的な面白い空間を演出することが出来ます。
そこで、ここではスキップフロアの特徴をまずお話し、それからスキップフロアのメリットとデメリットを理解して頂き、スキップフロアを採用する上での注意点や、スキップフロアの活かし方、スキップフロアの活用事例をお話していこうと思います。
この記事を読めば、スキップフロアの良いところも悪いところも全てを理解して頂けると思います。
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どのような家の形はお金がかかり、どのような形にすればお金がかからないのか、またそれぞれの家の形の特徴については「家づくりで覚えておきたい家の形とお金のかかる家とかからない家の違い」をご覧ください。
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Contents
スキップフロアとは
スキップフロアとは、フロアの高さを半階層ずらして、中階層をつくる間取りのことを言います。スキップフロアは「小上がり」や「ステップフロア」と呼ばれることもあります。
スキップフロアとは段差を活かす間取りのことで、一般的には1フロアに、数段ほどの階段をつくり、高さを変化させることで、スキップフロアをつくります。
スキップフロアは、例えば1階と2階の間につくった場合、ふたつの階の中階層にあたるので、中2階と呼ばれることもあります。(半分地下に埋まっている間取りは半地下と呼ばれます)
ただし、2階とあまり高さがかわらない場所に、スキップフロアの間取りが採用されていたりと、高さの設定は様々あります。1つのレベル(階層)に、高さをズラして設置した間取りをスキップフロアと呼ぶと言った方がしっくり来るかもしれません。
スキップフロアの特徴
スキップフロアの特徴は、横ではなく縦の空間を活用する点にあります。一般的な間取りが、横に空間を活用するのに対して、縦の空間を有効活用できるのがスキップフロアの大きな特徴です。
つまり、空間を壁で仕切ることなく、段差を加えることで、ひとつの空間に緩やかな繋がりを持たせた、連続性のあるもうひとつの空間を作ることができます。
一般的な間取りは、間に廊下を挟むことによって、部屋を仕切りますが、スキップフロアの間取りでは、段差によって間仕切りを行なえるため、廊下を設置する必要はありません。廊下をつくらずにすむため、その分、部屋や収納スペースを多くとることが出来るので、建築面積が限られている狭小住宅では、かなり有効的な間取りとなります。
縦の空間の高さをズラしているため、視線の抜けも良く、空間を広く見せられる特徴も持っています。また、縦の空間を有効的に使うことで、内部に立体的な臨場感が生まれ、ズレた床によって、空間全体に流動性がうまれます。
つまり、無駄になりがちな縦の隙間(空間)を、スキップフロアを採用することで、無駄なく活用することが出来ます。
また、通常の間取りは平面で考えますが、スキップフロアの間取りは断面で考えます。そのため傾斜地などに建てる場合は、平面で考えるよりもむしろ断面で考えるスキップフロアの方が都合の良いことがあります。
一般的に、家は形が複雑になる程、価格が高くなります。
できるだけコストを抑えて、注文住宅で家づくりをされたい方は下記の記事を参考にしてください。
スキップフロアのメリット
では、スキップフロアには具体的には一体どんなメリットがあるのでしょうか。スキップフロアの間取りを採用することでの13のメリットを下記に記していくこととします。
1:立体的なつながりがうまれる
スキップフロアをうまく活用すると、立体的なつながりを持たせることが出来ます。
一般的な間取りが、例えば廊下などにより、平面で横に空間を繋ぐのに対して、スキップフロアでは、高低差により、ゆるやかに縦に繋がりを持たせることが出来ます。
高低差が出る為に、使える床を減らすことなく、実面積以上の広がり感をつくれます。
2:空間が動的になり遊び心溢れる空間に仕上がる
スキップフロアの間取りを採用すると、空間が活動的になります。高低差をうまく利用することで、ちょっとした隠れ家にすることも出来たり、室内を活気づけることが出来ます。
つまり、スキップフロアの間取りを採用することで、空間に変化を加え、楽しく遊び心の溢れる空間づくりをすることが出来ます。
