まるで生きているかのような金魚の絵を描く美術作家がいます。TVや雑誌などのメディアでも紹介されているのでご存知の方も多いかと思いますが、それが金魚養画場主の深堀隆介さんです。
深堀さんは、高透明なエボキシ樹脂とアクリル絵の具を使い幾層にも色を重ねあわせることで平面の金魚が立体的にみえる絵をつくることで有名ですが、それだけではなく、金魚という題材をもとにして、様々な作品をつくりあげています。
こちらは「雫」という作品で、傘の中央の水たまりに金魚が泳いでいるという美しい金魚絵です。
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なぜ金魚絵師として活動し始めたのか
深堀さんは26歳で美術作家を志したものの、決まった題材もなく、立体的な絵を描いたり平面を描いたり作風はバラバラだったそう。つまり自分の作風を表現する方法に迷い、焦りに焦っていたといいます。
そんな時にたまたま部屋に飼っていた金魚を上から見た時に、その美しさに惚れ、以来金魚絵師として活動するようになったようです。
深堀さんはその時のことを「金魚救い」とよんでいます。
その頃飼っていた、金魚は枕元の小さな水槽におり、学生の頃に金魚すくいのおじさんが閉店だからと30匹ほどくれた金魚の生き残りの1匹だったそう。その金魚は7年も生き続け、体調は20センチほどにもなっていたそうです。
香具夜 天衣 2011
金魚救いが起きた年に、深堀さんはネコの身体から抜け出した大量の金魚が、すぐそばに干された洗濯物の間を勢いよく泳ぎ回る様を表現した作品を銀座のショーウインドウをディスプレイするコンペ(旧:富士銀行:現みずほ銀行の主催する『ストリートギャラリー』)に応募し、見事採用。
その時のエピソードが非常に面白く、ダメ元で履歴書の中を金魚が泳いでいるような写真を描き込んだそうです。そういうこともあってか、その後、タオルやTシャツや海パンにいたるまで金魚が描かれました。
金魚酒 美雲/mikumo 2011
深堀さんは複数の金魚を飼っているようですが、実在する金魚を模写しているわけではなく自分の感性に従って金魚を描いているようで、厳密にみれば現実にはあえりえない品種が描かれていたりするようです。
椀 白澄/shirasumi 2011
金魚絵師としての作品はどうやってできるの?
そんな深堀さんの金魚絵師としての作品の中でも工業用の高透明なエボキシ樹脂を使い升や桶、または半分に分かれた竹の凹みの部分に金魚が描かれているいく作品は特に印象的で、深い味わいを感じさせ、また多くのひとに知れ渡っています。
(左)月光/gekkou (右)和金nikikogane 2009
アクリル絵の具で金魚の絵を描き、その上に厚さ数ミリ程度のエボキシ樹脂を流し込み2日以上経ち、エボキシ樹脂が固まったらさらに金魚の絵を描く。その繰り返しで立体的な金魚の絵が完成します。
初出荷 出目金/The first shipment DEMEKIN 2009
アクリル絵の具とエボキシ樹脂、それらの組み合わせにより描かれた金魚の絵は命が宿り、まるで生きているかのような作品に仕上がります。
初出荷「和金」Thefirstshipment WAKIN : 2009
もちろん、平面に描かれた金魚の絵を幾層にも重ね合わせるという作品の性質上、横から見ると、その作品を失ってしまいます。が、その上からしかみることのできない金魚の絵は、金魚の儚さと妖しさという、その魅力を何倍にも引き上げています。
初出荷「和金」Thefirstshipment WAKIN : 2009
これらの作品は下絵は一切描かないそうです。
屏風 金魚の間/kingyo no ma 2005~2010
細部にわたって詳細に金魚を描く力
深堀さんの頭の中にある金魚をそのまま絵にするために筆をおろし完成させるその作品は時に糞(ふん)まで描かれることもあります。
そらみつ/soramitu 2009
しかし、その糞までもが美しく、深堀さんによって生み出された作品を一度みると、金魚という妖しい魅力に取り付かれてしまいそうです。
霊守/yukimori 2010
韓雪/karayuki 2010
和金/nikikogane 2010
深堀さんの描き出す金魚はどの金魚にも個性がありますが、糞(ふん)までにもそれは及ぶようで金魚によっては細かったり太かったりするようです。
麗微動 あなたを追い/libido 2010
深堀さんによると、「この子はお腹の調子が悪いから糞は細め・・・」とのことです。
金魚酒 Kingyo sake :2003
こちらが深堀さんの作品の中でも広く知れ渡っている有名な作品ですね。
金魚酒「和金」Kingyosake WAKIN
金魚を上から見て楽しむ作品の趣
横からみて楽しむのではなく、あえて上からみることで、また違った景色がみえる・・・深堀さんのこの発想は、ひとつの物体をいろいろな角度から観ることによって様々な捉え方ができるということを示唆してくれます。
金魚酒「出目金」Kingyosake DEMEKIN
金魚絵師として平面を立体的に見せる技法
深堀さんが「金魚救い」の後、最初に試した技法は壁面のタイルや家具の表面に金魚を描き、描かれた金魚の下に影も書き込むという平面を立体的に見せる技法だったそうです。
香具夜Kaguya:2004
すると不思議なことに、ソファや椅子などの表面が水面のようにみえ、そのわずかな下を泳ぐかのようにみえたといいます。そうして出来上がった作品が後の作品に続いているようです。
一粒の麦が地に落ちて死ねば 2005年
金魚の杜 ForestofKingyos : 2006
百済 Qudara : 2007
深堀さんによれば、アクリル絵の具とエボキシ樹脂を使ったこれらの作品は、2002年に編み出した技法だそうです。
倭 Yamato : 2007 タイル
タイルの凹みの中を金魚が泳いでいます。
倭 Yamato : 2007 タイル
どの金魚にも個性があり、まるでいきているかのようです。
畳ゆめ Tatami-yume : 2010 タイル
金魚がお腹を出しています。こんなかわいらしい金魚、みたことないですね。
“Goldfish Salvation” Riusuke Fukahori from ICN gallery on Vimeo.
動画はこちらからご覧頂けます。
・公式ホームページ
【金魚養画場 – 美術作家 深堀隆介 オフィシャルサイト】
URL:http://goldfishing.info
▼参考:
・スーパーフラットな金魚の不思議 – 深堀隆介 インタビュー|クリッピン・ジャム – Clippin JAM
URL:http://www.clippinjam.com/volume_59/cf_interview_01.html
・金魚絵師 深堀隆介氏作品
URL:http://www.edogawa-art.jp/kingyo/index.html
・美術家・深堀隆介さん—本物と見まがう立体絵画を描く「金魚絵師」の想い | BIG ISSUE ONLINE
URL:http://bigissue-online.jp/2012/12/04/fukahori-ryusuke-san/