3:空間を有効的に使うことが出来る
スキップフロアの間取りをうまく採用すると、上下の空間を活用することで、狭い敷地でも広い空間を演出することができます。
また、スキップフロアの間取りは、扉や壁などの仕切りをつくることなく、空間を仕切ることが出来るので、ちょっとしたデッドスペースでも高低差をつけ、無駄なく有効に使うことが出来ます。
4:高低差のある土地にマッチする
スキップフロアの間取りは段差により、空間を仕切ることができるため、例えば傾斜地に家を建てる時など、高低差がある土地に建物を建てる場合、スキップフロアの間取りを採用すると効果的です。
高低差のある土地でも、スキップフロアを採用することでその土地に合わせた、土地を最大限有効活用した家を建てることが出来ます。
5:視線の抜けが良く空間に広がりを持たせることが出来る
スキップフロアの間取りは、空間を横に伸ばすのではなく、縦に伸ばす間取りの為、視線の抜けがよく、実際の床面積よりも、広く感じることが出来ます。
吹き抜けは、空間を広げている分、気積量が増えるため、空調などが効きにくく、ランニングコストがかさみますが、スキップフロアの間取りを採用すれば、吹き抜けよりも気積量が少ないため、ランニングコストを抑えることが出来ます。
6:「蔵」との相性が良い
天井が低い「蔵(収納庫)」を、スキップフロアと一緒に設置すれば、空間的にも遊びが生まれますし、固定資産税に有利になります。
建築基準法で、床面積に入らないように工夫(高さを1.4m以下に抑えることで、)をすることで、延べ床面積に算入しなくても良くなるので、固定資産税にも有利になります。※ただし各自治体への確認が必要です。
また容積率に余裕のない土地では、蔵を設置することで、固定資産税をかけることなく、実質的な床面積を増やすことが出来ます。
さらに、スキップフロアは、蔵との相性が非常に良いので、蔵をつくることで居住スペースを削ることなく自由に収納面積を増やすことが出来ます。
※考え方としてはロフトと一緒です。名前が「スキップフロアの蔵」となっているだけで法規的にロフトと変わりありません。ロフトについては「家づくりでロフトを設置するメリットとデメリット」を参考にしてください。
ハウスメーカーでの家づくりを検討している場合、ミサワホームが「蔵のある家」づくりを得意としています。
ただし、実際の使い勝手は、住む人との相性にもよりますので本当に必要かどうかを、様々な事例と照らし合わせた上で、しっかりと比較検討する必要があると思います。
ミサワホームを含む住宅カタログは、下記リンク先から一括して請求することができるので必要に応じて請求してください。
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7:風通しが良く日当りがよい
段差を上手に利用し、窓を適切な位置に配置すれば、自然と風通しがよくなります。
またスキップフロアは壁ではなく、段差によって部屋を仕切るため、ずらした床の間から光を取り入れる工夫も可能であったり、日当りのよい室内空間をつくることができます。
特に南側の階高を上げれば、家の置くまで光を届けることが出来ます。
8:緩やかに空間をわけることができる
スキップフロアの間取りを取り入れることで、家族との繋がりを感じられる、室内空間にすることができます。
例えばリビングひとつとってみても、スキップフロアを取り入れ、少し高い位置にキッチンをおくことで、リビング全体を見渡しながら料理が出来るキッチンにすることも出来ます。
さらに高くなった分だけ、床下に収納スペースをつくることも出来ます。
スキップフロアは、開放的な空間に、段差をつくることで緩やかに連続した空間を、仕切れる間取りです。
9:廊下がないプランニングが可能で無駄がなくなる
スキップフロアの間取りは廊下をつくることなく、部屋を分けられる特徴があります。スキップフロアを利用すれば、本来ならば廊下にあてるためのスペースを部屋や収納スペースにできるので、無駄のないプランニングをすることが可能です。
どうしても出来てしまう、空間のデッドスペースも段差により有効活用できます。また、余談ですが、階段吹き抜けを小さくすることも可能となります。
10:法規をかわすことができる
地域によって違いはあるものの、防火地域、準防火地域において、ロフト付き2階とすることにより、要求される防火のグレードをワンランク下げることが出来るほか、一種高度などの厳しい斜線を、階層の変化で交わすことが出来ます。
11:活動を促す家になる
間仕切りを使用せずに空間をわけられるため、非常に活動的な空間が出来上がります。また、部屋を移動する時に、ドアや扉をあける一手間がなくなるので、部屋間の移動が非常に楽になります。
その結果、シームレスな流動性のある、活動的な室内空間が出来上がります。
またズレた床により、相手との適度な距離をつくることが出来る効果もある他、段差により住む人の活動を促すことが期待できますし、スキップフロアを採用することによってうまれた段差に、腰掛けたり、たたずんだりすることで、コミュニケーションを促すきっかけの場となったりします。
12:狭小住宅と相性が良い
スキップフロアは、狭小住宅と相性が良い間取りです。
狭小住宅では、限られた土地面積のため、横の間取りは限定されがちです。ですが、スキップフロアの間取りを採用することで、狭小住宅の限られた床面積の中で、天地を高くとり、空間に広がりを持たせた開放的な空間づくりが出来ます。
例えば、スキップフロアの高さを1mで設定したとするならば、リビングの高さを1m高く出来ます。
吹き抜けの間取りと、似ていますが、吹き抜けにした場合、一般的に天井の高さは5〜6mになるため、開放的な半面、気積量が多くなるため、空調などによるランニングコストが高くなります。
これがスキップフロアを採用した場合、天井の高さは3.5mから4mほどで抑えることが出来るので、吹き抜けと比べるとランニングコストを安く抑えることが出来ます。
【気積量=床面積×高さのこと。一般的には「空間」と同義】
13:収納スペースを増やせる
例えば、段差をつくった床下に収納スペースをつくったり、ちょっとしたデッドスペースをスキップフロアによって活かし、収納スペースを増やすことが出来ます。
一般的な住宅では、床面積の9%前後が収納スペースであることが多いですが、実際は15%程度必要であると言われています。その点、スキップフロアを活用した蔵などをつくり、収納スペースをつくれば、無駄なく無理なく、収納スペースを増やすことができます。
スキップフロアのデメリット
では次に、スキップフロアを採用することによって、どのようなデメリットが生まれてくるのでしょうか。スキップフロアの間取りを採用し、後々後悔しない為にも、デメリットもしっかりと把握しておくことが大事です。
1:手間と材料が必要なため建築コストがかかる
スキップフロアは、普通の家をつくるよりも手間も材料も多く必要になるので、建築コストがその分高くなります。スキップフロアの間取りは、コストを抑えた家づくりをしたい人にとっては、不向きな間取りになるので選択肢から外した方が良いでしょう。
2:設計者によって当たり外れの多い間取りになる
スキップフロアは、非常に難しい間取りであることを、前提として知っておく必要があります。スキップフロアを採用すると、家全体の構造を考える上でも複雑な計算が必要となります。
また、それにプラスして耐震等級をクリアする必要もある為、スキップフロアに精通した熟練の設計士に依頼する必要があります。
何も考えずに、ただ空間を有効活用したいからという理由でつくったスキップフロアは、逆に無駄な空間をうみます。スキップフロアをつくるためにはしっかりと考え、計算し、間取りに取り入れなくてはなりません。
スキップフロアの間取りを得意とする設計事務所や、スキップフロアの相談は、まずは注文住宅相談サービスを利用して行なうと良いでしょう
3:施工業者が限られる
スキップフロアの間取りをつくるには、実際に施工する大工の腕も必要になります。実績のある、スキップフロアの間取りが得意な施工業者に依頼する必要があります。
工事によっては、スキップフロアが1階と見なされることにより固定資産税があがってしまうことも考えられるので慎重に施工業者を選ぶ必要があります(自治体によるもの、工事不良によるもの、あらゆるケースがあり理由は様々。詳しくは、後述します)。
4:光熱費がかかる
当たり前ですが、ひと部屋当りの気積量が多くなるのですから、その分、光熱費はかさみます。ただし吹き抜けの項でも記しましたが、現在の住宅の性能は断熱性と気密性に優れている為、そこまで気にする必要はないかとは思います。
5:壁がないため音が筒抜けになる
スキップフロアは、壁をつくることなく空間を縦に広げる間取りですから、吹き抜けの間取りのように音はあらゆるところに筒抜けになります。
つまりスキップフロアの家は、大きなワンルームのようなものです。遮音性が低いので工夫をしないと、家中のあらゆる音が集まってきてしまい、プライベートな時間を確保することは難しくなります。
遮音カーテンなどを使用すれば、ある程度音は抑えられますが、遮音カーテンを多用すると、スキップフロアのメリットを打ち消すことになるので注意が必要です。
6:エレベーターを設置しにくい
スキップフロアの家を採用する場合、エレベーターの設置はほぼ不可能となります。なぜエレベーターの設置が難しいのかというと、スキップフロアの間取りは壁が少ないためです。
エレベーターを設置する場合、設置する場所の壁面を、予め間取りのプランに組み込んでおく必要がありますので、よく検討しなくてはなりません。
また、エレベーターをスキップフロアで設置するときは、通過型のエレベーターに限ります。
家全体がスキップフロアで構成された間取りになると、ほぼ100%の確立でエレベーターを設置することが難しくなります。
将来的にエレベーターを設置する場合、リフォームでは対応できず、リノベーションを行い間取りに変更を加えることが必要となりますが、設計によっては、困難な場合もあるので、将来的にエレベーターの設置を検討している場合は避けたほうがいいと思います。
7:設置個所によって場所をとる
あまり知られていないのですが、空間全体に面白さをだすためには、それなりの広さ(面積)が必要になります。
収納スペースとしてだけ、スキップフロアを採用するのなら話は別で、簡単で場所もとらないのですが、面白さを押し出した空間にするためには、スキップフロアと他のフロアとの、緩やかな繋がりを考えなくてはならないので、場所が限られ、また、それなりの広さを伴う場所が必要となってきます。
矛盾しているようですが、スキップフロアは無駄をなくす間取りである半面、無駄も生まれやすい間取りなので注意が必要です。
8:バリアフリーではない
当たり前ですが、スキップフロアはあえて段差をつくるのですから、バリアフリーではありません。小さなお子様がいる過程では、楽しく過ごすことが出来る半面、年配の方にとっては段差が多いだけでデメリットとなり得ます。
2世帯住宅などでスキップフロアを採用する場合、音の他、段差にも注意する必要があります。設計の段階から、バリアフリーで生活できるフロアを用意しておくなどの工夫が必要になります。
9:間取りプランによっては逆に不便になる
スキップフロアは、段差を利用することでアクティブな空間を生み出すことが出来ますが、間取りによっては、逆に不便となることもあるので注意が必要です。
ただし、スキップフロアの間取りは、生活スタイルによって向き不向きや、好みが、大きく分かれますので、どのような間取りが不便になるのかは、具体的には言うことができません。なのでしっかりとそれぞれの生活スタイルを見直した上で、スキップフロアを採用する必要があります。
10:空間の把握が難しい
スキップフロアの間取りは、平面図だと非常に空間の把握が難しいため、模型なしだと施主はまず理解が不能な家が出来上がります。
スキップフロアを採用する場合は模型をつくり、確認しながら家づくりを進めていかないと、後でとんでもないことになりますので注意してください。
11:家相が不明
スキップフロアは昔からある形式ではないため家相が不明なところがあります。風水などによる、家相を気にする人はスキップフロアの間取りを避けた方がいいでしょう。
家の形と風水の関係についてはONE PROJECT内の記事「家づくりで覚えておきたい家の形とお金のかかる家とかからない家の違い」内の「L字型やコの字型の家のメリット」を参考にしてください。
12:長期有料住宅には対応しにくい
デジタル大辞泉によれば、長期優良住宅とは以下のような定義付けがされています。
耐久・耐震・省エネ性に優れ、数世代にわたって暮らせる住宅のことで、長期優良住宅促進法の認定基準を満たす住宅を取得した場合、住宅ローン減税の拡充・登録免許税の税率引き下げ・不動産取得税の控除額拡充・固定資産税減額期間の延長などの減税措置を受けることができる
スキップフロアの間取りを採用すると、これら長期優良住宅には対応しにくいという側面があります。長期優良住宅について詳しくは、ONE PROJECT内の「長期優良住宅とは?長期優良住宅のメリットとデメリット認定基準や注意点」を参考にしてください。
13:部屋数が限定される
スキップフロアの間取りを採用すると、部屋の数が限定されます。つまりスキップフロアは、もともと空間のつながりを持たせる構成手法であるため、部屋数の多い間取りには対応しにくいという側面があります。
14:空間の移動が面倒くさい時もある
スキップフロアの特徴は、段差を設けることにより空間を仕切ることにあるのですが、間取りによっては、フロアの階層が複雑になってしまい、逆にそれがストレスをうんでしまうこともあります。
毎日、どこの部屋に移動するのにも、階段の昇り降りが必要となるのは、意外ときついものです。見学会や内覧会などの短時間であれば、メリットばかりが際立ちますが、実際にスキップフロアに長い期間住んでみると、段差がストレスになることが多いようです。
トイレに行くにも、キッチンに行くにも、寝室へ行くにも、どこの部屋に行くのにも段差がある・・・人によっては、それが想像以上にストレスをうみます。
特に年を取って足腰が悪くなったり、けがをしたりすると、スキップフロアのメリットが途端にデメリットになります。
スキップフロアを検討する際は、必ず様々な事例に触れて頂くことをお勧めします。
家は一度建ててしまうと、間取りの変更は困難になりますから、実際に住んでいる人などの事例を参考にしながら、比較検討していくことを私はすすめています。
住宅カタログには実際に住んでいる人の事例もたくさん載っていますので、カタログを参考にして頂くのもいいと思います。
ただし住宅会社のカタログにはメリット面ばかりしか載っていないこともあるので、その点を十分に承知した上で参考にするといいと思います。
カタログを参考にして家づくりを進めていく方法については、下記の記事でまとめていますので参考にしてください。
スキップフロアの注意点
これまで、スキップフロアのメリットとデメリットをお話してきました。ですが、スキップフロアの間取りを採用するうえで他にも知っておきたいことがあります。それがこれからお話する、スキップフロアの注意点です。
家を建てる場所によっては1階にカウントされる
基本的に、家を建てるには建築基準法に適合している、という証明書を貰わなければ建てることが出来ません。そして、家を建てて良いかどうかの審査は、日本全国全て同じ判断で決められているのではなく、行政の判断次第で法律の解釈が違ってくるという理由により、各行政の判断で決められています。
家を建てる場所によっては、スキップフロアも1つの階に含めるという判断をする自治体もあるので、注意が必要です。つまりスキップフロアをつくることが出来ず、2階建ての建物に、スキップフロアで中2階をつくれば、3階の建物と見なされるということになります。
だからこそ、スキップフロアの間取りの家を建てる時には、家を建てる地域で実績のある会社に依頼した方が安心なのです。
建築家の腕に左右される
何度も言いますが、スキップフロアは設計者の腕が問われる間取りです。
むやみやたらにスキップフロアを多用すると、逆に不便な間取りになってしまいますし、構造上複雑な計算が必要になるため、スキップフロアに精通した設計士さんに依頼する必要があります。
また模型をつくらない設計士さんに依頼する場合は、スキップフロアは避けた方が良いでしょう。理由はスキップフロアの間取りは、空間の把握が非常に難しく、素人が平面で理解することは、ほぼ不可能だからです。
スキップフロアが良いかどうかは住む人に左右される
スキップフロアは好みが分かれる間取りです。また家を建てる時は、家族との距離を身近に感じられるし、子供の遊び場ともなるし、使い勝手も思っていたほど悪くない、というように思われるかもしれませんが、子供が大きくなって自分の部屋を持ちたくなったり、年を取って足腰が悪くなると、逆に段差があることがデメリットとなってしまいます。
長期的なスパンでとらえた、スキップフロアの間取りを考える必要があります。
Q:スキップフロアが得意な住宅会社や設計士ってどうやって探せばいいの?
なかなか難しい質問ですが、まずは住宅会社や設計士にどれくらいのスキップフロアの設計実績があるのかを見るといいと思います。
その際は、ホームページや雑誌などのあらゆる媒体を参考にして頂くといいと思います。
カタログを請求する場合は、下記の一括資料請求サービスを利用してもいいでしょう。
また、実際にプランを依頼して、反応を見る方法もあります。
設計事務所の場合は初めのラフプランは無料で行ってくれることが多いですが、2回目以降の打ち合わせはお金がかかることがほとんどですので注意してください。
ネットのサービスを利用して、複数の住宅会社に一括して依頼するのもいいと思います。
下記のサービスなどを利用すれば、複数社に一括して依頼できるので、比較検討がしやすくなると思います。
>>>注文住宅の依頼先探しや、見積もり、プランの一括依頼はこちらのページで詳細を確認していただけます(プランの依頼や見積もり依頼は、無料で行えます)。
プライバシーを確保することが難しい
家づくりにおいてプライバシーを確保することをひとつの条件としている場合、スキップフロアは採用しない方が良いでしょう。
スキップフロアは空間に繋がりを持たせる、空間の連続性により成り立つ間取りです。
そのため、家族との距離が近く、コミュニケーションがとりやすい半面、プライバシーの確保という意味では非常に難しい側面があります。
設計に時間をかけられない場合
例えばハウスメーカーに依頼する時など、熟考せずに短期間で家を建てる場合、あまりスキップフロアはお勧めしません。特に慣れないハウスメーカーに依頼すると、思い通りに建てることが出来ず、後々後悔する確立が高くなります。
スキップフロアの間取りを採用する場合は、じっくりと検討することが出来る設計事務所に依頼する方が得策といえるでしょう。
身体的ハンデがある場合
たとえば、車いすでの生活がはじめから想定される場合などは、スキップフロアの採用は見送った方が良いと思います。スキップフロアはバリアフリーの間取りではない為、身体的ハンデをお持ちの家族がいる場合は、非常に使い勝手の悪い生活空間になってしまいます。
スキップフロアと相性の良い間取りとケース
続いて、スキップフロアと相性のいい間取りとケースについて考えていきたいと思います。スキップフロアと相性の良い間取り、または導入を検討するべきケースを、うまく組み合わせれば、非常に快適で住みやすい間取りになります。
ビルトインガレージ
スキップフロアと相性のいい間取りで思い起こされるのは、やはり一番はビルトインガレージでしょう。
ビルトインガレージをつくるには、それほど天井高は必要ありません。ビルトインガレージは一般的な居室よりも、床面が低く抑えることが出来るため、上の階の天井を高くすることが出来ます。
そのため、ガレージの上にスキップフロアの間取り、例えばリビングなどをつくると非常に開放的になりますし、バランスの良い家をつくることができます。
ビルトインガレージについては、ONE PROJECT内の「ビルトインガレージの家の11のメリットとデメリットと間取りの注意点」をご覧下さい。
吹き抜け
スキップフロアと吹き抜けを組み合わせると、非常に開放的で遊び心の溢れる空間に仕上がります。特に、開放感がある間取りにしたいと考える人にとって、「吹き抜け」と「スキップフロア」の間取りを組み合わせると、非常に面白い空間に仕上がります。
どちらかというと静的な印象がこい吹き抜けに、動的なスキップフロアを加えることによって空間がしまり、非常に面白い空間がうまれます。
また、1階と2階の繋がりがより強く現れ、同時に複数の空間がうまくつながるため、より広く空間を感じ取ることが出来ます。
※吹き抜けについては、ONE PROJECT内の「吹き抜けの家にする12のメリットとデメリット」を参照してください。
床同一のロフト
床と同じ位置につくられたロフト(蔵)とは非常に相性が良いです。
床と同じ高さでつくられたロフトは想像以上に使い勝手が良くなります。ただし法的に許可されるかどうかは地域によるため、確認が必要となります。
スキップフロアはどのような時に有効か
では、続いてスキップフロアはどのような場合、有効的となるのかについて見ていきたいと思います。
傾斜地に建てる場合
スキップフロアの間取りは平面ではなく、断面で考える間取りです。そのため傾斜地に家を建てる場合はむしろ、フラットな構成よりも断面で考えるスキップフロアの方が、都合がいいことがあります。
半地下や地下室がある場合
半地下、または地下室がある場合、スキップフロアは非常に有効的に働きます。スキップフロアを取り入れることで緩やかに繋がりをもちつつも、地下という、断続的な空間を演出することが出来、見た目にもスッキリと収めることが出来ます。
狭小住宅の場合
狭小住宅のように、建物を建てる土地の規模が制限されている場合、スキップフロアの間取りを採用すると、空間を広く見せることが出来るので効果的な間取りをつくることができます。
準防火地域、防火地域制限や厳しい斜線制限がある場合
準防火地域、や防火地域制限、さらに厳しい斜線制限がある場合においてスキップフロアの活用は有効的です。
準防火地域と防火地域制限については東建コーポレーションさんの「防火地域及び準防火地域内の制限 」を、斜線制限についてはONE PROJECT内の「家づくりで知らないと損する8種類の屋根の形とそれぞれの特徴 」ならびに、東建コーポレーションさんの「斜線制限」を参考にしてください。
スキップフロアの活用実例
続いてスキップフロアをどのように活用しているのか、その活用実例を見ていくこととします。
スキップフロアの活用事例1:2段のスキップで繋がるリビングとダイニングキッチン
上の写真は大庭建築設計事務所の軽井沢の家ですが、リビングとダイニングキッチンにゆるやかな繋がりを持たせる為に、スキップフロアの段差を40cm程度に抑えています。
大庭建築設計事務所では、90cmをひとつの基準としているようで、90cm以内であれば緩やかに繋がりが生まれ、それ以上であると空間を区切れると考えているようです。
ソファや段差に座りながら談笑するイメージでつくったそうです。
ダイニングキッチンからリビングを見ると緩やかに空間がつながっていることがよくわかります。
スキップフロアの活用実例2:吹き抜けとスキップフロア
こちらはスキップフロアの間取りに吹き抜けを取り入れた家。吹き抜けと同時採用することにより、視線の抜けが良く、奥行きが生まれ、空間に広がりを感じることが出来る設計となっています。
段差で空間を区切るスキップフロアの特徴を活かし、デッドスペースを無駄なく使用した素晴らしい実例だと思います。
スキップフロアの活用実例3:階段の高さに合わせたベンチとスキップフロア
こちらは、三段の段差で繋がるリビングとダイニングキッチンです。ソファを置く代わりに、スキップフロアの2段目の段差に合わせたベンチを設置しています。
上の写真はロフトからリビングを見た様子。
広さが18坪(62㎡)、さらに第一種低層住居専用地域という、住宅地でも高さ等の制限がもっとも厳しい地域に当たる狭い土地という条件の中建てられた家だそうで、条件の悪い土地でも、スキップフロアを活用することにより広さを感じる設計となっています。
キッチンからリビングを見た様子。料理をしながらでも、子供達に目が届くのはお母さんとして嬉しいですね。
スキップフロアの活用実例4:スケルトンの大階段とスキップフロア
写真のように大階段とスキップフロアを使い、階段をスケルトンにすれば吹き抜けを採用したように、フロア同士に緩やかな繋がりが生まれます。
大階段で繋がった部屋同士が、相互に連続した関係性を持たせることが出来ます。
スキップフロアの活用実例5:ロフト(床同一のロフト)とスキップフロア
上の写真はロフトとスキップフロアを組み合わせた活用事例です。非常にうまいスキップフロアの活用事例だと思います。
ただしこうした同一フロアのロフトは法的に許されない地域もあるので確認が必要です。
また引き戸をつけることにより、収納スペースを隠す方法もあります。
スキップフロアの活用実例6:書斎とスキップフロア
スキップフロアを書斎にしたケースもあります。ちょっとしたスペースを活用することで上の写真のように立派な書斎をスキップフロアで造ってしまうことも出来ます。
こちらのご自宅ではリビングにスキップフロアで出来た書斎をおくことで、昼間は奥様と子供が、夜はご主人が使用されているそうです。
2段あがったスキップフロアにすることで、お子様達はいつもと違う視線の違いを楽しんでいるとのこと。
もちろんパソコンを使う為の電源とインターネットを使う為のLANもしっかりと完備されています。
スキップフロアの活用実例7:和室とスキップフロア
上の写真は障子を閉めることで個室になる、中2階にあるスキップフロアの和室。
和室の下は蔵になっています。
リビング全体をみるとスキップフロアの和室があることで、全体的に活動的な印象を受ける空間になっていることがよくわかります。
こちらはモダンなタイプのスキップフロアの和室。段差を2段スキップさせただけにも関わらず、そこはもう別空間に仕上がっています。
ひと言でスキップフロアの和室といっても、実に様々なタイプのスキップフロアの和室があることが分かります。
スキップフロアの間取りのまとめ
スキップフロアの間取りは、メリットとデメリットが相互に深く関係していますが、何よりもうまく取り入れると面白いという側面を持っています。
そして、スキップフロアを設計するのが上手な設計士さんに出逢うと、日々の生活に彩りを与える素敵な家が出来上がります。
スキップフロアを嫌悪するのではなく、メリットとデメリットを両方をしっかり理解した上でスキップフロアをつくれば、満足度の高い家づくりが出来るかと思います。
最後に、スキップフロアの間取りの相談は、まずは注文住宅相談サービスを利用してから行なうといいとおもいます。
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